新人スタッフを教育していると、どうしても言いたくなる言葉があります。
「前にも言ったよね」
です。
一度説明した。
メモも取っていた。
その時は「分かりました」と言っていた。
それなのに、実際の現場ではできていない。
教えている側からすると、かなりイラッとすると思います。
その気持ちは、すごく分かります。
私自身も、スタッフ教育をしていてそう感じることはあります。
ただ、私は新人スタッフに対して、
「前にも言ったよね」という言葉は、なるべく使わない方がいい
と思っています。
なぜなら、その言葉は新人を成長させるためというより、教える側の感情を処理する言葉になりやすいからです。
一度説明したからといって、すぐ行動に移せるとは限らない
スタッフによって、覚えるスピードはかなり違います。
一回説明しただけで、
「なるほど、分かりました」
と理解して、すぐ行動に移せる人もいます。
そういう人は、教育する側からすると本当に楽です。
でも、全員がそうではありません。
説明を聞いた時には理解していても、実際の現場になるとうまくできない。
頭では分かっているけれど、行動につながらない。
緊張すると抜けてしまう。
別のことを考えていて忘れてしまう。
こういうことは普通にあります。
特に新人の頃は、覚えること自体が多いです。
患者さんへの対応。
施術。
報告。
時間管理。
会社のルール。
周囲への気遣い。
一つひとつは難しくなくても、全部同時にやろうとすると頭の中はかなり忙しくなります。
教える側は「一度言った」という事実を強く覚えている
一方で、教える側は覚えています。
「これは前に説明した」
「この話もした」
「この前も同じことがあった」
だから、できていない姿を見ると、
「なんで?」
となります。
そして、つい、
「前にも言ったよね」
と言いたくなります。
でも、ここで一度考えた方がいいと思っています。
「言ったこと」と「できるようになったこと」は、同じではありません。
説明した。
理解した。
覚えた。
実際にできた。
無意識でもできるようになった。
これは全部別の段階です。
「前にも言ったよね」は、受け手には違う意味で届く
教える側としては、
「一度伝えているんだから、次は気をつけようね」
くらいの意味で言っているかもしれません。
でも、新人スタッフ側はそう受け取らないことがあります。
「怒られた」
「またできなかった」
「自分は仕事ができないと思われている」
「こんなこともできないのかと思われた」
そんなふうに受け取ることがあります。
もともと本人自身も、
「ちゃんとやりたい」
と思っているかもしれません。
でも、うまくできなかった。
その時点ですでに本人なりの歯がゆさがあります。
そこへ、
「前にも言ったよね」
が加わる。
すると、さらにテンパってしまいます。
教える側の目的は「分からせること」ではなく「できるようにすること」
ここが、一番大事だと思っています。
新人教育の目的は何なのか。
経営者や先輩が、
「私はちゃんと教えました」
と証明するためではありません。
スタッフに反省させることでもありません。
ましてや、自分のイライラをぶつけることでもありません。
目的は、
そのスタッフが、現場でスムーズに仕事をできるようになること
です。
だったら、その目的に一番近づく言葉を選んだ方がいい。
私はそう思っています。
「前にも言ったよね」を分解すると、教える側の都合が見えてくる
「前にも言ったよね」
という言葉を少し分解してみると、教える側の気持ちが見えてきます。
一回説明したんだから覚えてほしい。
同じ説明を何度もしたくない。
早く一人前になってほしい。
自分の仕事を増やしてほしくない。
もう少しスムーズに動いてほしい。
こういう気持ちがあると思います。
どれも、気持ちとしては分かります。
ただ、それは新人側の成長というより、教える側の都合なんですよね。
「前にも言ったよね」と言いたくなった時こそ、自分が何にイライラしているのかを見る必要があると思っています。
一度説明したことを、すぐできるようになってほしいと思っていないか
教える側は、どうしても自分を基準にしてしまいます。
自分なら一回聞いたら分かる。
自分は昔もっと動けた。
自分ならメモを取る。
でも、スタッフは自分ではありません。
以前の記事でも書きましたが、経営者とスタッフでは見えている範囲も違います。
仕事への責任も違います。
経験も違います。
得意不得意も違います。
そこを同じ基準で見て、
「なんで自分と同じようにできないんだ」
となると、教育する側がどんどん苦しくなります。
メモを取っていない姿を見ると、さらに腹が立つ
