初めて人を雇う経営者に必要なのは「ミスをフォローする覚悟」だと思う

初めてスタッフを雇う時、経営者側はいろいろ考えます。

ちゃんと仕事を覚えてくれるだろうか。

患者さんに失礼な対応をしないだろうか。

ミスなく働いてくれるだろうか。

自分と同じように動いてくれるだろうか。

当然、不安はあります。

私自身もそうでした。

ただ、今まで何人かスタッフを採用してきて思うのは、

「ミスをしない人を採用しよう」と考えるより、「ミスが起きた時に経営者である自分がどうフォローするか」を考えた方がいい

ということです。

基本的に、スタッフはミスをします。

というより、経営者もミスをします。

そこを前提にしておいた方が、私は人を雇いやすいと思っています。

目次

一から教えても、全部完璧に伝わるわけではない

新人スタッフが入ったら、一からいろいろ教えていきます。

患者さんへの接し方。

施術。

報告。

スケジュール。

会社のルール。

理念。

事故が起きた時の対応。

本当にいろいろあります。

でも、こちらが一度説明したからといって、全部完璧に理解してもらえるわけではありません。

これは当たり前だと思っています。

そもそも、経営者自身が自分の頭の中にあることを、全部きれいに言語化できているわけではありません。

自分では、

「ちゃんと説明した」

と思っている。

でも、スタッフは全く違う意味で受け取っていた。

こういうことは普通に起こります。

一つの言葉の選び方だけでも、受け取り方は変わる

人に何かを伝えるというのは、思っている以上に難しいです。

同じ内容でも、言葉を一つ変えるだけで受け取り方が変わります。

経営者としては、

「こういう意味で言った」

と思っていても、スタッフ側では、

「こういう意味だと思いました」

となることがあります。

それなのに、何か違う行動が起きた時に、

「なんでこんなことも分からないの?」

「前に言ったよね?」

と怒る。

これは、私はあまり良くないと思っています。

まず、

「ああ、伝わってなかったんだな」

と考える。

その上で、

「自分の伝え方のどこが分かりづらかったんだろう」

を見る。

私は、まずそこからだと思っています。

スタッフのミスを「スタッフだけの責任」にしない

もちろん、すべてのミスが経営者だけの責任だという話ではありません。

明確に教えたルールを故意に破る。

何度フィードバックしても同じことを繰り返す。

安全を軽視する。

そういう場合には、本人側の問題もあります。

ただ、特に入社したばかりの頃に起きたミスなら、私はまず会社側を見るようにしています。

説明は足りていたのか。

本人が理解できているか確認したのか。

マニュアルが必要だったのではないか。

その人に任せるタイミングが早すぎなかったか。

経営者自身が当たり前だと思っていたことを、ちゃんと言葉にしていたか。

スタッフのミスは、会社の仕組みの弱さを教えてくれることもあります。

ここが、人を雇える経営者かどうかの分かれ道だと思う

スタッフがミスをした。

その時に、

「こいつが悪い」

だけで終わるのか。

それとも、

「自分の教え方にも問題があったかな」

「次から同じことが起きないように、何を変えればいいだろう」

と考えるのか。

この差は、かなり大きいと思っています。

一人目、二人目を雇う段階では、会社の仕組みなんてまだまだ未完成です。

マニュアルも足りない。

教育制度も足りない。

経営者自身も、人を育てることに慣れていません。

だから、問題が起きるのはある意味当然です。

そこで全部スタッフの能力不足にしてしまったら、会社側は何も成長しません。

「前にも言った」は、経営者側の安心材料でしかないことがある

私自身も気をつけていますが、経営者がよく言いたくなる言葉があります。

「それ前にも言ったよね」

です。

でも、言ったことと伝わったことは違います。

説明した。

でも理解されていない。

理解はした。

でも実際の場面では結びつかなかった。

こういうことはいくらでもあります。

だから、

「言ったから自分には責任がない」

ではなく、

「どうすれば現場で使えるところまで伝わるんだろう」

と考える。

その方が、結果として経営者自身も楽になると思っています。

経営者がスタッフのせいにし続けると、スタッフは離れていく

スタッフ側の立場で考えてみます。

入社した。

まだ会社のことは分からない。

言われた通りにやったつもりだった。

でも、経営者から、

「なんでこんなことやったの?」

「普通分かるでしょう」

と毎回言われる。

こういう環境で、長く働きたいでしょうか。

人によって反応は違います。

「もうこんな会社すぐ辞めよう」

となる人もいます。

一方で、すぐには辞めないけれど、

