「触って硬い=原因」と考えない方がいい理由|臨床で大切なのは「なぜ硬くなったのか」を考えること

臨床を始めて1年、2年くらいの頃って、割とこう考える方は多いと思います。

「ここが硬い」

「じゃあ、ここが原因なんじゃないか」

そして、その硬いところを中心にマッサージをする。

私は、最初はそれでいいと思っています。

実際に触ってみる。

硬いところを見つける。

そこへアプローチして、患者さんがどう変わるかを見る。

まずはそこから始めないと、分からないこともあります。

ただ、臨床を続けていると、おそらく少しずつ疑問が出てきます。

「こんなに揉んでいるのに、なんで全然柔らかくならないんだろう」

「関節の動きは良くなったのに、なんで痛みは変わらないんだろう」

「昨日は良くなったのに、なんでまた同じところが硬くなっているんだろう」

こういう疑問です。

私は、この疑問が出てきた時がすごく大切だと思っています。

「硬いから揉む」で終わるのか、それとも「なぜ硬くなったんだろう」と一段深く考えるのか。

ここで、臨床の見え方が少しずつ変わってくると思っています。

目次

硬いことは「結果」であって、原因とは限らない

例えば、肩の筋肉がものすごく硬い方がいたとします。

触れば明らかに硬い。

圧痛もある。

患者さん自身も、

「そこがつらいです」

と言っている。

そうなると、そこを施術したくなりますよね。

もちろん、それ自体は間違いではありません。

その部位へ施術をすることで、一時的に楽になることもあります。

ただ、私はそこで一つ考えます。

「なぜ、その筋肉は硬くならなければいけなかったんだろう?」

と。

硬くなっているというのは、体の中で何かが起きた結果かもしれません。

なら、その前に何があったのかを見る必要があります。

筋肉が硬くなる理由は、一つではない

筋肉が硬くなる理由として、よく説明されるものはいくつかあります。

一つは、日常生活や仕事で同じ動作を繰り返していることです。

例えば、デスクワーク。

立ち仕事。

荷物を繰り返し持つ仕事。

いつも同じ方向へ体をひねる仕事。

毎日同じ使い方をしていれば、よく使う場所と、あまり使わない場所が出てきます。

結果として、特定の筋肉へ負担が集中することは考えられます。

これは比較的分かりやすい説明です。

姿勢が影響している場合もある

二つ目は、姿勢です。

例えば頭が前に出ている。

胸郭が丸くなっている。

骨盤が前後どちらかへ偏っている。

左右の荷重がかなり違う。

そういう姿勢で長時間過ごしていれば、特定の筋肉がずっと働き続けることがあります。

当然、そこには緊張が出やすくなります。

だから、

「この筋肉が硬い」

だけではなく、

「なぜこの筋肉がずっと頑張らなければならない姿勢になっているんだろう」

と見ます。

筋バランスと姿勢は、かなり近い話だと思っている

三つ目として、筋バランスという説明もあります。

ある筋肉が強く働いている。

反対側があまり使えていない。

左右差がある。

こういった筋バランスの違いが姿勢や動作に影響するという考え方です。

ただ、私は姿勢と筋バランスはかなり近い話だと思っています。

姿勢が崩れたから筋バランスが変わったのか。

筋バランスが変わったから姿勢が崩れたのか。

どちらが先なのか、簡単には分けられないことも多いですよね。

だから私は、二つを完全に別物として見るより、

「その人がどういう体の使い方をしているのか」

という大きなまとまりの中で見ることが多いです。

さらに考えると「なぜその動き方になったのか」が気になる

ここから、もう一段掘ります。

例えば、右の股関節をあまり使わない人がいたとします。

それによって別の場所へ負担がかかっている。

じゃあ、

「右の股関節をもっと使えるようにしましょう」

で終わってもいいんです。

でも私は、

「そもそも、なぜこの人は右の股関節を使わない動き方になったんだろう」

と考えます。

今の仕事の影響なのか。

過去のケガなのか。

子どもの頃からそうだったのか。

運動習慣なのか。

別の場所をかばった結果なのか。

そこを考え始めると、体の見方がかなり広がります。

動き方のクセは、かなり昔から作られていることもある

人は子どもの頃から、いろいろな動きを経験していきます。

立つ。

歩く。

走る。

跳ぶ。

投げる。

しゃがむ。

