頭蓋骨への施術を私はどう考えているか|パーキンソン病の方の歩行が変わった経験から

今日は少し内容を変えて、頭蓋骨について書いてみたいと思います。

私は普段の施術の中で、頭蓋骨にも触れます。

そして長く触っていると、

「さっきと触れた感じが違うな」

「左右差が変わったな」

「頭部全体の緊張感が変わったな」

と感じることがあります。

私自身の感覚としては、施術前後で頭部の形状まで変わったように感じることもあります。

ただ、最初にここははっきり分けておいた方がいいと思っています。

私が触診で「変わった」と感じることと、成人の頭蓋骨そのものが施術によって動いたり、形態を変えたりすることが科学的に証明されていることは別の話です。

頭蓋領域への手技は、オステオパシーなどでも長く扱われてきました。

一方で、成人の頭蓋骨に臨床的に意味のある可動性があり、それを手で再現性高く触知できるという考え方については、現在も十分な科学的根拠が確立されているとは言えません。

ですから今回は、

「医学的にこうです」

という話ではなく、

私が臨床で頭蓋部を見ている理由と、実際に経験した体の変化について

書いてみます。

目次

そもそも、なぜ頭を施術するのか

頭蓋骨の中には脳があります。

脳や脊髄の周囲には脳脊髄液が存在し、それらを膜や骨などが取り囲んでいます。

一般の方にも、

「脳は液体の中に浮かぶように守られている」

という説明をすると、少しイメージしやすいと思います。

では頭部へ手技を行うことで、この脳脊髄液の圧力が局所的に変化して、それによって神経症状まで改善するのか。

ここについては、私は現時点で断定できる話ではないと思っています。

頭蓋への手技と脳脊髄液、神経機能との関連についてさまざまな仮説はありますが、臨床で起きる変化をそれだけで説明できるほど分かっているわけではありません。

だから私は、

「頭蓋骨を動かしたから脳の圧が変わって症状が良くなった」

とまでは言わないようにしています。

ただ、実際の臨床では、頭部へのアプローチを行った後に全身の緊張や姿勢、動き方が変化するケースを経験しています。

そこが、私が頭蓋領域に興味を持ち続けている理由です。

頭だけを見ているわけではない

頭蓋骨への施術というと、

「頭だけを触って何をしているの?」

と思われるかもしれません。

でも、私自身は頭を頭だけの問題として見ているわけではありません。

頭部。

頸椎。

胸郭。

体幹。

骨盤。

下肢。

それぞれは分離して存在しているわけではありません。

例えば頭部の位置が変われば、それを支えるために頸部も変化します。

頸部の位置が変われば、その下にある胸郭や体幹の使い方にも影響します。

さらに、立位であれば足元まで含めて全身でバランスを取ります。

これは特別な理論というより、人が重力の中で立っている以上当然起こることです。

頭部は体の一番上にあるので、その位置や緊張状態が変われば、全身の姿勢戦略も変わる可能性があります。

私は、そういう意味でも頭部を確認しています。

「頭の形が変わった」と感じることはある

これはかなり個人的な臨床感覚の話になります。

頭部を触っていると、左右で触れた印象がかなり違う方がいます。

片側が張っている。

一部分だけ非常に硬く感じる。

頭部全体に緊張感がある。

施術後にもう一度触れると、その感覚が変わることがあります。

私自身は、

「頭の形まで少し変わったように感じる」

こともあります。

ただ、ここで大切なのは、自分の触診感覚をそのまま医学的事実にしないことだと思っています。

触って変わったと感じた。

それは一つの観察です。

でも、

「骨そのものがこの方向へ動いた」

「この部分の圧力が何mmHg変わった」

まで証明できたわけではありません。

私は臨床家なので、自分の手で感じたことは大切にします。

ただ同時に、分からないものは分からないまま残しておくことも大切だと思っています。

それでも頭蓋骨への施術を続けている理由

では、科学的にすべて説明できないのであれば、なぜ今も頭蓋領域への施術を行っているのか。

理由は単純です。

施術前後で患者さんの動きが明らかに変わった経験が何度もあるからです。

もちろん、それだけで頭蓋骨そのものへの作用だと証明できるわけではありません。

触れられたことによる反応かもしれない。

頸部周辺の筋緊張が変化したのかもしれない。

感覚入力によって運動出力が変化したのかもしれない。

リラックスによる影響もあるかもしれません。

複数の要因が重なっている可能性もあります。

でも、臨床家として目の前で変化を経験すると、

「これは何が起きているんだろう?」

と思います。

私は、その疑問を大切にしています。

印象に残っているパーキンソン病の方の経験

特に印象に残っている患者さんがいます。

パーキンソン病と診断された方でした。

歩行がかなりゆっくりになっていて、私が確認した時には、約5メートルを歩くのに30秒ほどかかっていました。

その方に施術を行いました。

