前回の記事では、理念に合わない優秀な人を採用して、私自身がかなり苦労した経験を書きました。
では逆に、
「理念にはすごく共感してくれている。でも経験が浅い」
という人が面接に来たら採用するのか。
私の場合は、かなり採用を前向きに考えます。
というより、今の私は、
理念や価値観が合っているのであれば、経験年数はそこまで重要ではない
くらいに考えています。
ただし、これは誰にでも当てはまる採用基準だとは思っていません。
経営者自身が何を得意としているのか。
どこまでスタッフを育てられるのか。
そこによって、採用で何を重視するべきかは変わると思っています。
私が経験より価値観を見る理由
私が経験年数をそこまで気にしない理由は単純です。
技術や現場での対応は、ある程度教えられると思っているからです。
整体院。
鍼灸院。
訪問マッサージ。
こうした現場では、覚えなければいけないことがたくさんあります。
施術技術。
患者さんへの説明。
問診。
接遇。
報告。
患者さんの体をどう考えるのか。
もちろん、一朝一夕で身につくものではありません。
ただ、時間をかけて教えることはできます。
一方で、私自身が難しいと感じているのが、価値観を変えることです。
価値観そのものを会社が変えようとするのは難しい
例えば、私たちの会社では患者さんを大切にすることをかなり重視しています。
患者さんのために何が必要なのか。
どうすれば安心してもらえるのか。
どうしたら今より良い生活につながるのか。
そういったことを考えて働いてほしいと思っています。
でも、もともとの価値観として、
「患者さんより、自分が楽かどうかが一番大事」
という人を採用して、そこから、
「今日から患者さん第一で考えてください」
と言っても、簡単には変わりません。
それはその人が悪いという話ではなく、その人なりの価値観があるからです。
技術は教えられても、何を大切にして生きるかまで会社が変えるのは難しい。
私は、過去の採用経験からかなりそう感じています。
逆に、技術や現場力を育てることには抵抗がない
では、なぜ私は経験が浅い人でも採用できるのか。
これは、自分自身の得意不得意も関係していると思います。
私は、現場のマネジメントやスタッフ教育が割と好きなんですよね。
施術を一緒に練習する。
患者さんの体について話す。
なぜその判断をしたのか聞く。
説明の仕方をフィードバックする。
実際の患者さんを継続して見ながら、
「先週こうだったけど、今週どうなった?」
と一緒に考える。
そういうことが、私はそんなに苦ではありません。
むしろ、スタッフが少しずつ分かるようになっていく過程を見るのは好きな方です。
自覚はなかったけれど「ここは自分の得意分野なんだろう」と思うようになった
最初から、
「私はスタッフ教育が得意です」
と思っていたわけではありません。
でも、何人かスタッフを採用して、現場で育ててきました。
最初は経験が少なかったスタッフが、患者さんを任せられるようになる。
体のことも少しずつ考えられるようになる。
自分で患者さんへの説明ができるようになる。
判断を任せられるようになる。
そういう姿を何人か見てきました。
それで、
「ああ、自分はこの分野のマネジメントは比較的得意な方なのかもしれないな」
と思うようになりました。
だったら、採用時点で完成している人を探す必要はありません。
入ってから育てればいい。
だから私は、経験よりも理念や価値観を優先できます。
採用基準は、経営者自身の得意分野によって変えていい
ただ、ここは私のやり方をそのまま真似しない方がいいと思っています。
例えば、スタッフ教育や現場マネジメントがあまり好きではない経営者もいます。
できれば現場の細かなことから離れたい。
新規事業を考えたい。
マーケティングに集中したい。
数字を見たい。
経営そのものをやりたい。
そういうタイプの方もいます。
その人が、
「理念に共感しているから」
という理由だけで未経験に近い人をたくさん採用すると、かなり大変だと思います。
当然、現場では分からないことがたくさん出ます。
そこで教える人がいなければ、患者さんへのサービスにも影響します。
経営者自身も、
「こんなはずじゃなかった」