「次の職場が決まったら辞めよう」

と静かに気持ちが離れる人もいます。

表面上は普通に働いているので、経営者には気づきにくいです。

でも、会社への期待はもうなくなっています。

スタッフのミスにどう向き合うかは、定着率にもそのまま影響すると思っています。

怒る前に「なぜそうしたのか」を聞く

何か問題が起きた時、私はまず理由を聞く方がいいと思っています。

「なんでこんなことしたの?」

と責める意味ではありません。

本人がどう考えて、その行動を選んだのかを聞きます。

例えば、

「私はこういう意味で伝えたんだけど、どういう意味だと思ってた?」

と聞く。

すると、

「私はこういう意味だと思ってました」

と返ってくる。

そこで初めて、

「ああ、そこがずれてたのか」

と分かります。

これなら修正できます。

本人の考え方が違ったのであれば、そこを話せばいい。

説明不足なら、自分が直せばいい。

仕組みの問題なら、会社を直せばいい。

ミスは、教育の材料にもなる

実際、スタッフ自身も、自分が一度失敗したことはかなり覚えます。

何も起きていない状態で、

「こういう時はこうしてください」

と説明する。

もちろん必要です。

でも、実際に一度問題が起きて、

「ああ、こういうことになるんだ」

と経験した後の方が、理解が深くなることもあります。

以前の記事でも書きましたが、私はスタッフのミスそのものをゼロにしようとは思っていません。

大事故につながるものは当然防がなければいけません。

でも、小さな判断ミスまで全部経営者が先回りして防ぐと、スタッフが自分で考える機会もなくなります。

大切なのは、ミスを放置することではなく、

起きたミスを次の成長につなげること

だと思っています。

スタッフを雇うということは、経営者も教育されるということ

人を雇うと、スタッフだけが成長するわけではありません。

経営者自身もかなり鍛えられます。

自分が曖昧にやっていたことを説明しなければいけない。

今まで感覚で判断していたことを言葉にしなければいけない。

ルールを作らなければいけない。

「なぜそうするのか」を説明しなければいけない。

人によって伝え方も変えなければいけない。

一人でやっていた時には気づかなかった、自分自身の雑な部分がどんどん見えてきます。

これは結構きついです。

でも、その過程で会社としての仕組みができていきます。

スタッフを「株主のような存在」と考える経営者もいる

以前、ある経営者の方が、

「スタッフは株主みたいなものだと思っている」

という話をされていました。

私は、この考え方は分かりやすいなと思っています。

もちろん、法律上スタッフが株主だという意味ではありません。

会社を一緒に良くしていく存在として見る、という意味です。

スタッフ自身の行動が会社の業績につながる。

患者さんが喜んでくれる。

紹介が増える。

売上が増える。

会社が安定する。

スタッフ自身も、

「自分の仕事が会社に影響している」

と感じられれば、仕事への見え方も変わると思います。

ただ「会社のために頑張って」は、スタッフには響きにくい

ここで注意したいのが、経営者側の都合だけを押しつけないことです。

経営者としては、スタッフを一人雇う時点でかなりお金を使っています。

求人広告。

採用費。

給与。

社会保険。

教育時間。

制服。

備品。

場合によっては車両。

たくさん投資しています。

だから、

「早く投資した分を回収したい」

と思います。

その気持ちは、本当によく分かります。

でも、それは経営者側の話なんですよね。

スタッフからすると、

「それは会社が採用するために使ったお金ですよね」

という話でもあります。

そこで、

「会社はこんなにあなたへ投資しているんだから頑張って」

だけでは、なかなかモチベーションにはならないと思います。

頑張った先に何があるのかを、スタッフにも見えるようにする

もし会社の業績を意識してほしいのであれば、

「頑張ったら会社にとっていい」

だけでは足りないと思います。

スタッフ自身にどう返ってくるのか。

そこも必要です。

例えば、

業績が上がれば賞与へ反映する。

評価制度で昇給につながる。

役割が増えれば待遇が変わる。

会社が安定すれば働きやすい環境へ投資する。

そういう形です。

スタッフが頑張っても給与も評価も何も変わらない。

それなのに、

「もっと経営者目線を持って」

と言われても、やっぱり難しいと思うんですよね。

一人目なら、まだ言葉で説明できる

スタッフが一人、二人くらいであれば、経営者自身が直接話せます。

例えば、

「今は会社としてこの部分に投資している」

「ここが安定したら、次は待遇へこう反映したいと思っている」

「今はこの目標を目指している」

と直接説明できます。

