「姿勢が悪いから痛い」と簡単には言えない|同じような姿勢でも痛い人と痛くない人がいる

今回は、少し難しい話です。

これまでの記事では、姿勢を見ることの大切さについて何度か書いてきました。

筋肉の緊張から姿勢を考える。

姿勢から、どこに負担がかかっているのかを考える。

腰が痛いから腰だけを見るのではなく、股関節や胸郭、足首まで見てみる。

私は普段、そういう見方をしています。

ただ、ここで一つ注意したいことがあります。

「姿勢が悪いから痛みが出ている」と、それだけで説明するのも違うと思っています。

目次

同じような姿勢なのに、症状が違う人がいる

ある程度臨床経験を積んでいる方なら、経験したことがあると思います。

整体院、訪問マッサージ、鍼灸院、接骨院。

いろいろな患者さんを見ていると、かなり似たような姿勢の方がいます。

でも、症状は同じではありません。

ある人は腰が痛い。

ある人は首が痛い。

ある人は肩がつらい。

そして、ほとんど痛みを感じていない人もいます。

知り合いなどを見て、

「かなり姿勢が崩れているな」

と思って話を聞いてみても、

「いや、別にどこも痛くないよ」

ということもあります。

ここが面白いところです。

姿勢だけで痛みが決まるのであれば、似た姿勢の人には似た症状が出るはずです。

でも、実際にはそうならない。

では、その違いは何なんだろう。

私はそこを考えます。

今回は「答え」ではなく、私が考える材料の話

最初にお伝えしておくと、

「この違いはこれで説明できます」

という答えを今回書くつもりはありません。

痛みはそんなに単純なものではないと思っています。

あくまで一人の施術者として、

「同じような姿勢なのに、なぜこの人は痛くて、この人は痛くないんだろう」

と考えた時に、頭の中に出てくる要素を書いてみます。

一つ目は、筋力や体を支える能力

例えば、筋力です。

仮に姿勢の影響によって、ある場所に負担がかかりやすくなっているとします。

その負担に対して、体を支える能力には個人差があります。

筋力。

筋持久力。

普段どのくらい体を動かしているのか。

こういった条件は人によって違います。

同じような姿勢に見えても、その姿勢を維持するために必要な負担が本人にとってどの程度なのかは違うはずです。

だから私は、見た目の姿勢だけではなく、

「この人には、この状態を支えられる余力がどのくらいあるんだろう」

ということも考えます。

柔軟性や関節の動きも人によって違う

次に考えるのが、柔軟性や関節の動きです。

同じような姿勢に見える二人でも、触った時の筋肉の状態は同じとは限りません。

柔らかく動ける人もいれば、かなり動きが小さい人もいます。

同じ姿勢を取っていても、必要に応じて別の動きへ変えられる人と、一定の場所に負担が集中しやすい人では違いがあるかもしれません。

ただし、

「体が硬い人ほど必ず痛くなる」

という意味ではありません。

柔軟性も、あくまで私が見る材料の一つです。

内臓からの痛みや反応もある

そして私は、筋骨格だけでは説明しにくい時には、内臓からの影響についても考えます。

医学的にも、内臓の異常によって本来の臓器とは違う場所に痛みを感じる「関連痛」は知られています。

内臓からの感覚入力と、皮膚や筋肉などからの感覚入力が神経系で重なることなどが、その仕組みとして考えられています。

例えば、内臓の病気によって背中などに痛みを感じることがあります。

これは施術者として知っておかなければいけないことです。

当然ですが、こうした内臓疾患が疑われる場合は、整体やマッサージだけで判断する話ではなく、医療機関での評価が必要です。

一方で私自身は、病気として明確に症状が出ているケースだけではなく、

「体の中からの情報が、筋緊張や体の使い方に何か影響している可能性はないだろうか」

というところまで臨床上の仮説として考えることがあります。

ただ、この部分は分かっていないことも多いので、

「この筋肉が硬いから、この内臓が悪い」

というような判断はしません。

私の中では、あくまで仮説の一つです。

循環についても考える

もう一つ、私が考えるのが循環です。

筋肉が活動すると、その組織ではさまざまな代謝産物が生じます。

また、血流が十分ではない状態では、局所の環境が変化し、痛みを感じる神経が刺激されたり、敏感になったりする仕組みも知られています。

だから私は、

「この場所は緊張が続いているだけではなく、局所の循環にも影響が出ていないかな」

と考えることがあります。

ただ、これも、

「発痛物質が溜まっているから痛い」

「血流を良くすれば全部流れて痛みが消える」

というほど単純ではありません。

痛みには末梢の組織だけでなく、神経系を含めてさまざまな仕組みが関係しています。

結局、一つ一つの要素が少しずつ重なっているのかもしれない

私は、ここがすごく面白いところだと思っています。

姿勢だけを見ると似ている。

でも、筋力が違う。

柔軟性が違う。

関節の動きが違う。

普段の活動量も違う。

過去のケガも違う。

体の中の状態も違う。

循環も違う。

さらに睡眠や疲労、ストレスなど、痛みに関係する要素は他にもあります。

だから、見た目としては同じような姿勢でも、体の中で起きていることまで同じとは限りません。

一つ一つでは問題にならないくらいの小さな違いが重なって、ある人には痛みが出る。

別の人には出ない。

私はそんなことも考えながら患者さんを見ています。

だから「姿勢が悪いですね」で終わらせたくない

患者さんを見て、

「猫背ですね」

「骨盤が傾いていますね」

「だから腰が痛いんですよ」

と言ってしまえば、説明としてはすごく分かりやすいです。

でも、本当にそれだけなのか。

同じような姿勢なのに痛くない人がいる以上、私はそこで一度疑問を持ちたいんです。

姿勢は大切です。

でも、姿勢だけで痛みを説明しようとすると、逆に見えなくなるものもあると思っています。

私自身も、まだ完全には整理できていない

今回は、いつもの記事以上に「私はこう考えています」という話です。

正直に言えば、私自身の中でも完全に整理できているわけではありません。

筋力。

柔軟性。

関節。

姿勢。

内臓。

循環。

神経。

生活習慣。

いろいろなものが少しずつ関係しながら、人の体は成り立っています。

だから臨床をしていると、

「なんでこの人はこの姿勢なのに痛くないんだろう」

「なんでこちらの人には痛みが出ているんだろう」

という疑問が出てきます。

私は、その疑問を無理に一つの答えにしなくてもいいと思っています。

「姿勢が悪いから痛い」と答えを一つにするより、「同じ姿勢なのに、なぜこの人は痛いんだろう」と考える。

その方が、患者さんの体を見る時の視野は広がると思っています。

今回は、一人の施術者が普段こんなことも考えながら体を見ています、という話として読んでいただければと思います。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。

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