整体院で売上が高いスタッフだけを評価すると、会社はどうなるのか

今回は、整体院や鍼灸院で、売上が高いスタッフだけを評価すると何が起こるのかについて書いてみようと思います。

スタッフの評価制度を作る際に、売上を評価項目へ入れること自体は悪くありません。

会社として給与を支払い、設備を整え、教育を続けていくためには、当然売上が必要です。

施術者にも、ある程度は数字を意識してもらう必要があります。

ただし、評価制度を売上だけに偏らせると、経営者が意図していなかった行動が増えることがあります。

例えば、回数券を販売している整体院で、回数券の販売額が高いスタッフほど昇給する制度を作ったとします。

そうなれば、頭の良いスタッフほど、

「一番回数の多い回数券を売れば評価される」

と考えるようになります。

それは、スタッフが悪いという話ではありません。

経営者が、売上を作る人ほど高く評価される制度を作った結果です。

何を評価項目に入れるかによって、スタッフが日頃どこへ力を使うのかは変わります。

評価制度は、単に今いるスタッフを採点するためのものではありません。

会社の中で、どのような行動を増やすかを決める仕組みでもあります。

目次

売上だけを評価すれば、高額な提案が増えやすくなる

売上だけを強く評価する制度では、スタッフは自然と単価の高い提案を意識します。

例えば、回数券が次の三種類あったとします。

  • 5回券
  • 10回券
  • 20回券

販売金額がそのまま本人の評価や給与へ反映されるのであれば、20回券を販売した方が評価されます。

患者さんの状態としては10回程度で十分かもしれない。

本人の生活や費用を考えれば、まず5回で変化を確認した方がよいかもしれない。

それでも、20回券を販売した方が高く評価される制度であれば、スタッフの提案は20回へ寄りやすくなります。

経営者が、

「患者さんに必要な提案をしてほしい」

と思っていたとしても、評価制度では、

「より高い商品を販売してください」

というメッセージを送っていることになります。

言葉で伝えている理念と、実際の評価基準が違えば、スタッフは評価基準の方を見ます。

給与や昇進に直結するのは、理念ではなく、評価表だからです。

必要以上の施術提案は、患者さんの信頼を損なう

必要以上に高い回数券や、多すぎる施術頻度を勧めれば、短期的には売上が上がるかもしれません。

しかし、患者さんは徐々に違和感を持ちます。

本当にこれだけ通う必要があるのか。

自分の体を見た上での提案なのか。

ただ売上を作りたいだけではないか。

そのように感じれば、院への信頼は下がります。

患者さんは、施術についての専門知識を持っていないことが多いため、その場では説明を信じて契約するかもしれません。

しかし、実際に通い始めて、

「思ったほど説明がない」

「回数券を買う前ほど熱心に対応してくれない」

「毎回同じ施術をされている」

と感じれば、次の購入にはつながりません。

一度目の高額契約は取れても、長い信頼関係は作れないということです。

回数券を売る時だけ熱心なスタッフが生まれる

売上だけが評価される制度では、セールストークが上手なスタッフが高く評価されやすくなります。

説明が上手で、患者さんの気持ちを動かすことができる。

回数券を購入してもらうところまでは、とても熱心に対応する。

しかし、購入後は対応が少しずつ雑になる。

このようなことも起こり得ます。

なぜなら、そのスタッフにとって重要なのは、購入後の満足度ではなく、販売時点の売上だからです。

回数券を売った時点で評価が確定するのであれば、その後どれだけ丁寧に対応しても、評価は大きく変わりません。

反対に、購入後の対応を少し省いて、次の新しい患者さんへ回数券を販売した方が、数字は上がります。

これは、スタッフ個人の人間性だけの問題ではありません。

購入後の施術品質や継続満足度を評価せず、販売額だけを評価した制度にも原因があります。

短期的な売上と、長期的な売上は違う

一回の高額な回数券を販売すれば、その月の売上は上がります。

経営者から見ると、数字を作った優秀なスタッフに見えるかもしれません。

しかし、患者さんがその経験に不満を持ち、その後二度と利用しなければ、長期的にはどうでしょうか。

追加購入はありません。

家族や知人への紹介も起こりません。