そうした中で、一人ひとり違う動き方を覚えていきます。

実際に子どもの体を見ていても、同じ動作をしていても全然違います。

走り方も違う。

しゃがみ方も違う。

片足で立った時のバランスも違う。

もちろん、単純に運動能力の違いもあります。

ただ、それだけでは説明しきれない動きのクセもあります。

「この子はここをよく使うな」

「この関節はあまり使っていないな」

という違いがあります。

そう考えると、大人になってから見えている姿勢や筋肉の硬さも、今日突然できたものではない可能性があります。

「いつからそうなったのか」を考えると、問診の見方も変わる

そこで、私が気になるのが、

「この体の使い方は、いつから始まったんだろう」

ということです。

患者さん本人は、

「肩が痛くなったのは先月からです」

と言うかもしれません。

でも、その肩へ負担をかける体の使い方自体は、10年前からあったかもしれません。

もっと昔からかもしれません。

だから症状が出た時期と、体の背景が始まった時期は同じとは限りません。

ここを分けて考えるようになると、問診も変わります。

過去のケガ。

手術。

スポーツ歴。

仕事。

生活習慣。

子どもの頃から苦手だった動き。

いろいろな情報が施術のヒントになってきます。

「動きが良くなったのに痛みが変わらない」は大きなヒント

施術をしていると、こんなケースがあります。

施術前より関節は動く。

筋肉も柔らかくなった。

姿勢も少し変わった。

でも、

「痛みは全然変わりません」

と言われる。

これは、施術者としては結構ショックですよね。

でも、私はこういう時こそかなり勉強になると思っています。

だって、自分が、

「ここが原因だ」

と思っていたものを変えたのに、症状は変わらなかったんです。

ということは、少なくとも自分が最初に立てた仮説だけでは足りなかった可能性があります。

施術して変わらなかったという結果も、自分の仮説を修正するための大切な情報です。

「ほぐれない」ことにも意味がある

同じことは、筋肉の硬さにも言えます。

何度ほぐしても硬い。

その場では少し柔らかくなる。

でも次回来た時には、また同じ。

この時に、

「もっと強く揉もう」

だけだと、少しもったいないと思っています。

なぜ、そこは硬さを維持しようとしているのか。

別の場所を守っているのか。

姿勢を保つために必要なのか。

今の動き方では、その筋肉が働かざるを得ないのか。

そう考える。

硬さそのものを悪者にしない。

そこも結構大切だと思っています。

筋肉の硬さは、体が必要として作っていることもある

筋肉が硬いと、つい、

「悪い状態」

と考えます。

もちろん、過剰な緊張が痛みや動きづらさに関わっていることはあります。

ただ、体としては何かを守るために緊張している可能性もあります。

例えば、ある関節が不安定。

その周囲の筋肉が頑張って支えている。

その筋肉だけをどんどん緩めたら、体としては困るかもしれません。

だから、

「硬いから緩める」

ではなく、

「この硬さは、何のために必要なんだろう」

と考える。

この問いがあると、施術するかどうかの判断も変わってきます。

関節の動きが悪い時も同じ

関節可動域が狭い。

これも、

「動きが悪いから動かそう」

となりやすいです。

でも、なぜ動かないのか。

痛みを避けているのか。

筋肉が守っているのか。

以前のケガの影響なのか。

そもそも日常生活で、その方向へほとんど動かしていないのか。

別の関節で代償するクセがあるのか。

いろいろ考えられます。

つまり、筋肉の硬さも関節の動きづらさも、私は「所見」だと考えています。

原因だと決める前に、なぜその所見が出たのかを考えます。

「原因」という言葉を簡単に使わない方がいい

施術者は、患者さんへ説明する時に、

「原因はここです」

と言いたくなることがあります。

分かりやすいですからね。

患者さんも、

「なるほど、ここが原因なんですね」

と納得しやすい。

でも実際には、一つの症状に複数の要因が関係していることも珍しくありません。

だから私は最近、

「原因です」

というより、

「ここが一つ関係している可能性があります」

くらいに考えることが多いです。

その方が、もし仮説が違った時にも修正できます。

何より、自分自身が一つの考えに固まらなくなります。

臨床で大切なのは「なんで?」を止めないこと