その時、私がかなり重点的に触れたのが頭部でした。

そして施術後、もう一度歩いていただきました。

すると、私の記憶では同じくらいの距離を数秒程度で歩いたんです。

私自身も、

「あれ?」

と思うくらい変化しました。

面白かったのは、本人が最初はその変化に気づいていなかったことです。

普通に歩いて、途中で、

「あれ? 今、速くなかった?」

というような反応をされたんですよね。

これは私にとって非常に印象深い経験でした。

ただし、この一例だけで「パーキンソン病に効く」とは言えない

ここは非常に大切です。

この経験があったからといって、

「頭蓋骨を施術すればパーキンソン病が改善する」

とは言えません。

一人の患者さんに一回変化が出たという、私自身の症例経験だからです。

パーキンソン病は進行性の神経変性疾患です。

症状にも個人差があります。

薬の影響もあります。

その日の体調もあります。

歩行は環境や注意、心理状態でも変わります。

ですから、一回の変化だけから原因や治療効果を断定することはできません。

実際、オステオパシーによるパーキンソン病への介入を調べた小規模な研究では、運動機能や一部の歩行指標に変化を報告したものがあります。

ただし研究数はまだ少なく、頭蓋への施術がパーキンソン病そのものを改善するというところまで確立されているわけではありません。

「可能性を感じる臨床経験」と「治療効果が確立している」は、分けて考える必要があります。

私は「症状が変わった」ことをまず事実として見る

臨床では、私はこういう時にすぐ理論を決めないようにしています。

頭部を施術した。

歩行が変わった。

まず分かるのはここまでです。

では、なぜ変わったのか。

ここからは仮説です。

神経系への何らかの感覚入力が影響したのか。

頭頸部の緊張が変化したのか。

姿勢制御に何らかの変化が起きたのか。

全身の筋緊張が変化したのか。

それとも別の要因なのか。

私自身にも分かりません。

でも、分からないからこそ面白いんですよね。

診断されて間もない方の方が変化を感じることがある

これはあくまで私自身の臨床経験ですが、パーキンソン病と診断されてから比較的早い時期の方では、施術後に動きの変化を感じることがあります。

一方で、長い年月をかけて症状が進んでいる方では、同じような変化が簡単には出ないこともあります。

ただ、これについても、

「早期なら頭蓋骨が柔らかいから改善しやすい」

といった説明を私はしません。

病気そのものの進行度。

筋力。

関節可動域。

姿勢。

活動量。

服薬。

認知機能。

さまざまな要因が関係するからです。

臨床で感じる傾向と、その理由を証明できることは別です。

レビー小体型認知症などにも「頭蓋施術が必要」と断定はしない

神経系の病気を見ると、どうしても頭部へ意識が向きます。

パーキンソン病。

レビー小体型認知症。

多系統萎縮症など。

脳や神経系が関わる病気なので、施術者として頭部を確認してみたいという発想になるのは、私には自然です。

ただ、こうした神経変性疾患に対して、

「頭蓋骨への施術が必要です」

「頭蓋骨を整えれば病気が改善します」

とまでは言えません。

そこは医学的に確立された治療とは分ける必要があります。

私が行っているのは、病気そのものを治療するというより、

その方の現在の緊張や姿勢、動き方を見ながら、施術によって何か変化を作れないか試みることです。

頭部の位置が変われば、全身の姿勢も変わる

頭蓋部へのアプローチで私がもう一つ重視しているのが、姿勢との関係です。

頭は体の上にあります。

成人では頭部だけでもそれなりの重量があります。

その頭を頸椎が支えています。

例えば頭が少し前へ出れば、それに合わせて首や胸郭の使い方も変わります。

体幹もバランスを取ります。

骨盤や下肢にも影響します。

人間は倒れないように全身で調整するからです。

ですから、私は頭部を見る時も、必ずその後に全身を確認します。

頭だけ触って終わりではありません。

立ってもらう。

歩いてもらう。

首を動かしてもらう。

姿勢を見る。

実際に何が変わったのかを確認します。

「頭の形」より、私は施術後の機能変化を大切にしている

昔の私は、

「ここが変わった」

「頭の形が変わった」

という触った感覚そのものを重要視していた部分があります。

でも今は、それだけでは足りないと思っています。

触った感じが変わった。

それで患者さんはどう変わったのか。

首が動きやすくなったのか。

歩きやすくなったのか。

姿勢が変わったのか。

本人は何を感じたのか。

そこまで確認する。

施術者の手の感覚だけで完結させず、患者さんの機能として何が変わったかを見る。

私は、こちらの方が大切だと思っています。

頭蓋骨の施術は、最初はかなり分かりづらい

同業の方で頭蓋領域に興味がある方もいると思います。

ただ、正直、最初はかなり分かりづらいと思います。

私もそうでした。

触っても何が違うのか分からない。

先生が、

「ここ動いているでしょう」

