訪問マッサージではもちろんですが、整体院や接骨院、鍼灸院などで働いている方にとっても、筋肉を覚えることはすごく大切だと思っています。
以前の記事では、
「筋肉の起始・停止・作用を覚えることで、姿勢を考えられるようになる」
という話を書きました。
でも、筋肉を覚えるメリットはそれだけではありません。
患者さんに簡単なエクササイズを教える時にも、解剖学の知識がそのまま使えます。
施術だけではなく、患者さん自身に動いてもらう
例えば、ある患者さんに痛みがある。
体を見ていくと、姿勢や動きの中で、ある筋肉がうまく使えていないように感じる。
そんなケースがあります。
この時に、施術だけではなく、
「この筋肉を少し使う練習をしてみましょう」
と一つ、二つ簡単な運動を教える。
それだけで体の使い方が変わって、結果として症状の軽減につながるケースもあります。
その時に必要になるのが、筋肉の起始・停止・作用の知識です。
この筋肉が何をするか分かれば、運動も考えやすい
この筋肉はどこから始まって、どこについているのか。
収縮すると、どの関節をどちらへ動かすのか。
それが分かっていれば、
「この筋肉を働かせたいなら、どういう動きをしてもらえばいいだろう」
と考えることができます。
もちろん、本格的なトレーニング指導には別の知識も必要です。
負荷量。
回数。
フォーム。
運動の難易度。
どう段階的に強度を上げていくか。
アスリートを指導するのであれば、こうしたトレーニングそのものの勉強は必要だと思います。
ただ、一般の患者さんに対して、
「この動きを少し練習してみましょう」
という基本的な運動指導をするのであれば、まず解剖学が分かっていることがかなり大きな土台になります。
必ずしも「筋肉を強くする」必要はない
ここで、私が結構大切だと思っていることがあります。
運動を教えるというと、
「筋力をつける」
というイメージが強いかもしれません。
でも、私は必ずしもすべての患者さんに、筋肉をものすごく強くしてもらう必要はないと思っています。
むしろ、
「普段の動作の中で、その筋肉をちゃんと使えるようにする」
という目的で運動を教えることがあります。
例えば歩く時。
立ち上がる時。
階段を上る時。
物を持つ時。
本来その動きに参加してほしい筋肉が、あまり働いていないように見える。
だったら、一度その筋肉を意識して動かす。
簡単なエクササイズを通して、
「こうやって使うんだ」
という感覚を作ってもらう。
私はそういう意味で、筋肉の「再教育」という言葉を使っています。
例えば腰痛の患者さんに大殿筋を使ってもらう
例えば腰痛の患者さん。
体を見ていく中で、股関節をうまく使えておらず、腰部に動きや負担が集中しているのではないかと考えたとします。
そして、大殿筋を含めた股関節周囲の筋肉をもう少し使ってもらった方がいいのではないか、と仮説を立てる。
そんな時には、大殿筋を意識しやすい簡単なエクササイズを教えることがあります。
目的は、
「大殿筋をムキムキにしましょう」
ではありません。
股関節を使う時に、必要な筋肉が参加しやすくなるように練習してもらう。
私はそんな感覚で使っています。
もちろん、腰痛だから大殿筋を鍛えれば良くなる、という話ではありません。
患者さんの動きや状態を見て、必要だと考えた場合の一例です。
足部なら、足の筋肉を使う練習をすることもある
足部でも同じです。
例えば扁平足傾向があり、足部の筋肉をもう少し使ってほしいと考えた場合。
タオルギャザーのような足趾を使う運動を教えることもできます。
あるいは、足のアーチを保ちながら足底の筋肉を使う練習などもあります。
ここでも大切なのは、
「この運動をやれば扁平足が治る」
と考えることではありません。
足部を構成する筋肉がどこについていて、どんな働きをしているか。
それを理解した上で、患者さんの状態に合わせて運動を選ぶということです。
エクササイズ名をたくさん覚えることが目的ではない
新人スタッフを見ていると、
「腰痛にはどんなトレーニングを教えればいいですか?」
「扁平足には何をすればいいですか?」
という考え方になりやすいです。
もちろん、代表的なエクササイズを知ることも大切です。
でも私は、それより先に筋肉を覚えてほしいと思っています。
なぜなら、
エクササイズの名前を覚えるより、「何のためにこの動きをさせるのか」が分かった方が応用できるからです。
この筋肉を使いたい。
この関節をこの方向へ動かしたい。
この動作の中で、ここが働いてほしい。
そこまで分かっていれば、患者さんに合わせて運動を少し変えることもできます。
アスリートのトレーニングとは少し目的が違う
もちろん、競技スポーツの選手を対象にするのであれば話は変わります。
筋力。
パワー。
スピード。
持久力。
競技動作。
こうした能力を高いレベルで伸ばすのであれば、トレーニングの専門的な知識が必要です。
フォームの違い一つで、狙っている筋肉への負荷も変わります。
そこは私も大切だと思っています。
ただ、普段私たちが訪問マッサージや整体で関わる一般の患者さんの場合、必ずしも高度なトレーニングが必要とは限りません。
患者さんの日常生活の中で、今まであまり使えていなかったところを少し使いやすくする。
まずはそのくらいの運動でも十分意味があるケースがあります。
施術だけで終わらせなくてもいい
私は、患者さんに一つ運動を教えることには、もう一つ意味があると思っています。
患者さんからすると、
「マッサージをして終わり」
ではなく、
「少しでも早く良くなるために、家ではこれをやってみてください」
と教えてもらえる。
それだけでも、
「自分の症状について、ちゃんと考えてくれているんだな」
と感じてもらえることがあります。
もちろん、親切に思われるために教えるわけではありません。
施術者としては、少しでも早く症状が軽くなってほしい。
施術を受けていない時間にも、患者さん自身でできることがあるなら伝えたい。
その結果として、患者さんとの信頼関係にもつながるのだと思います。
筋肉を覚えると、できることが増える
筋肉の起始・停止・作用を覚える。
一見すると、ただの解剖学の暗記に見えるかもしれません。
でも実際の臨床では、そこからいろいろなことにつながります。
触っている筋肉が分かる。
姿勢を考えられる。
動きを予測できる。
そして、必要であれば患者さんに簡単な運動を教えることもできる。
筋肉を覚える目的は、筋肉の名前を答えられるようになることではありません。
目の前の患者さんに対して、自分ができることを増やすためです。
だから私は、新しく入ったスタッフにも、まず筋肉を覚えてもらうところから始めています。
そこができてくると、マッサージだけだった施術の中に、評価や運動指導まで少しずつ入れられるようになります。
そうやって一つずつできることを増やしていけばいいと思っています。

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