マッサージ中、私は頭の中で何を考えているのか|主訴より先に全身を見る理由

今回は、私がマッサージをしている時に、頭の中で何を考えているのかを書いてみたいと思います。

私は全身をマッサージする場合、基本的には足先から始めます。

もちろん、絶対に足からでなければいけないという話ではありません。

単純に私自身がその見方に慣れているというのもあります。

ただ、一番の理由は、

足元から順番に見ていった方が、その人の姿勢や体の使い方を全体として把握しやすいからです。

目次

足から上へ、姿勢を予測しながら触っていく

例えば、足首周辺を触ります。

ここに緊張がある。

左右差がある。

ある筋肉だけ目立って張っている。

そうすると私は、

「この緊張が強いなら、膝はどうなっているだろう」

「股関節はどういう位置を取りやすいだろう」

と考えながら、少しずつ上へ進んでいきます。

例えば後脛骨筋周辺の緊張を強く感じたとします。

そこで、

「足部や下腿の使い方に偏りがあるのかな」

「その影響が膝や股関節までつながっているのかな」

と仮説を持ちます。

そして、そのまま太もも、股関節周辺へ上がっていく。

実際に中殿筋の前部線維周辺にも強い緊張を感じる。

そうすると、

「やっぱりこの側の下肢は、こういう使い方をしている可能性がありそうだな」

と、最初の仮説と照らし合わせます。

もちろん、

「この筋肉が硬いから股関節は必ずこの位置」

と決めているわけではありません。

触った情報を一つずつ集めて、全体像を予測している感じです。

片側を見たら、必ず反対側も考える

そして一方の脚がある程度見えてきたら、今度は反対側を考えます。

右がこうなっている。

じゃあ左はどうだろう。

右で支えているのか。

左が使えていないのか。

左右で役割が違うのか。

そこからさらに上へ進むと、

「じゃあ腰部の左右差はどうなっているだろう」

「脊柱はどちらへ適応しているだろう」

「胸郭はどうだろう」

と考えていきます。

私は大まかには、

足関節。

股関節。

脊柱全体。

胸郭。

頸部。

このあたりを一つの流れとして見ることが多いです。

マッサージ中に問診もしている

触っていると、

「なんでこの人はこういう姿勢になっているんだろう」

という疑問が出てきます。

そこで必要になってくるのが、患者さんの生活の情報です。

仕事は何をしているのか。

どんな姿勢が多いのか。

座っている時間は長いのか。

どちらを向くことが多いのか。

寝る時はどちら向きなのか。

場合によっては、自宅の間取りまで聞くことがあります。

なぜ家の間取りまで聞くのか

例えば、右側の筋緊張だけがかなり強い方がいたとします。

明らかなケガもない。

仕事でも、それほど片側だけを使っている感じではない。

そうすると私は、

「日常生活の中で、無意識に右側ばかり使う環境になっていないかな」

と考えます。

テレビはどちらにありますか。

ソファに座ると、どちらを向きますか。

ベッドはどちら側から乗り降りしますか。

いつも同じ方向を向いて寝ていますか。

こういうことを聞くことがあります。

本人にとっては当たり前すぎて、体の使い方として認識していないこともあります。

だから私は、

「触ってみると、少しこういうクセがありそうなんです」

「原因を考えたいので、普段の生活を少し教えてください」

という感じで聞きます。

昔の捻挫が、今の体を見るヒントになることもある

過去のケガもよく聞きます。

例えば足首です。

子どもの頃から何度も捻挫を繰り返していた方では、現在も足関節の不安定感が残っていることがあります。

足首を触った時に、

「この人、少し不安定だな」

と感じる。

その後、腰部まで触るとやたら緊張が強い。

そうすると私は、

「足元の不安定さを、もっと上で補っている可能性はないかな」

と考えます。

そこで、

「そういえば昔、足首をよく捻挫しませんでしたか?」

と聞いてみる。

実際に、

「学生の頃によく捻挫していました」

という話が出てくることもあります。

この時も、

「昔の捻挫が今の腰痛の原因です」

と決めるわけではありません。

ただ、体を考える材料が一つ増えます。

私は主訴から施術を組み立てすぎない

患者さんには当然、主訴があります。

腰が痛い。

肩が痛い。

首がつらい。

膝が痛い。

