施術をして、
「痛みが楽になりました」
「さっきより動きます」
と言っていただける。
もちろん、これは嬉しいことです。
患者さんは困って来ているわけですから、その場で症状に変化を出せることは素晴らしい技術だと思います。
でも私は、
「今日良くなった」と「本当に良くなった」は、同じではない
と思っています。
その場で変化を出すことはできる
例えば、ある場所に痛みがある。
その周辺の筋肉がかなり緊張していて、関節の動きも小さくなっている。
そこにマッサージなどでアプローチして、筋肉の緊張が変わる。
関節もさっきより動かしやすくなる。
その結果、
「痛みが減った」
「動きやすくなった」
ということはあります。
一旦、今日の状態は良くなった。
それ自体には大きな意味があります。
私は、こういう施術を否定するつもりは全くありません。
むしろ、目の前で困っている患者さんの症状をその場で軽減できるのであれば、それは施術者として一つの大切な技術です。
ただ、私はその後にもう一つ考えます。
「じゃあ、なぜそこは硬くなっていたんだろう?」
なぜ、その筋肉は硬くなったのか
筋肉を緩めた。
動きが良くなった。
痛みも減った。
でも、その筋肉が硬くなっていた理由が何も変わっていなければ、どうでしょうか。
なぜ、その筋肉には緊張が必要だったのか。
なぜ、その関節は動きにくくなっていたのか。
普段どんな姿勢を取っているのか。
どんな動きを繰り返しているのか。
他の関節の動きはどうなのか。
過去にどんなケガをしているのか。
いろいろな可能性があります。
もちろん、その理由を一回の施術ですべて特定できるわけではありません。
むしろ、分からないことの方が多いと思います。
それでも、
「緩んだから終わり」
ではなく、
「なぜ、ここにこういう状態が起きていたんだろう」
と考える。
私はそこが大切だと思っています。
では「本当に良くなった」とは何なのか
ここは、施術者によって答えが違っていいと思います。
痛みをその場で減らすことを一番大切にする人もいる。
スポーツ選手のパフォーマンスを上げたい人もいる。
ケガをしにくい体づくりを目指す人もいる。
日常生活を少しでも楽に送り続けられることを目指す人もいる。
どれが正しくて、どれが間違っているという話ではありません。
大切なのは、
「自分は何をもって、この患者さんが良くなったと考えるのか」
を施術者自身が持っていることだと思います。
「足にタコができたら、自分の責任だ」と話すトレーナーがいた
以前、素晴らしいスポーツトレーナーの方と話をしたことがあります。
その方が話していたことで、今でも覚えている言葉があります。
例えば、自分が見ている選手の足の裏にタコができたとする。
その方は、
「それはトレーナーとして失格だ」
くらいの感覚で仕事をしている、と話していました。
もちろん、足のタコには靴や競技特性、皮膚への摩擦や圧などさまざまな要因があります。
足にタコができたこと自体が、そのままトレーナーの責任という話ではありません。
私がその話を聞いてすごいと思ったのは、そこではありません。
自分の担当する選手を、それくらい広い範囲まで見ようとしていることです。
痛いところだけを見る。
筋力だけを見る。
競技中の動きだけを見る。
そうではなく、足の裏に起きた小さな変化まで含めて、
「この選手の体に何が起きているんだろう」
と考える。
私はその姿勢が、すごく印象に残りました。
どこまで見るかで、必要な勉強も変わる
例えば、施術直後の痛みを減らすことを目標にするのであれば、そのために必要な技術を深く学ぶことになります。
スポーツ選手のパフォーマンスを上げたいのであれば、トレーニングや競技動作についても学ぶ必要が出てくるでしょう。
ケガをしにくい体を目指すのであれば、負荷や動作、休養などを見る必要も出てきます。
毎日の生活を長く健康に過ごせることを目指すなら、体だけではなく、その人の生活まで考える場面が増えてきます。
自分がどこを目指すかによって、見る範囲が変わる。
見る範囲が変われば、勉強する範囲も変わる。
私はそう思っています。
私は「健康で豊かな生活を送り続けられる体」を見たい
では、自分は何を目指しているのか。
私の場合は、
その人が毎日、健康で豊かな生活を送り続けられる体であってほしい。
ここに一番熱を持っています。
これは、私自身が小さい頃から経験してきたことも関係しています。
だから、単純にその日の痛みだけを見て終わるより、
「なぜこの症状が起きたんだろう」
「また同じことを繰り返さないために何ができるだろう」
「この人がこの先も生活していくために、今できることは何だろう」
というところまで考えたくなります。
もちろん、毎回そこまで答えが分かるわけではありません。
前の記事でも書きましたが、臨床では分からないことなんていくらでもあります。
それでも、そこを考え続けること自体が、自分のやりたい臨床なんだと思っています。
「今日楽になった」で終わるのか、その先を見るのか
今日、痛みが減った。
動きやすくなった。
患者さんが喜んでくれた。
それは本当に大切なことです。
まず目の前の患者さんが困っていることに応える。
そこを軽く考えるつもりはありません。
でも、その先に何を目指すのか。
私は、そこに施術者それぞれの考え方が出ると思っています。
症状を軽減することなのか。
パフォーマンスを高めることなのか。
ケガをしにくい体を作ることなのか。
健康な生活を長く続けられるようにすることなのか。
答えは一つではありません。
だからこそ、一度考えてみてもいいと思います。
自分は、何をもって「本当に良くなった」と考えるのか。
そして、
自分は施術者として、どこに一番熱を持っているのか。
私は「健康で豊かな生活を送り続けられる体」というところに、これからも向き合っていきたいと思っています。
あなたは、どこに熱を持って臨床をしていますか。

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