結局、私が臨床で大切だと思っているのは、

「なんで?」

です。

なんでここが硬いんだろう。

なんでこの関節だけ動かないんだろう。

なんで施術したのに痛みが変わらないんだろう。

なんでこの人は毎回ここへ負担がかかるんだろう。

なんで右と左でこんなに使い方が違うんだろう。

この「なんで?」をどこまで深く持てるか。

私は、そこが施術者としてかなり大きいと思っています。

疑問を持てること自体が、成長の入り口になる

臨床を始めたばかりの時は、分からないことばかりです。

だから、最初は習った通りでいいと思います。

硬いところを揉む。

動かない関節を動かす。

習った評価をする。

それで経験を積む。

ただ、やっているうちに必ず、

「あれ?」

という瞬間が出てきます。

その時に、

「まあ、こんなものか」

で終わるのか。

「なんでなんだろう」

と調べるのか。

この差は、何年か経つとかなり大きくなると思っています。

疑問が出たら、すぐ新しい技術に飛びつかなくてもいい

うまくいかない患者さんがいると、

「自分の技術が足りない」

と思って、新しい手技を探したくなることがあります。

私自身もそうでした。

もちろん、新しい技術を学ぶことも大切です。

でも、その前に、

「今の自分の考え方のどこが違ったんだろう」

と振り返る。

これもかなり大切です。

手技を増やしても、体の見方が同じなら、結局同じ場所しか見ないことがあります。

技術より先に、仮説を増やす。

私は、その方が臨床の幅につながることが多いと思っています。

体の見方が増えると「硬い」という一つの所見の意味も変わる

筋肉だけを見ていた頃は、

「硬い=悪い」

くらいに考えていた時期もありました。

でも、姿勢。

動作。

関節。

既往歴。

神経。

呼吸。

循環。

いろいろな視点を持つようになると、同じ硬さでも意味が違って見えます。

この人はここを守っているのかもしれない。

この姿勢を維持するために働いているのかもしれない。

別の場所が使えないから代わりに頑張っているのかもしれない。

そう考えられるようになります。

「答え」を覚えるより「問い」を増やした方が応用できる

臨床では、

「腰痛ならこれ」

「肩こりならここ」

という答えをたくさん覚えたくなります。

でも、目の前の患者さんは教科書通りではありません。

同じ腰痛でも、全然違います。

だから私は、答えを増やすこと以上に、問いを増やすことが大切だと思っています。

なぜ?

いつから?

何をかばっている?

なぜここを使わない?

この硬さを取ったら本当に良くなる?

もしここが原因じゃなかったら次はどこを見る?

こういう問いを持っていると、見たことのない症状にも対応しやすくなります。

施術後の結果が、自分の考えを教えてくれる

最終的には、施術して確認します。

自分は、この理由でここを施術した。

では、どう変わったのか。

痛み。

動き。

姿勢。

患者さん自身の感覚。

そして次回。

そこを確認する。

変わったなら、仮説が少し当たっていた可能性があります。

変わらないなら、考え直す。

またすぐ戻ったなら、さらに背景を見る。

私は、これを繰り返しています。

「触って硬い」から始まってもいい

今回、

「触って硬い=原因ではない」

という話をしました。

でも、私は最初から難しく考える必要はないと思っています。

新人の頃は、

「ここ硬いな」

でいい。

そこを施術してみる。

変化を見る。

その経験を積む。

ただ、うまくいかなかった時に終わらせない。

「なんで?」

と考える。

そこからです。

臨床経験が増えるというのは、正解をたくさん知ることではなく、「なんで?」と考えられる場所が増えていくことなのかもしれません。

私自身、今でも分からないことはたくさんあります。

むしろ、経験を積むほど疑問は増えています。

でも、その疑問があるから体を見る範囲が広がります。

勉強したくなります。

今まで別々だった知識がつながります。

そして、今まで見たことのない患者さんを前にした時にも、

「じゃあ、なんでこうなっているんだろう」

と考えられる。

私は、その姿勢が臨床家として一番大切なんじゃないかなと思っています。

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