先日、まだ臨床経験の浅い施術者と話していた時に、こんな質問がありました。
「圧迫骨折で背骨が変形していたり、手術で腰にボルトが入っている人って、もう痛みは取れないですよね?」
私は、そんなことはないと思っています。
もちろん、できないことはあります。
でも、
「構造を元に戻せないこと」と「痛みに対してできることがないこと」は、別の話です。
ここは施術者として分けて考えた方がいいと思っています。
圧迫骨折で変形した骨を、整体で元に戻すことはできない
例えば、脊椎の圧迫骨折です。
圧迫骨折によって椎体が変形している。
そこで患者さんから、
「この変形した骨を整体で元通りにしてください」
と言われても、それはできません。
整体で変形した椎体そのものを元の形に戻すことはできないからです。
同じように、腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアなどで手術を受け、腰椎が固定されている方もいます。
ボルトで固定されている部分を、整体で動くようにすることはできません。
そもそも手術によって固定されている場所なので、そこを無理に動かそうとするものでもありません。
では、
「もう何もできません」
となるのでしょうか。
私は、そうは考えていません。
「形を変える」と「痛みを変える」は別の話
ここで分けて考えたいのが、患者さんが何を求めているのかです。
変形した骨を元通りにしたいのか。
それとも、
「今ある痛みを少しでも楽にしたい」
「もう少し動きやすくなりたい」
「日常生活を楽にしたい」
のか。
この二つは全然違います。
構造そのものを元に戻すことが難しくても、痛みや動きまで絶対に変わらないと決まったわけではありません。
変えられないものがあるからといって、変えられる可能性があるものまで諦める必要はない。
私はそう思っています。
背骨は、固定されているところだけで動いているわけではない
例えば腰椎の一部が手術によって固定されているとします。
当然、その部分の動きには制限があります。
そこはもう前提として受け入れます。
でも、人の体はその場所だけで動いているわけではありません。
一般に脊柱は、頸椎7個、胸椎12個、腰椎5個の24個の可動性を持つ椎骨で構成されています。
さらに実際の動作では、骨盤や股関節、胸郭なども一緒に働きます。
腰の一部分が動きにくいのであれば、
「では、それ以外の部分はどうなっているんだろう?」
と私は考えます。
動かないところを、無理に動かそうとしない
これは私が臨床で大切にしている考え方の一つです。
動かないところがある。
だから、その場所を何とか動かそうとする。
私は必ずしもそうは考えません。
手術で固定されているなら、なおさらです。
動かないところは動かない。
だったら、動けるところを見ます。
胸椎はどうか。
腰椎の固定されていない部分はどうか。
骨盤はどうか。
股関節はどうか。
体幹全体として、どんな動きをしているのか。
そうやって、固定されている場所だけではなく全体を見ていきます。
私は「負担を全体で分けられないか」と考える
これはあくまで私の臨床上の見立てですが、固定されている部分や変形している部分がある人では、その周囲や別の場所に動きの負担が偏っているように感じることがあります。
そういう時に私が考えるのは、
「この負担を、もう少し体全体で分けられないだろうか」
ということです。
一部分だけで頑張って動くのではなく、動けるところがそれぞれ動ける状態を作っていく。
そうすることで、一部分に集中していた負担が変わり、結果として痛みや動作が変化する可能性はあると思っています。
もちろん、それですべての痛みがなくなるという意味ではありません。
圧迫骨折後や脊椎手術後の痛みには、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、
「ここを動かせば治る」
と単純に考えるのではなく、患者さん一人ひとりの状態を見る必要があります。
「ボルトが入っているから無理」で思考を止めない
今回、若い施術者と話していて、一番伝えたかったのはここです。
「ボルトが入っているから痛いんですよね」
「圧迫骨折で変形しているから仕方ないですよね」
確かに、それらは無視できない大切な情報です。
でも、それを聞いた瞬間に、
「じゃあ整体では何もできません」
と考えるのをやめてしまう。
それは施術者として少し寂しいなと思います。
変形そのものは変えられない。
固定されている場所も変えられない。
では、
「変えられないものを前提にして、それでも何か変えられるところはないだろうか?」
と考える。
ここからが臨床だと思っています。
手術歴は「諦める理由」ではなく、施術を考えるための情報
私は手術歴をかなり大切にしています。
どこを手術したのか。
どこが固定されているのか。
いつ手術したのか。
その前後で体はどう変わったのか。
それによって、施術で注意する場所も変わります。
そして当然、術後の状態や症状によっては整体よりも医療機関での評価を優先すべき場合もあります。
でも、手術歴があるというだけで、
「この人の痛みはもう変わらない」
と決める必要はありません。
手術歴は施術を諦めるための情報ではなく、その人の体をどう見るかを考えるための情報です。
プロだからこそ「何かできないか」を考え続ける
患者さんは、痛みや動きに困って整体院に来てくださいます。
圧迫骨折がある。
ボルトが入っている。
手術をしている。
それを見て、できないことをきちんと伝えるのもプロだと思います。
でも同時に、
「では、できることは何だろう?」
と考えるのもプロだと思っています。
動かせないところを無理に動かす必要はありません。
元に戻せない構造を、元に戻せると言う必要もありません。
それでも、体全体を見ていけば、まだ考えられることはあるかもしれない。
「これは無理」で思考を止めるのではなく、「何なら変えられるだろう」と考え続ける。
私は、そういう癖を施術者には大切にしてほしいと思っています。

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