これも、教育しているとあります。
こちらが大事なことを説明している。
でも、メモを取っていない。
そして後で忘れている。
そうすると、
「だから言ったじゃん」
と思いますよね。
これも分かります。
ただ、そこで、
「なんでメモ取らないの?」
と怒るだけでは、次も同じことが起きるかもしれません。
だったら、
「この部分は忘れやすいからメモしておいて」
と先に伝える。
大事な部分はマニュアルにする。
あとで確認できる場所へ置く。
そういう仕組みに変えた方が、再発は減ります。
新人教育では「本人の努力」と「会社の仕組み」の両方を見る
もちろん、新人本人にも努力は必要です。
覚えようとする。
メモを取る。
分からなければ聞く。
復習する。
同じミスを減らす。
ここは本人の責任です。
でも、会社側にもできることがあります。
説明方法を変える。
一度に教える量を減らす。
文章で残す。
動画にする。
実際にやって見せる。
本人にやってもらう。
理解できているか確認する。
どちらかだけではなく、両方を見る。
その方が教育はうまくいきやすいと思っています。
教えた後に「分かった?」だけでは足りないことがある
新人スタッフへ説明して、
「分かった?」
と聞く。
すると大体、
「はい」
と答えます。
でも、それだけでは本当に理解しているか分かりません。
新人側も、
「分かりません」
と言いづらいことがあります。
だから私は、
「じゃあ今の話、どういう意味だと思った?」
とか、
「実際にこのケースだったらどうする?」
と聞く方がいいと思っています。
そうすると、どこまで伝わっているのかが分かります。
説明した時点でズレが分かれば、現場でミスになる前に修正できます。
「分からない」と言える空気を作ることの方が大切
新人スタッフにとって、
「分かりません」
と言えるかどうかはかなり重要です。
でも、毎回質問するたびに先輩が不機嫌になる。
「それ前にも言ったよね」
と言われる。
そんな環境だったら、どうなるでしょう。
聞かなくなります。
分からないけど、自分で判断する。
適当にやる。
間違える。
そして、
「なんで聞かなかったの?」
と怒られる。
完全に悪循環です。
新人が質問しなくなった時、「自立した」と考える前に「質問できない空気になっていないか」を確認した方がいいと思っています。
質問しやすい職場の方が、結果的に事故も減らしやすい
整体院、鍼灸院、訪問マッサージなどは、人の体を扱う仕事です。
分からないことを勝手に判断することが、大きな問題につながる場合があります。
患者さんの体調がいつもと違う。
転倒した。
施術中に具合が悪くなった。
どう対応すればいいのか迷った。
そういう時に、
「こんなこと聞いたら怒られるかな」
とスタッフが考える会社は危険です。
だったら、
「迷ったら連絡して」
「分からないなら聞いていいよ」
と普段から伝える。
その方が患者さんにとっても安全です。
イラッとした時には、そのまま話さない
とはいえ、教える側も人間です。
何度も同じことが続いたら、イライラします。
これはしょうがないと思っています。
大事なのは、
「イライラするな」
ではありません。
感情が湧いた時に、そのまま言葉にしないことです。
カッとなった状態で話すと、どうしても口調が強くなります。
本来言う必要がなかったことまで言ってしまう。
相手も防御的になります。
そうなると、教育ではなく感情のぶつけ合いになります。
私は「5秒待つ」くらいでもいいと思っている
カッとなりやすい方なら、単純な方法でいいと思います。
5秒黙る。
一回深呼吸する。
少し水を飲む。
その場で言わなくてもいい内容なら、少し時間を置く。
それだけでも、最初に出てくる言葉は変わります。
例えば、反射的には、
「前にも言ったよね?」
だったものが、5秒置くことで、
「どこが分かりづらかった?」
に変わるかもしれません。
この差はかなり大きいです。
感情が強い時には、教育の目的から一度離れてしまっている
自分がイライラしている時というのは、目の前のスタッフを育てることより、
「自分が今感じている不快感をどうにかしたい」
になっていることがあります。
でも、それをスタッフへぶつけても問題は解決しません。
一瞬、自分はスッキリするかもしれません。
でもスタッフは萎縮する。
質問できなくなる。
次のミスを隠すようになる。
それでは、むしろ教育から遠ざかります。
「前にも言ったよね」は、教育の言葉ではなく感情処理の言葉になっていないか。
私は、そこを一度考えた方がいいと思っています。
新人ができない時は「どこで止まっているのか」を見る