場合によっては、周囲へ悪い印象を話される可能性もあります。

一方で、その場では必要最低限の回数を提案し、丁寧な施術を続け、患者さんから長く信頼されたスタッフがいたとします。

その患者さんが継続利用してくださり、家族や知人を紹介してくだされば、長期的な売上は大きくなります。

どちらが会社にとって本当に価値のある行動でしょうか。

単月の売上だけを見れば、高額な回数券を売ったスタッフが上です。

しかし、長期的な信頼や紹介まで考えれば、評価は変わる可能性があります。

売上を見るのであれば、短期の販売額だけではなく、その後の継続や信頼まで見た方がよいと思います。

売上を評価すると、患者さんの取り合いが起こることがある

売上がそのまま本人の給与や昇給へ直結する制度では、患者さんの取り合いが起こることもあります。

言葉は悪いですが、利用金額の大きい患者さんはいます。

高い頻度で通える方。

高額な回数券を購入できる方。

物販も利用してくださる方。

家族や知人を何人も紹介してくださる方。

そのような患者さんを担当すれば、スタッフ個人の売上は上がりやすくなります。

その売上が評価や給与へ直接反映されるのであれば、

「この患者さんは自分が担当したい」

「ほかのスタッフへ引き継ぎたくない」

という気持ちが生まれても不思議ではありません。

情報共有をせず、自分だけで抱え込む。

ほかのスタッフが担当しようとすると不満を持つ。

新規患者さんの割り振りに敏感になる。

担当患者さんの人数や単価を、スタッフ同士で比べる。

このような状態になると、職場は少しずつ殺伐としていきます。

患者さんの取り合いは、患者さんにも伝わる

スタッフ間の競争は、院内だけの問題ではありません。

患者さんにも、その雰囲気は伝わります。

担当を変更しようとした時に、スタッフの態度が変わる。

ほかのスタッフの施術を否定する。

自分の施術の方が優れていると強調する。

患者さんを引き留めるために、必要以上の言葉を使う。

患者さんからすれば、自分の体を良くすることより、スタッフ同士の数字が優先されているように感じます。

本来であれば、誰が担当しても、会社全体として患者さんを支えられる状態が理想です。

スタッフ同士で情報を共有し、必要に応じて相談し、より良い施術を考える。

しかし、個人売上だけを強く評価すれば、協力より競争が優先されやすくなります。

後輩教育をしなくなるのは、ある意味では当然

売上だけが評価される会社では、後輩教育やマネジメントを頑張らなくなる可能性があります。

なぜなら、後輩を教えている時間には、自分の売上が発生しないからです。

後輩の施術を確認する。

カルテを一緒に振り返る。

問診の練習に付き合う。

患者さんへの説明方法を教える。

困っているスタッフの相談に乗る。

こうした仕事は、会社全体にとって非常に大切です。

しかし、評価項目に入っていなければ、本人にとっては、

「頑張っても給与が変わらない仕事」

になります。

むしろ、後輩を教える時間を減らし、一人でも多く患者さんを担当した方が売上は上がります。

合理的に考えれば、売上を評価する制度の中で、売上にならない仕事を避けるのは自然な行動です。

スタッフが評価されない仕事をしなくなるのは当然

経営者は、スタッフへさまざまなことを求めます。

後輩を育ててほしい。

院内をきれいにしてほしい。

カルテを丁寧に書いてほしい。

患者さんの情報を共有してほしい。

新しい仕組みの改善案を出してほしい。

会社の雰囲気を良くしてほしい。

しかし、評価制度では売上しか見ていない。

これでは、スタッフからすれば、どちらを優先すべきかは明らかです。

経営者が口頭で、

「後輩教育も大切です」

と言っていても、売上を作った人だけが昇給するのであれば、実際のメッセージは、

「後輩教育より売上を優先してください」

になります。

スタッフは、経営者が言ったことより、実際に何を評価したかを見ています。

数字に表れない仕事は、会社の中にたくさんある

個人事業主として一人で開業した経験がある方であれば、よく分かると思います。

整体院や鍼灸院の仕事は、施術だけではありません。

カルテを書く。

患者さんへ連絡する。

院内を掃除する。

備品を管理する。

予約表を整える。

新しい情報を学ぶ。

