私が訪問マッサージを開業した当初、ケアマネジャーの方へ営業に回る中で失敗したことや、そこから学んだことを書いてみようと思います。
私はもともと営業を経験したことがありませんでした。
知らない人に自分から話しかけることも、どちらかといえば苦手です。
そのため、訪問マッサージを開業して営業を始めた頃は、本当に緊張していました。
うまく話せなかったこともありますし、かなりそっけない対応をされたこともあります。
中には、私が挨拶に伺うと、柱の陰に隠れてしまったケアマネジャーの方もいました。
それでも、私には営業をしないという選択肢がありませんでした。
患者さんをご紹介いただかなければ仕事にならないため、苦手でもやるしかなかったんです。
そんな中で私が考えていたのは、営業が上手になることよりも、どうすれば自分が疲弊せずに営業を続けられるかということでした。
一番苦しかったのは、インターホンを押す前だった
営業を始めた頃、一番緊張したのはケアマネジャーの方と実際に話している時ではありませんでした。
事業所の前に立ち、インターホンを押すまでの時間です。
「迷惑に思われたらどうしよう」
「そっけない対応をされたら嫌だな」
「うまく話せなかったらどうしよう」
そんなことを考え始めると、インターホンを押すことがどんどん怖くなっていきます。
しかも、いくら考えても不安が解消されるわけではありません。
ただ自分のエネルギーが削られて、事業所へ入る前から疲れてしまうだけでした。
そこで私は、ある時から「考える前に、とにかくインターホンを押す」と決めました。
事業所の前まで来たら、心の準備を整えようとしない。
挨拶の内容を頭の中でもう一度確認することもしない。
先にインターホンを押してしまえば、あとは対応するしかありません。
今振り返ってみても、このやり方は自分に合っていたと思います。
先に行動した方が、結果的に疲れなかった
一般的には、緊張が落ち着いてから行動した方がよいと思うかもしれません。
しかし、私の場合は逆でした。
落ち着こうとして考える時間を作るほど、不安が大きくなっていきました。
それよりも、考える前にインターホンを押して、決めた件数を一気に回った方が、営業を終えた後の疲れ方が全く違いました。
もちろん営業中は緊張します。
それでも、一日の終わりに、
「今日は予定していた事業所を全部回れた」
「苦手なのに、ちゃんと行動できた」
と思うことができます。
うまく話せたかどうかにかかわらず、決めたことを実行できた自分を少し認められるようになりました。
営業を続けるためには、話し方を磨くことも必要だと思います。
ただ、それ以前に、最初の一歩を踏み出すまでに自分を疲れさせない工夫が必要でした。
うまく話せなかったことは、いくらでもある
営業に回っていれば、当然ながら毎回うまく話せるわけではありません。
緊張して何を話せばいいのか分からなくなったこともあります。
自分では一生懸命説明したつもりでも、相手の反応がほとんどないこともありました。
明らかに忙しそうな方や、面倒そうに対応する方もいました。
名刺をお願いすると、とても面倒そうに席まで取りに戻る方もいました。
最初の頃は、そうした反応を一つひとつ気にしていました。
「自分の話し方が悪かったのかな」
「営業に向いていないのかもしれない」
「また次も同じような対応をされたら嫌だな」
そう考えていると、次の事業所へ行くことまで苦しくなってしまいます。
「うまく話せなかった」ではなく「名刺交換できた」と考えた
そこで私は、自分が見るポイントを変えることにしました。
うまく説明できたかどうか。
相手に興味を持ってもらえたかどうか。
すぐに患者さんを紹介してもらえそうかどうか。
そこだけを営業の成果として見てしまうと、ほとんどの日が失敗になってしまいます。
訪問マッサージの営業に行ったからといって、その場ですぐに患者さんをご紹介いただけることは多くありません。
それならば、最初の目標をもっと小さくしてもいいのではないかと考えました。
「今日は名刺交換ができた」
「自分の存在を知ってもらえた」
「予定していた事業所を全部回れた」
まずは、そこに目を向けるようにしました。
すると、営業に行くこと自体が以前よりも苦しくなくなりました。