信頼関係があれば、

「なるほど、じゃあ今は一緒に頑張ろう」

となることもあります。

小さい会社の良さですよね。

経営者とスタッフの距離が近い。

だから、制度が完璧でなくても、経営者自身が説明して補える部分があります。

人数が増えてくると「言葉」だけでは足りなくなる

ただ、スタッフが増えてくると、それだけでは難しくなります。

一人ひとりに毎回、

「今回はこうだから」

と説明する。

人によって説明が少し違う。

すると、

「あの人にはこう言っていた」

「私はこう聞いた」

というズレも起きます。

そこで必要になるのが、仕組みです。

評価制度。

賞与の考え方。

昇給基準。

就業規則。

面談。

情報共有。

人数が増えるほど、経営者の気持ちを仕組みに変えていく必要があります。

経営者の善意だけでは、組織は回らなくなる

経営者としては、

「スタッフにはちゃんと還元したい」

と思っている。

「大切にしたい」

と思っている。

でも、スタッフからそれが見えなければ意味がありません。

経営者の頭の中にしかないからです。

だから、人数が増えたら、

「頑張ったらどう評価されるのか」

「会社の業績とスタッフの待遇はどう関係するのか」

「何をすれば次の役割へ進めるのか」

を少しずつ明確にする。

会社が大きくなるということは、経営者の気持ちを制度へ変えていくことでもあると思っています。

スタッフを雇うなら、その人の人生も少し背負う覚悟が必要だと思う

私は、人を雇うということは、単純に労働力を購入することではないと思っています。

そのスタッフにも生活があります。

家族がいる人もいます。

住宅ローンがあるかもしれない。

子どもの教育費があるかもしれない。

将来への不安もあります。

その人が、

「ここで働こう」

と決めてくれた。

それなら経営者として、ある程度その人の人生を背負う覚悟は必要だと思っています。

もちろん、スタッフの人生すべてに責任を負えるわけではありません。

でも、少なくとも会社として、

「安心して働ける場所にしよう」

「頑張ったら少しでも返せる会社にしよう」

「何かあった時に切り捨てるだけの会社にはしないようにしよう」

という気持ちは持っていたいです。

私はまだ、スタッフへの還元は足りていないと思っている

私自身も、

「もう十分スタッフを大切にできています」

とは全然思っていません。

むしろ、まだ足りていないと思っています。

給与。

賞与。

休み。

働きやすさ。

教育。

キャリア。

もっとできることはあると思っています。

ただ、完璧な会社になるまで人を雇わないというわけにもいきません。

だから、少しずつ改善します。

今より何が良くできるのか。

この制度は本当にスタッフにとっていいのか。

何を変えたら働きやすいのか。

それを考え続ける。

分からなければ、スタッフ本人に聞いてしまえばいい

そして私は、分からない時にはスタッフに直接聞きます。

「この仕組み、どう思う?」

「こっちとこっちなら、どっちの方が働きやすい?」

「今困っていることってある?」

「どうしたらもっと良くなると思う?」

経営者だけで考えても、スタッフの気持ちは完全には分かりません。

だったら本人に聞けばいい。

私は、そういうやり方をしています。

スタッフから「クリアに相談してくれるから安心する」と言われた

これは私自身、少し意外だったことがあります。

スタッフにいろいろ相談していた時に、

「川口さんは結構クリアに話して相談してくれるので、安心して働けます」

というようなことを言ってもらったことがあります。

私は、そこまで狙ってやっていたわけではありません。

単純に、

「自分だけでは分からないから聞こう」

と思っていただけです。

でもスタッフからすると、

会社が今どういう状態なのか。

経営者が何を考えているのか。

なぜこの判断になったのか。

そういうことが見える方が安心できるんですよね。

そこで私自身も、

「なるほど、こういうところも安心感につながるんだな」

と学びました。

経営者は、何でも完璧に分かっているふりをしなくていい

経営者になると、

「自分が全部正解を知っていなければいけない」

と思ってしまうことがあります。

でも、実際には分からないことだらけです。

人事制度だって分からない。

スタッフがどう感じるかも分からない。

採用も失敗する。

マネジメントも失敗する。

だったら、

「私はこう考えているけど、どう思う?」

と聞けばいいと思います。

それで経営者の権威がなくなるとは、私は思いません。

むしろ、ちゃんと話してくれる方が、スタッフも経営者の考えを理解しやすいです。

スタッフを大切にするというのは「優しくすること」だけではない

スタッフを大切にするというと、

休みを増やす。