となります。
そういう方なら、最初からある程度経験のある人を採用した方がいいと思います。
「誰を採るか」より先に「自分は何を育てられるか」を考える
採用では、求職者を見ることばかり考えます。
経験何年。
資格は何を持っている。
前職はどこ。
何ができる。
でも、もう一つ見た方がいいと思うのが、経営者自身です。
自分は何を教えられるのか。
何なら育てられるのか。
逆に、何を教えるのは苦手なのか。
どこに時間を使いたいのか。
そこが分かれば、採用基準も変わります。
採用基準は、求職者だけを見て作るものではなく、経営者自身の強みから逆算してもいいと思っています。
自分の得意分野を使って、足りない部分を補えばいい
例えば、施術教育が得意なら、技術経験が浅くても価値観が合う人を採る。
反対に、教育は苦手だけれど経営や集客が得意なら、現場をかなり任せられる経験者を採る。
営業がものすごく得意なら、施術はできるけれど患者さんが少ない施術者を採って、自分が集客する。
自分は技術が圧倒的に強いなら、経営管理が得意な人を別に置くという形もあるかもしれません。
会社は、経営者が何でもできる必要はありません。
自分が得意なところを伸ばして、苦手なところを人で補う。
採用も、その考え方でいいと思います。
私の場合は「気持ちよく一緒に仕事ができるか」がかなり大きい
もう一つ、私自身の価値観として大きいのが、気持ちよく仕事をしたいということです。
これは結構重要なんですよね。
会社を経営していると、ただでさえ考えることがたくさんあります。
採用。
労務。
患者さん。
売上。
スタッフ教育。
新しい事業。
そこに、
「このスタッフは、なんでこんな考え方をするんだろう」
というストレスまで毎日抱えたくないんですよね。
だから私は、多少技術が未熟でも、価値観が近い人と働きたい。
その方が、自分自身も気持ちよく仕事ができます。
ただし「価値観が同じ」と「考え方が同じ」は別
ここは、かなり大切だと思っています。
理念に共感してほしい。
価値観が近い人がいい。
そう言うと、
「社長と同じことを考える人だけを集めるの?」
と思うかもしれません。
私は全くそう思っていません。
価値観が近いことと、考え方が同じことは別です。
むしろ、考え方は違った方がいいこともたくさんあります。
違う考え方を持ったスタッフがいる方が、会社として助かることもある
会社で何か問題が起きたとします。
私は、
「こうした方がいいかな」
と思う。
でも、スタッフから、
「いや、こういう見方もできるんじゃないですか」
と言われる。
その意見を聞いて、
「ああ、確かに。その解決方法もあるね」
となることがあります。
これは、会社にとってすごく大切です。
経営者一人の考えだけで決めていると、当然見えないものがあります。
立場も違います。
性格も違います。
経験も違います。
だから違う意見が出る。
それが会社の判断を良くすることもあります。
価値観は同じ方向、考え方はいろいろでいい
例えば、
「患者さんを大切にしたい」
という価値観は共通している。
でも、そのための方法については意見が違う。
私はAがいいと思う。
スタッフはBがいいと言う。
別のスタッフはCという方法を出してくる。
これは全然いいと思っています。
目的が同じだからです。
最終的に患者さんにとって何がいいかをみんなで考えている。
だったら、その過程で意見が割れることは問題ではありません。
むしろ健全だと思います。
逆に、そもそも一人だけ、
「患者さんより自分が楽ならそれでいい」
という価値観だったら、議論のスタート地点が違います。
そこが難しいんですよね。
理念に共感する人を採るのは「イエスマンを集めること」ではない
私は、採用で理念を大切にします。
でも、経営者の言うことに全部、
「はい、そうですね」
と言う人を採りたいわけではありません。
むしろ、
「それ違うと思いますよ」
と言ってくれる人がいてもいい。
ただ、その意見の根底に、
「患者さんにもっと良いことをしたい」
「会社を良くしたい」
「スタッフが働きやすい環境にしたい」
という共通の価値観がある。
そこが大切です。