症例を振り返る。

後輩を教育する。

クレームや事故を防ぐ。

患者さんのご家族や関係者へ報告する。

会社のルールを守り、周囲が働きやすいように動く。

こうした仕事があるから、院全体が回ります。

しかし、その多くは、本人の個人売上にはすぐ反映されません。

売上だけを評価すれば、これらの仕事は軽視されます。

目立たない仕事をしているスタッフほど、心が離れる

会社には、目立たない仕事を丁寧に行ってくれるスタッフがいます。

誰よりも早く気づいて、備品を補充する。

困っている後輩へ声をかける。

患者さんの小さな変化を共有する。

ほかのスタッフが忘れている仕事を、さりげなく補う。

院内の雰囲気が悪くならないように配慮する。

このような人は、会社にとって非常に大切です。

ただし、こうした仕事は売上として数字に出にくいものです。

売上だけで評価される会社では、そのスタッフは、

「自分がやっていることは、会社から見えていない」

「売上さえ作れば、それ以外はどうでもいいと思われている」

と感じるようになります。

最初は会社のために動いてくれていた人も、評価されなければ、少しずつ行動を減らします。

そして、最終的には会社から心が離れていきます。

良いスタッフが辞め、数字だけを見るスタッフが残る

何を評価するかによって、会社に残る人も変わります。

売上だけを評価する会社では、売上を作ることが得意な人にとって働きやすい環境になります。

一方で、

患者さんへの丁寧な対応。

後輩教育。

チームワーク。

会社全体への配慮。

こうしたことを大切にしている人は、評価されないと感じます。

その結果、会社の文化に合わないと考え、辞めてしまう可能性があります。

そして会社には、売上を最優先にする人が残ります。

経営者が、

「なぜ、うちのスタッフは数字ばかり気にするんだろう」

と悩んだとしても、それは評価制度が作った文化かもしれません。

会社は、評価した行動が増え、評価しなかった行動が減っていきます。

評価制度は、会社の未来を決める

評価制度を作る時には、現在の売上だけを見るのではなく、数年後にどのような会社にしたいのかを考える必要があります。

高額な商品を販売するスタッフが多い会社にしたいのか。

患者さんと長い信頼関係を築ける会社にしたいのか。

スタッフ同士が競争する会社にしたいのか。

互いに教え合い、助け合える会社にしたいのか。

売上が高い人だけが評価される会社にしたいのか。

患者さんへの誠実さや、周囲への貢献も評価される会社にしたいのか。

評価制度は、その答えを形にするものです。

売上を評価すること自体は必要です。

しかし、売上だけで評価すると、売上を作るためならほかのことを軽視してもよい会社になりやすくなります。

患者さんにどう思われたいかから評価項目を考える

評価制度を作る時には、

「どのスタッフが一番会社へ利益を出したか」

だけではなく、

「患者さんに、どのような会社だと思ってもらいたいか」

を考えるとよいと思います。

安心して通える会社。

必要のない施術を勧めない会社。

誰が担当しても丁寧に対応してくれる会社。

スタッフ同士で情報を共有してくれる会社。

回数券を購入した後も、大切にしてくれる会社。

そのような会社にしたいのであれば、それにつながる行動を評価項目へ入れる必要があります。

例えば、

  • 患者さんの希望を確認した上で施術計画を提案できる
  • 必要以上の回数を勧めない
  • 購入後も施術内容や説明の質を維持できる
  • ほかのスタッフへ適切に情報共有できる
  • 患者さんからの紹介や継続的な信頼が生まれている
  • クレームや不安へ丁寧に対応できる

なども考えられます。

売上は評価項目の一つにとどめる

私自身は、売上や生産性をまったく評価しない制度も難しいと思っています。

会社は、利益がなければ続きません。

給与を上げるのであれば、その人が会社へどのような価値を生み出しているのかを見る必要があります。

ただし、個人売上だけで全体を決めないことが大切です。

例えば、評価を次のように分ける方法があります。

  • 施術技術
  • 患者さんへの対応
  • 売上や紹介などの生産性
  • 報告・連絡・相談
  • 後輩教育
  • チームへの貢献
  • 会社の理念に沿った行動