と言っても、

「全然分からない」

となる。

知らない感覚なので当然です。

それでも繰り返し触っていると、自分なりに違いを感じることがあります。

ただ、その時にも大切なのは、

「自分が感じたから絶対正しい」

にしないことだと思っています。

触診は仮説を作る材料の一つとして使う

これは頭蓋骨に限った話ではありません。

筋肉を触る。

内臓周辺を触る。

関節を触る。

頭部を触る。

私たち施術者は、いろいろなところを触ります。

そこで得られた感覚は大切です。

でも、それだけで全部を決めない。

問診。

動作。

姿勢。

既往歴。

施術前後の変化。

そういったものと合わせて考える。

触診は答えではなく、仮説を作るための情報の一つ。

私は、そういう位置づけで考えています。

頭蓋骨を学んで一番変わったのは「体を見る範囲」だった

頭蓋骨への施術を学んで良かったと思うことがあります。

それは、頭蓋骨を動かせるようになったということより、

「体を見る範囲が広がったこと」

です。

腰痛なら腰。

肩こりなら肩。

膝痛なら膝。

それだけではなく、

「頭部はどうだろう」

「頸部は?」

「呼吸は?」

「過去の手術は?」

「全身の緊張は?」

と、選択肢を増やせるようになりました。

それだけでも、私にとっては学んだ価値がかなりありました。

説明できない変化を、無理に説明しない

施術をしていると、たまに予想以上の変化が出ることがあります。

施術者としては、理由を説明したくなります。

「ここをこうしたから、こうなった」

と言いたくなります。

でも、本当にそこまで分かっているのか。

私は最近、ここをかなり大切にしています。

分かっているところ。

仮説のところ。

自分の経験として感じているところ。

まだ分からないところ。

これを混ぜない。

その方が、施術について長く考えていけると思っています。

「こんな変化が出た。なぜだろう?」から始めればいい

私が頭蓋領域に興味を持ち続けているのも、それが理由です。

パーキンソン病の方へ頭部を中心に施術した。

その後、歩行速度が大きく変わった。

これは私が実際に経験しました。

ではなぜ変わったのか。

ここはまだ分からない。

だから面白い。

以前の記事でも書きましたが、私の施術の原点は、

「なんでこの硬さ、取れないんだろう?」

という疑問でした。

今回も同じです。

「なんで頭を施術した後に、こんなに歩き方が変わったんだろう?」

と考える。

分からないから調べる。

また別の患者さんを見る。

再現するのか確認する。

それを繰り返す。

頭蓋骨へのアプローチは、私にとって一つの選択肢

私は頭蓋骨への施術がすべてだとは思っていません。

頭蓋骨をやれば全部良くなるとも思っていません。

頭部を見る必要がない患者さんもいます。

筋骨格から見た方が分かりやすい方もいます。

既往歴から考えた方がいい方もいます。

呼吸を見る方もいます。

内臓周辺の緊張を見ることもあります。

頭蓋領域は、その中の一つです。

ただ、もし痛いところだけを見て施術をしていて、

「どうも変わらないな」

という患者さんがいるのであれば、

頭部を含めて、今まで見ていなかった場所に視野を広げることは一つの選択肢だと思います。

分からない領域だからこそ、断定せずに見続けたい

頭蓋骨への施術は、まだ科学的に議論されている部分が多い領域です。

だからこそ私は、

「絶対こうです」

とは言わないようにしています。

でも同時に、自分が臨床で経験した変化まで、

「科学的に説明できないから全部無意味」

とも思いません。

実際に変化が出たのであれば、まずその事実を見る。

そして、なぜなのかを考える。

同じことが別の患者さんにも起こるのかを見る。

反対に変化が出ない人も見る。

その繰り返しです。

臨床経験を大切にしながら、それをすぐ医学的事実にしない。

この距離感は、施術者としてかなり大切だと思っています。

頭蓋骨については、私自身もまだまだ分からないことがあります。

でも、分からないからこそ面白い。

そして、目の前の患者さんに何か良い変化を作れる可能性があるのであれば、これからも丁寧に見続けていきたい領域の一つです。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。

ブログでは、
整体院・訪問マッサージ・鍼灸院などの現場で感じてきたことをもとに、
体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。

LINEでは、
もう少しだけ、
考え方の話を続けています。

必要な方だけ、
こちらからどうぞ。
▶ LINE登録はこちら

関連記事はこちら
▶ 手術歴は施術のヒントになる|今の痛みだけでなく「過去に体へ何が起きたか」を見る

▶ 患者さんを本当に良くする人は何を見ているのか

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次