同じ方向を向きながら、違う道を提案してくれるスタッフは、むしろ会社にとってありがたい存在です。
では、面接で何を見ているのか
ここまで読むと、
「じゃあ面接でどうやって価値観が合うかを見ているんですか?」
と思う方もいると思います。
これは、実際にスタッフからも聞かれたことがあります。
「川口さんは面接で、何を一番大切にしているんですか?」
と。
採用についての本を読むと、いろいろ書いてあります。
こういう質問をしましょう。
この質問への回答から、この性格を見ましょう。
過去の行動を質問しましょう。
質問の順番をこうしましょう。
採用セミナーでも、いろいろな方法があります。
もちろん、それも参考になると思います。
でも、今の私の一番大きな判断基準は、もっと単純です。
ぶっちゃけ「1時間楽しく話せるか」を見ている
私の場合、
「この人と初対面で1時間、楽しく話ができるか」
というのを結構大切にしています。
これは完全に私個人の基準です。
採用理論として正しいという話ではありません。
ただ、今の会社の規模では、私はこれをかなり見ています。
価値観がある程度近い人だと、初対面でも話が続くんですよね。
仕事について話す。
患者さんについて話す。
前の職場について話す。
これからどうなりたいかについて話す。
気づくと1時間があっという間に経っています。
「もうこんな時間なんですね」
という感じになります。
逆に、価値観がかなり違うと15分くらいで聞くことがなくなる
一方で、全然話が続かない人もいます。
こちらから質問する。
回答が返ってくる。
また質問する。
回答が返ってくる。
でも、そこから話が広がらない。
15分、20分くらいすると、
「もう聞くことないな」
と感じることがあります。
もちろん、単純に緊張しているだけの人もいます。
口数が少ない人が悪いわけでもありません。
だから、話が短いだけで不採用にするという意味ではありません。
ただ私の場合、これまでの経験として、価値観がかなり近い人とは自然と会話が広がりやすかったんですよね。
だから、その感覚も採用では大切にしています。
なぜ「楽しく話せるか」を見るのか
考えてみれば、入社した後は長く一緒に働く可能性があります。
一緒に患者さんについて考える。
問題が起きたら話し合う。
会社について話す。
場合によっては、何年も一緒に働きます。
その相手と、面接の段階で全然話が噛み合わない。
経営者自身が会話をしていてすごく疲れる。
それなら、入社した後もお互い苦しくなる可能性があります。
逆に、初対面なのに、
「そういう考え方なんですね」
「私もそこは大事だと思います」
と話が広がっていく。
そういう人なら、一緒に働いた後も話し合いやすいことが多いです。
採用というより、
「この人と一緒に会社を作っていけそうか」
を見ている感覚に近いのかもしれません。
ただし「話が盛り上がった=良い採用」とは限らない
ここは自分自身への注意でもあります。
一時間楽しく話せたから、その人は絶対良い。
そんな単純な話ではありません。
単純に話が上手い人もいます。
人に合わせるのが上手な人もいます。
面接に慣れている人もいます。
だから当然、資格や経歴も確認します。
働き方の条件も確認します。
過去の仕事についても聞きます。
患者さんへの考え方も聞きます。
ただ、最終的に、
「この人と長く話していて違和感が少ないか」
という自分の感覚も無視しないようにしています。
小さい会社だからこそ、今はこの採用方法でもいいと思っている
もし、これからスタッフが50人、100人となるのであれば、今のやり方だけでは難しいと思います。
経営者が全員と1時間話すこともできなくなります。
採用基準ももっと明文化する必要があるでしょう。
誰が面接してもある程度同じ判断ができるようにする必要もあります。
でも、今はまだそこまで大きな会社ではありません。
だから、私は経営者自身が面接して、
「一緒に働きたいと思えるか」
という感覚を大切にしてもいいと思っています。
小さい会社だからこそ使える採用方法でもあると思います。
経験が浅いことより、育てる気になれる人かどうか
採用する時、
「経験が浅いから大変そう」
と思うことはあります。