売上はこの中の一つです。

その方が会社へ与えている影響を、複数の角度から見ます。

評価制度を作ったら、一つひとつ説明する

評価制度は、表を作ってスタッフへ渡せば終わりではありません。

なぜこの項目を入れたのか。

会社として何を大切にしているのか。

この項目が、患者さんにどのようにつながるのか。

どのような行動をすれば評価されるのか。

一つひとつ説明する必要があります。

スタッフからすると、

「なぜ売上以外の項目まで評価されるのか」

「なぜ後輩教育が昇給に関係するのか」

「なぜカルテや報告がそこまで大切なのか」

と感じることもあります。

そこで経営者が、

「会社として、こういう人を育てたいからです」

「患者さんへ、このようなサービスを届けたいからです」

と説明できることが大切です。

評価面談で、スタッフは経営者が自分を見ているかを感じる

評価制度を使った面談は、単に点数を伝える時間ではありません。

スタッフは、その場で、経営者が自分の仕事をどれだけ見ていたのかを感じます。

例えば、

「この患者さんへの説明が、以前より分かりやすくなりましたね」

「後輩が困っていた時に、声をかけてくれていましたね」

「カルテの内容が丁寧になり、ほかのスタッフが引き継ぎやすくなりました」

「先月の対応は、会社が大切にしている考え方に合っていました」

と具体的に伝えられれば、スタッフは、

「自分のことをちゃんと見てくれている」

と感じます。

反対に、売上の数字だけを見て、

「今月はいくらだったから、この評価です」

と伝えるだけであれば、日頃の行動を見てもらえている感覚はありません。

スタッフを大切にすると言うなら、評価でも示す

経営者の中には、

「スタッフを大切にしています」

と話す方がいます。

しかし、実際の評価が売上だけであれば、スタッフには、

「結局、数字しか見ていない」

と受け取られます。

言葉でどれだけ大切にすると伝えても、日頃の努力を評価しなければ、口だけだと思われます。

反対に、数字に表れにくい行動まで具体的に見て、評価面談で伝えれば、経営者の考えは伝わります。

スタッフへの愛情というと、少し大げさに聞こえるかもしれません。

しかし、

「あなたのこの行動をちゃんと見ていました」

「会社として、ここを大切にしています」

「あなたがやってくれたことが、周囲の助けになっています」

と伝えることは、スタッフにとって大きな意味があります。

主観だけで評価すると、納得感を失いやすい

評価制度を作っても、最終的に経営者の主観だけで点数を決めてしまえば、スタッフは納得しにくくなります。

あの人は社長と仲が良いから高評価。

自分は目立たないから評価されない。

同じことをしているのに、評価が違う。

そのように感じれば、制度への信頼はなくなります。

完全に主観をなくすことはできません。

人の働き方を評価する以上、経営者や管理者の判断は入ります。

ただし、

  • 評価基準を具体的な行動で書く
  • 実際の事例を記録しておく
  • 点数を付けた理由を説明する
  • 本人の自己評価も聞く
  • 一度の出来事だけで判断しない

といった工夫によって、納得感は高められます。

評価項目を作った理由まで説明する

例えば、凡事徹底という項目を作ったとします。

スタッフからすれば、

「時間を守るのは当たり前なのに、なぜ評価されるのか」

「カルテを書くことまで昇給に関係するのか」

と思うかもしれません。

その時に、経営者が、

「時間を守ることで、患者さんや次の担当者へ迷惑をかけずに済む」

「カルテを丁寧に書くことで、担当が変わっても施術の質を保てる」

「当たり前のことを継続できる人が、会社の信頼を支えている」

と説明すれば、項目の意味が伝わります。

ただ点数を付けるのではなく、患者さんや会社へどうつながっているのかを説明することが大切です。

評価制度は、経営者が望む会社を言語化したもの

評価制度を作ることは、経営者自身が、どのような会社を作りたいのかを整理することでもあります。

患者さんへ高額な商品を販売する会社にしたいのか。

患者さんに必要な施術を誠実に提案する会社にしたいのか。

個人同士が競う会社にしたいのか。

スタッフ同士で協力できる会社にしたいのか。

施術技術だけが高い会社にしたいのか。

人としても誠実な施術者が集まる会社にしたいのか。

そこまでイメージできていれば、評価項目を作ること自体は、それほど難しくありません。

自分が増やしたいと思う行動を、項目にすればよいからです。

反対に、会社の未来が曖昧なまま評価制度を作ると、分かりやすい売上だけに偏りやすくなります。

評価制度を作る責任は、経営者にある

スタッフが売上だけを追いかけるようになった。

患者さんへ必要以上の提案をする。

患者さんを取り合う。

後輩教育をしない。

数字に表れない仕事を軽視する。

そのような状態になった時に、スタッフだけを責めるのは違うと思います。

経営者が、売上だけを評価する制度を作っていたのであれば、その行動は制度へ適応した結果でもあります。

スタッフは、評価されるために動きます。

だからこそ、経営者は、評価した結果どのような行動が増えるのかまで考える必要があります。

評価制度によって生まれた会社の文化は、最終的には経営者の責任です。

売上も見る。ただし、売上だけでは人を見ない

売上を評価しないという話ではありません。

会社として利益を出し、給与を上げていくためには、数字も必要です。

スタッフにも、会社がどのように成り立っているのかを理解してもらった方がよいと思います。

ただし、売上だけでは、その人が会社へ与えている価値のすべては分かりません。

患者さんへの誠実な対応。

購入後も変わらない施術の質。

後輩への教育。

情報共有。

職場への配慮。

当たり前のことを続ける力。

会社の理念に沿った行動。

こうした部分も含めて評価することで、会社が本当に大切にしたい人を評価できます。

売上だけを見れば、短期的に数字を作る人が強くなります。

しかし、患者さんから長く信頼され、スタッフ同士が協力できる会社を作りたいのであれば、それ以外の行動も見る必要があります。

何を評価するかは、どのような会社を作るかという経営者からのメッセージです。

評価制度を作る時には、単に数字を測るのではなく、その評価によってどのような行動が増えるのか。

そして、その行動によって患者さんやスタッフがどう感じるのか。

そこまで想像して作ることが大切だと思っています。

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