同じことを何度教えてもできない。
そういう時には、
「覚えが悪い」
でまとめない方がいいと思います。
どこで止まっているのかを見ます。
そもそも意味を理解していないのか。
意味は分かっているけれど、手順を覚えていないのか。
手順は分かるけれど、現場になると緊張して抜けるのか。
優先順位が分からないのか。
なぜ必要なのかが腹落ちしていないのか。
原因によって、教え方は全然違います。
「なぜやるのか」まで説明すると覚えやすくなることがある
例えば、
「施術が終わったら必ずケアマネジャーに報告してください」
とだけ教える。
これでもルールとしては伝わります。
でも、
「ケアマネジャーは自分の大切な利用者さんを私たちに紹介してくれている。進捗が分からないと不安になるから、必ず報告する」
まで説明する。
すると、ただの作業ではなくなります。
なぜ必要なのかが分かる。
意味が分かると、似た状況でも自分で判断しやすくなります。
私は、こういう「捉え方」を教えることを結構大切にしています。
何度言ってもできないなら、教え方そのものを変える
同じ説明を三回した。
でもできない。
そこで四回目も同じ言い方をして、
「なんでできないの?」
と言っても、あまり意味はありません。
一度変えた方がいいです。
口頭で駄目なら文章にする。
文章で駄目なら実演する。
実演したら本人にもやってもらう。
チェックリストを作る。
実際のケースを使って考えてもらう。
教え方にもいろいろあります。
相手に合う教え方を探すことも、教育する側の仕事だと思っています。
新人教育は、スタッフだけでなく教える側の練習でもある
スタッフを教育していると、
「この説明では伝わらないんだ」
ということがたくさんあります。
自分では分かりやすいと思っていた。
でも伝わらない。
違う説明をしたら、急に理解してくれた。
そんなこともあります。
これは教える側にとっても勉強です。
スタッフができないことを全部スタッフの問題にしてしまうと、こちらの説明力は上がりません。
でも、
「どう言えば伝わるかな」
と毎回考える。
すると、経営者自身のマネジメント力も少しずつ上がります。
それでも何度も繰り返す場合は、別の問題として考える
もちろん、何でも、
「経営者の教え方が悪かった」
で終わらせる必要はありません。
何度説明しても聞かない。
本人に改善する意思がない。
分からないのに質問もしない。
明確に決まっているルールを自分の判断で破る。
安全に関わる行動を何度も繰り返す。
こういう場合は別です。
本人の姿勢や適性についても考える必要があります。
ただ、それを判断する前に、
「会社側として必要な教育はしたか」
「本当に理解できる形まで伝えたか」
は一度確認した方がいいと思います。
「怒らないこと」が優しい教育ではない
今回、怒るなという話をしていますが、何も言わないという意味ではありません。
間違ったことは、間違っていると伝えます。
患者さんの安全に関わるなら、しっかり注意します。
会社として守らなければいけないルールもあります。
ただ、
「相手を萎縮させること」
と、
「必要なことをきちんと伝えること」
は別です。
感情で怒鳴らなくても、厳しい話はできます。
むしろ冷静に、
「これは患者さんの安全に関わるから、次から絶対にやめよう」
と伝えた方が、何が問題だったのかが分かりやすいこともあります。
教える側に余裕がない時ほど「前にも言ったよね」が出やすい
これは、自分自身の状態を見るサインにもなると思っています。
普段なら気にならないことにイライラする。
ちょっとしたミスでも腹が立つ。
何度も、
「前にも言ったよね」
と言いたくなる。
そういう時は、スタッフだけではなく、自分自身に余裕があるかも見た方がいいです。
仕事を抱えすぎていないか。
疲れていないか。
教育する時間を無理やり詰め込んでいないか。
スタッフへ早く成長してもらわないと困るという焦りが強すぎないか。
「とは言ってもイライラするんだよ」
という時は、スタッフの問題だけではなく、教える側に余裕がなくなっている可能性があります。
新人を早く育てたい時ほど、急がない方がいい
経営者としては、早く一人前になってほしいです。
当然です。
給与は発生しています。
教育にも時間を使っています。
一人で患者さんを任せられるようになれば、経営者も楽になります。
だから焦ります。
でも、その焦りをスタッフへそのままぶつけると、逆に成長が遅くなることがあります。
ミスを怖がる。
質問しなくなる。
自分で判断しなくなる。
経営者の顔色ばかり見る。
これでは、自立したスタッフにはなりません。