給与を上げる。

怒らない。

そういうものをイメージするかもしれません。

もちろん、それも大切です。

でも私は、それだけではないと思っています。

間違ったことをしたら伝える。

必要なら厳しい話もする。

会社の状況も可能な範囲で共有する。

将来について話す。

頑張った部分はちゃんと見る。

何か問題が起きたら、経営者も一緒に責任を取る。

そういうこと全部を含めて、スタッフを大切にすることだと思っています。

「スタッフのため」と言いながら、経営者だけが得をする仕組みにしない

ここも気をつけたいところです。

経営者は、知らない間に自分に都合のいい理屈を作ることがあります。

「会社が安定すればスタッフのためになる」

もちろん、その通りです。

でも、その言葉を使って、利益をすべて会社側に残してスタッフには何も返さないのであれば、話は違います。

スタッフも見ています。

経営者だけがどんどん豊かになっている。

自分たちには何も変わらない。

それでは、

「会社のために頑張ろう」

とはなりにくいですよね。

だからこそ、還元の考え方も少しずつ整える必要があります。

最初から完璧な制度は作れない

ただ、これも最初から完璧にする必要はないと思っています。

一人目から完璧な評価制度。

完璧な賞与設計。

完璧なキャリアパス。

全部作ろうとしたら、人を雇う前に疲れてしまいます。

最初は、経営者自身がちゃんと話す。

頑張ってくれたら、その都度できる形で返す。

人数が増えたら、少しずつルールにする。

制度にする。

そうやって会社と一緒に仕組みも育てればいいと思っています。

一人目の採用で大切なのは「この人がミスした時に守れるか」

私は、初めて人を雇おうとしている方には、採用条件だけでなく、もう一つ考えてみてほしいです。

「この人が仕事でミスをした時、自分は一緒にフォローしようと思えるか」

です。

患者さんへ謝ることになるかもしれません。

自分が代わりに現場へ行くことになるかもしれません。

休みの日に対応しなければいけないこともあるかもしれません。

もう一度一から教え直す必要もあるかもしれません。

それでも、

「まあ、最初なんだからしょうがないよね。次どうするか考えよう」

と思えるか。

私は、その覚悟がかなり重要だと思っています。

人を雇うと、経営者の自由は一度減る

人を雇えば、自分が楽になる。

そう考えて採用する方もいます。

でも、最初はむしろ逆だと思います。

教育が増える。

質問が増える。

ミスのフォローが増える。

給与も払う。

労務も増える。

自分一人なら起きなかった問題も起こります。

だから、最初は自由が減ります。

そこを乗り越えて、スタッフが育ち、仕組みができてきて、初めて経営者の時間が増えていきます。

この順番を知らずに、

「人を雇ったらすぐ楽になる」

と思うと、かなりしんどいと思います。

でも、その過程を超えると一人では作れなかった会社になる

人を育てるのは大変です。

自分の説明不足にも気づかされます。

お金もかかります。

ミスもあります。

経営者としてイライラすることだってあります。

でも、そのスタッフが少しずつ育っていく。

自分が言わなくても患者さんのことを考えてくれる。

後輩に教えてくれる。

会社のことを考えて意見をくれる。

そうなってくると、一人でやっていた時とは全く違う会社になります。

だからこそ最初の段階では、

「ミスしない人を探そう」

ではなく、

「この人のミスなら、自分も一緒に直していこうと思えるか」

という視点も持ってみていいと思います。

人を雇う覚悟とは、スタッフの成功だけでなく失敗も引き受けること

スタッフがうまくいった。

患者さんから褒められた。

売上を作ってくれた。

そういう時だけ、

「うちのスタッフです」

と言うのではなくて。

ミスした。

うまく伝わらなかった。

患者さんから指摘を受けた。

そういう時にも、

「自分が採用して、自分の会社で働いてもらっているスタッフだから」

と一緒に考える。

その覚悟が、人を雇うということなのではないかと思っています。

そして、スタッフに頑張ってもらいたいのであれば、経営者側も少しずつ仕組みを整えて、頑張った分を返せる会社にしていく。

まだ十分ではないと思えば、スタッフにも聞く。

「どうしたらもっと良くなると思う?」

と相談する。

私は、そんなやり方で今も会社を作っています。

完璧な経営者である必要はないと思います。

でも、問題が起きた時にスタッフだけのせいにせず、「自分にできる修正は何だろう」と考え続けること。

初めて人を雇う時には、その覚悟の方が、完璧な採用基準よりも大切なのかもしれません。

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