整体師として患者さんを施術していると、
「嫌われたくない」
という気持ちが出てくることがあります。
これは、ある程度は普通のことだと思います。
せっかく来てくださった患者さんには満足してほしい。
また来てもらいたい。
嫌な思いをしてほしくない。
そう思いますよね。
ただ私は、
患者さんに嫌われることを怖がりすぎると、施術そのものがおかしくなってしまうことがある
と思っています。
自信がないほど、患者さんの訴えに引っ張られやすい
実際、うちのスタッフを見ていても感じることがあります。
まだ自分の施術に自信がないスタッフほど、患者さんの訴えをものすごく気にします。
「腰が痛い」
と言われたら、腰が気になる。
「肩をもっとやってほしい」
と言われたら、肩をもっとやらなきゃと思う。
もちろん、患者さんの訴えを聞くことは大切です。
でも、
「患者さんの話を聞くこと」と「患者さんの訴えに施術を全部引っ張られること」は違います。
ここを分けた方がいいと思っています。
嫌われたくないと思うほど、痛い場所だけを見るようになる
例えば患者さんが、
「腰が痛いから、もっと腰をやってほしい」
と言ったとします。
嫌われるのが怖ければ、腰をやりますよね。
「そこじゃないと思います」
とは言いにくい。
でも、自分で体を評価してみたら、腰だけの問題ではないと感じるかもしれません。
股関節かもしれない。
胸郭かもしれない。
足元から見直した方がいいかもしれない。
私の場合であれば、もっと全身を見ながら別のところにも仮説を広げます。
それなのに、
「腰を触らないと患者さんに不満を持たれるかもしれない」
という理由だけで腰ばかり施術する。
それでは、何のために体を評価しているのか分からなくなってしまいます。
「嫌われない施術」を始めると、本質から離れていく
整体をするのであれば、私は全身を見ることが大切だと思っています。
痛いところだけを追いかけるのではなく、
「なぜ、ここに負担がかかっているんだろう」
と考える。
ところが、患者さんの反応ばかり気にしていると、この「なぜ?」がなくなっていきます。
患者さんが痛いと言ったところを触る。
もっとやってと言われたら、もっとやる。
嫌だと言われそうなことはやらない。
そうやって少しずつ、
「自分が必要だと思う施術」ではなく「患者さんに嫌われないための施術」
になってしまいます。
私は、それが一番怖いと思っています。
施術の翌日に「痛くなった」と言われたらどうするか
もう一つ、自信がない施術者ほど動揺しやすいのが、施術後の変化です。
例えば施術をした翌日に、患者さんから、
「昨日より痛くなりました」
と言われた。
そこで反射的に、
「申し訳ありません。私の施術が悪かったです」
と言いたくなる人もいると思います。
でも私は、まず確認した方がいいと思っています。
何が起きたのか。
どこが痛くなったのか。
いつからなのか。
どういう痛みなのか。
施術前と何が違うのか。
日常生活で何かなかったのか。
そして、自分は前回何を考えて、何をしたのか。
そこを一度整理する。
悪化したからといって、すぐ「自分が失敗した」と決めない
もちろん、こちらに明らかなミスがあったのであれば話は別です。
施術上のミスが確認できた。
必要な確認を怠った。
やるべきではないことをやってしまった。
そういうことであれば、きちんと説明して謝る必要があります。
そこから逃げてはいけません。
でも、施術後に痛みが出たという事実だけで、
「自分の施術が間違っていました」
とすぐ結論づける必要もないと思っています。
自分なりに患者さんの体を考えた。
仮説を立てた。
その人のために施術した。
それでも予想していなかった反応が起きることはあります。
だったら、
「失敗した。自分はダメだ」ではなく、「なぜこの反応が起きたんだろう」と考える。
私はその方が臨床家として大切だと思っています。
謝罪と、患者さんのつらさを受け止めることは別
ただし、ここで勘違いしてほしくないことがあります。
「すぐに自分のミスだと決めない」というのは、患者さんに冷たくしていいという意味ではありません。
患者さんが実際に痛くなって困っているのであれば、
「痛くなってしまったんですね」
「それは心配でしたよね」
と、そのつらさはきちんと受け止めればいい。
患者さんのつらさに共感することと、自分に原因があると確認する前から責任を認めることは別です。
まず状況を確認する。
必要であれば再評価する。
症状によっては医療機関への受診を勧める。
その上で、自分の施術に問題があったと判断したのであれば、きちんと謝る。
私はこの順番が大切だと思っています。
患者さんとの関係にも「相性」はある
そして、もう一つ。
施術者側が患者さんを選んではいけない、ということもないと思っています。
患者さんが施術者を選ぶように、施術者側にも、
「この方とは信頼関係を作りながら施術を続けられるだろうか」
と考える必要があります。
どれだけ説明してもこちらの話を聞いてもらえない。
自分が良くないと思っている施術を繰り返し要求される。
お互いに信頼関係を作ることが難しい。
そういう場合まで、売上のためだけに無理して施術を続ける必要はないと思っています。
場合によっては、施術をお断りするという選択肢があってもいい。
それは患者さんを嫌うということではなく、
お互いに信頼できない状態で施術を続けない
という判断です。
売上を気にしすぎると、もっと嫌われるのが怖くなる
開業していると、ここはさらに難しくなります。
患者さんが一人来なくなる。
その分、売上が減る。
だから嫌われたくない。
だから患者さんの希望を全部聞く。
そうなってしまう気持ちは分かります。
でも、それを続けていると、だんだん自分が何のために施術しているのか分からなくなってしまいます。
売上はもちろん大切です。
経営している以上、無視できません。
でも、
目の前の一人を失わないために、自分の施術の基準まで失ってしまったら、長い目で見てもっと苦しくなる。
私はそう思っています。
自信とは「自分は間違えない」と思うことではない
ここでいう自信は、
「自分の施術は絶対に正しい」
と思うことではありません。
私だって間違えます。
仮説が外れることもあります。
思ったような結果が出ないこともあります。
でも、
自分なりに考えて施術する。
結果を見る。
違ったら、もう一度考える。
必要なら自分の考えを修正する。
私は、それでいいと思っています。
自信とは「自分は正しい」と思い込むことではなく、自分で考えて、その結果に向き合えることなのかもしれません。
3年後、5年後、10年後にどんな施術者でいたいか
もし今、患者さんの反応が怖くて仕方がない。
嫌われるのが怖い。
クレームが怖い。
患者さんが離れるのが怖い。
そんな状態になっているのであれば、一度立ち止まって考えてみてもいいと思います。
なぜ自分はこの仕事を選んだのか。
患者さんにどうなってほしいと思っているのか。
自分はどんな施術をしたいのか。
そして、3年後、5年後、10年後にどんな施術者になっていたいのか。
そこが少しずつ見えてくると、目の前の患者さん一人に嫌われるかどうかだけで、施術を決めなくなっていくと思います。
患者さんの話は聞く。
つらさにも寄り添う。
間違えたら謝る。
でも、嫌われないためだけの施術はしない。
患者さんに好かれることが目的ではなく、その人のために自分が何をするべきなのかを考える。
私は、施術者としてそこを大切にしたいと思っています。

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