でも私は、最初から主訴だけを中心に体を見るのが少し苦手です。

なぜなら、どうしてもそこに引っ張られてしまうからです。

患者さん自身も、当然そこをよく見てほしいと思っています。

腰が痛ければ、腰を触ってほしい。

肩が痛ければ、肩を見てほしい。

その気持ちはよく分かります。

でも私自身が最初から、

「腰痛の原因を探そう」

と思って体を見ると、腰痛に関係しそうなものばかりを拾ってしまうんですよね。

だから最初は、

「一度、主訴を少し横に置いて、この人の全身はどうなっているんだろう」

と考えるようにしています。

全身を見てから、最後に主訴とつなげる

私の中では順番があります。

まず、全身を見る。

足元から触っていく。

左右差を見る。

筋肉の緊張を見る。

関節の状態を見る。

姿勢を予測する。

必要なら生活習慣や過去のケガを聞く。

そうやって、

「この人の体は、大まかにはこういう状態なんだろうな」

という全体像を作ります。

その後で、

「では、この全身の状態の中で、なぜ今この人はここに症状を訴えているんだろう」

と主訴につなげます。

私は、この順番の方が冷静に体を見やすいです。

主訴から入ると、見たいものだけを見てしまう

これは施術に限らないと思います。

人は最初に、

「原因はここじゃないか」

と思うと、それを裏付ける情報を集めやすくなります。

腰が悪いと思えば、腰の悪さが目につく。

骨盤だと思えば、骨盤ばかり気になる。

だから私は、なるべく最初から答えを決めないようにしています。

まず全身を触る。

情報を集める。

その後で主訴と結びつける。

この方が、自分の思い込みを少し減らせると思っています。

説明がつかない時に、別の視点を考える

では、全身を見た。

過去のケガも聞いた。

仕事や生活習慣も聞いた。

でも、どうしてもこの左右差や筋緊張を説明できない。

明らかな理由が見つからない。

そういう時に、私はさらに別の視点を考えます。

その一つとして、内臓周辺の状態を考えることもあります。

もちろん、

「この筋肉が硬いから、この臓器が悪い」

というように一対一で決めるわけではありません。

あくまで、筋骨格や日常生活だけでは説明しきれない時に、別の仮説として見ていくということです。

マッサージは、私にとって全身を調べる時間

こうやって書くと、マッサージ中ずっといろいろ考えています。

足を触りながら、股関節を予測する。

股関節を触りながら、反対側との違いを見る。

腰を触りながら、足首で感じたことを思い出す。

左右差があれば、仕事や生活を聞く。

昔のケガが関係していそうなら、それを確認する。

そして最終的に、主訴と全身の状態をつなげる。

だから私にとってマッサージは、単に筋肉を緩める時間ではありません。

全身を触りながら、患者さんの体が今どうなっているのかを調べる時間です。

最初から全部できなくてもいい

もちろん、最初からここまで考えながらマッサージをするのは難しいです。

私も最初からできたわけではありません。

最初は、

「この筋肉なんだっけ」

「作用なんだっけ」

というところからです。

でも少しずつ、

筋肉の起始・停止。

作用。

関節との関係。

左右差。

過去の症例。

そういうものが頭の中でつながってきます。

すると、ただマッサージをしているだけだった時間が、かなり面白くなります。

「ここがこうだから、上はこうなっているかもしれない」

「あ、やっぱりそうだった」

「でも反対側は予想と違う。なんでだろう」

そんなことを繰り返します。

施術中に考えることが増えると、マッサージの意味も変わる

同じマッサージでも、ただ順番通りに手を動かすのと、体から情報を集めながら行うのとでは、得られるものがかなり違います。

私は別に、マッサージという技術そのものを難しくする必要はないと思っています。

大切なのは、

「今、自分は何を感じたんだろう」

「それは何を意味するんだろう」

「次にどこを確認したら、この仮説を確かめられるだろう」

と考えることです。

手は筋肉を触っていますが、頭の中ではずっと全身を見ています。

私にとっては、それがマッサージ中に考えていることです。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。

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