早く育てたいからこそ、質問していい。
失敗したら一緒に修正する。
その環境を作った方がいいと思っています。
「分からない」が早く出てくる会社の方が強い
私は、スタッフから早い段階で、
「分かりません」
と言われた方がいいと思っています。
分からないまま患者さんのところへ行かれる方が困るからです。
「これってどうすればいいですか?」
「この判断で合っていますか?」
そうやって聞いてくれれば、修正できます。
だから、質問されることを、
「こんなことも分からないのか」
ではなく、
「分からないまま進めずに聞いてくれてよかった」
と考える。
私は、その方が会社として安全だと思っています。
最終的には、経営者がいなくても考えられるスタッフに育てたい
ただし、いつまでも何でも聞いてほしいわけではありません。
最初は聞く。
説明する。
次に似たことが起きたら、自分で考える。
判断する。
必要なら報告する。
少しずつ、この範囲を広げます。
そのためには、答えだけではなく、
「私はなぜこう判断したのか」
まで伝える。
そうすると、スタッフの中に判断基準ができていきます。
以前の記事で書いた、理念や価値観を共有することもここにつながります。
新人教育で大切なのは「同じ答え」ではなく「判断できる頭」を作ること
経営者が毎回、
「こうしなさい」
と答えを教える。
それだけだと、そのケースしかできません。
少し状況が変わると、また分からなくなります。
だから、
「なぜこの対応なんだと思う?」
「患者さん側から見たらどう感じる?」
「この会社が大切にしていることから考えるとどうする?」
と一緒に考える。
そうやって、考える癖を作っていく。
その方が、最終的には経営者が細かく指示しなくても動けるスタッフになります。
「前にも言ったよね」と言いたくなった時こそ、一度立ち止まる
新人スタッフが、前に教えたことをまたできなかった。
イラッとする。
これは普通です。
でも、その感情をそのまま口にする必要はありません。
5秒待つ。
深呼吸する。
そして、目的を思い出します。
新人を責めたいのか。
それとも、次はできるようにしたいのか。
おそらく後者ですよね。
だったら、
「どこが分かりづらかった?」
「前に説明した時、どういう意味だと思ってた?」
「次からどうすればやりやすい?」
と聞いた方が、目的には近づきます。
「前にも言ったよね」は、教える側にとっては正論でも、新人を育てるためには役に立たないことがあります。
新人スタッフのミスは、教える側の余裕まで映し出す
新人教育をしていると、スタッフの成長だけではなく、自分自身もかなり見えます。
自分は相手が遅いとイライラするんだな。
一回で覚えてほしいと思っているんだな。
忙しい時ほど言葉がきつくなるんだな。
自分が説明したことにかなり執着するんだな。
いろいろ分かります。
そこで、
「スタッフが悪い」
だけで終わらせるのではなく、
「自分はどう教える人でありたいんだろう」
まで考えてみる。
人を雇うと、こういうところまで経営者自身が成長させられます。
教える目的を見失わなければ、言葉は自然と変わる
新人教育で大切なのは、私は結局ここだと思っています。
何のために教えているのか。
スタッフを言うことを聞かせるためではありません。
経営者の正しさを証明するためでもありません。
スタッフが仕事を覚えて、安心して患者さんを任せられるようになるためです。
その目的を忘れなければ、
「前にも言ったよね」
より、
「どこが伝わってなかったかな」
という言葉が出やすくなります。
そして、質問しやすい関係も作りやすくなります。
最初から何でもできる新人はいません。
教える側だって完璧ではありません。
だから、伝わらなかったらもう一度考える。
できなかったら、別の教え方を試す。
それでも難しければ、本人と一緒にどこでつまずいているのかを見る。
新人教育は「何回言ったか」ではなく、「できるようになるまでどう伝えるか」だと思っています。
私自身も、カッとなることはあります。
でも、そんな時ほど一回立ち止まる。
そして、
「この一言は、このスタッフが次にできるようになるための言葉なのか」
と考える。
それだけでも、スタッフとの関係も、教育の結果もずいぶん変わってくると思っています。

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体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。
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