実際、大変です。
一から教える必要があります。
同行も必要です。
技術練習も必要です。
最初は報告もたくさん必要です。
でも、私は価値観が合う人なら、
「この人なら育てたいな」
と思えます。
逆に、経験が10年あって技術も高い。
でも、一緒に話しているだけで価値観のズレを強く感じる。
その人をずっとマネジメントすることを考えると、私はかなり慎重になります。
私の場合、採用で大切なのは「今どれだけ完成しているか」より、「この人を自分が育てたいと思えるか」です。
理念採用が成立するかは、教育体制にも左右される
ただ、理念に合えば未経験でもいいという考え方には、経営者側の責任があります。
採用した以上、育てなければいけません。
「理念には共感してくれたから、あとは自分で頑張って」
では駄目です。
技術を教える。
現場を見せる。
失敗したらフィードバックする。
分からないことを聞ける環境を作る。
少しずつ裁量を渡す。
ここまでセットです。
理念を重視して採用するのであれば、経験不足を会社が補える仕組みも必要になります。
理念だけでも、経験だけでも足りない
ここまで理念が大事だと書きましたが、
「理念さえ合えば何でもいい」
とも思っていません。
例えば、学ぶ意欲が全くない。
人の話を聞かない。
安全面への配慮ができない。
患者さんを任せるには明らかに不安がある。
こういう場合には、理念が合っているだけで採用するのは難しいでしょう。
最低限必要なものはあります。
ただ、技術や経験については、私は伸ばせる余地として見ます。
価値観については、採用前にかなり見る。
私の中では、その違いがあります。
採用で何を重視するかは「自分が何を変えられるか」で決めればいい
結局、今回一番伝えたいのはここです。
経験を重視するべきか。
理念を重視するべきか。
全員に共通する答えはないと思っています。
自分は何なら育てられるのか。
何を変えるのが難しいのか。
何をしている時に一番力を発揮できるのか。
そこから決めればいい。
私の場合は、現場の技術や考え方を教えることには比較的自信があります。
でも、人そのものの価値観を変えることには自信がありません。
だから、
価値観は採用前に合わせる。
技術は入社後に育てる。
という考えになりました。
私は「経験がある人」より「一緒に働きたい人」を採用したい
今の私の採用を一言で言えば、そんな感じかもしれません。
もちろん、経験者で価値観も合えば一番いいです。
それは当然です。
でも、
経験豊富だけれど根本的な価値観が違う人。
経験は浅いけれど、患者さんへの考え方や仕事への姿勢がかなり近い人。
この二人だったら、私は後者をかなり前向きに考えます。
入社した後に教えればいいと思っているからです。
そして面接では、細かな採点表以上に、
「この人と1時間楽しく話せるか」
という自分の感覚も大切にしています。
今後会社がもっと大きくなれば、この採用方法も変える必要があると思います。
ただ、まだ小さい会社で、経営者自身が一人ひとりを見られるのであれば、
「この人と一緒に仕事をしたいか」
という感覚は、もっと大切にしてもいいと思っています。
経験は後から増やせます。
技術も練習できます。
でも、何を大切にしたい人なのかは、簡単には変わりません。
だから私は、理念に共感してくれる人であれば、経験が浅くても育てたい。
今のところ、それが私自身に一番合っている採用のやり方です。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。
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整体院・訪問マッサージ・鍼灸院などの現場で感じてきたことをもとに、
体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。
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もう少しだけ、
考え方の話を続けています。
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