相手の反応は自分では選べません。
しかし、事業所へ行くことや、笑顔で挨拶すること、名刺を渡すことは自分で選べます。
自分で変えられない部分ではなく、自分ができたことに目を向けたことは、営業を続ける上で大きかったと思います。
ケアマネジャーの方が柱の陰に隠れたこともあった
営業をしている中では、かなり印象に残っている出来事もあります。
ある事業所へ挨拶に伺った時、最初にヘルパーの方が対応してくださいました。
その事業所にはケアマネジャーの方もいらっしゃったのですが、鏡越しに見てみると、私から見えないように柱の陰へ隠れていたんです。
おそらく、営業の対応をしたくなかったのだと思います。
開業したばかりで、自信もない時期です。
そのような対応をされれば、やはり傷つきます。
「自分はこんなにも嫌がられているんだ」
「営業に来る人は、こんな扱いをされるんだ」
そう感じました。
ただ、その出来事から学んだのは、すべての事業所へ無理に通い続けなくてもいいということでした。
自分が疲弊する事業所は、営業先のリストから外した
訪問マッサージの営業では、「何度も顔を出すことが大切」と言われることがあります。
確かに、一度だけでは覚えていただけないため、繰り返し訪問することは必要だと思います。
しかし、どれだけ通っても毎回強く拒絶される場所や、行くことを考えただけで大きく消耗してしまう場所まで、無理に通い続ける必要があるのか。
私は、そうは思いませんでした。
営業先はいくつもあります。
少しずつ話を聞いてくださる方もいれば、名刺を受け取ってくださる方もいます。
それならば、自分の心をすり減らしながら一つの事業所にこだわるよりも、別の場所へ行った方がいい。
そう考え、あまりにも対応が厳しい事業所は、自分の営業先リストから外すようにしました。
これは逃げではなく、営業を長く継続するための選択だったと思っています。
開業直後の提案で、今でも失敗だったと思うこと
営業を続けるための考え方については、自分なりに工夫できたと思います。
一方で、今振り返ると、「あの時は、もう少し柔軟に対応してもよかった」と思うこともあります。
あるケアマネジャーの方から、こんなことを聞かれたことがありました。
「開業したばかりなんでしょう。長い時間、施術してもらえるの?」
おそらく、一般的な訪問マッサージよりも長い時間対応できるのであれば、患者さんを紹介してもよいという意味だったのだと思います。
しかし私は、今後忙しくなった時に長時間の施術を続けるのは大変になると考えました。
そのため、その場で「うちは何分です」と通常の施術時間を明確にお伝えしました。
もちろん、最初からできない約束をしなかったこと自体は、間違いではないと思います。
長時間対応すると伝えて患者さんをご紹介いただき、後から一方的に時間を短くするのも、誠実な方法とはいえません。
ただ、今の自分であれば、単純に断るのではなく、もう少し違う提案ができたのではないかと思います。
最初は「接点を作る提案」をしてもよかった
当時、競合となる訪問マッサージ事業者の施術時間は、一般的に20分程度でした。
それならば、開業直後の一定期間だけ、
「最初は40分ほど時間を取って、体の状態や生活状況まで丁寧に確認します」
という提案をしてもよかったのかもしれません。
1時間の施術をずっと続けるのは現実的ではありません。
しかし、最初の数回は長めに時間を確保し、その後は患者さんやご家族へ説明した上で通常の時間へ移行する方法も考えられます。
開業したばかりの頃は、まだ患者さんがいません。
その時期には、効率よりも、まず患者さんやケアマネジャーの方との接点を作ることが重要です。
最初から完成された運営方法に当てはめるのではなく、余裕がある時期だからこそできる提案を考える。
これは、当時の自分には足りなかった視点だったと思います。
ただし、後から一方的に条件を変えるのではなく、最初の段階で、
「初回から数回は長めに時間を取り、その後は通常の施術時間になります」
と説明しておくことは必要です。
接点を作ることは大切ですが、無理な約束をすることとは違います。
営業では、すべてを成功させようとしない
営業を始めたばかりの頃は、一件一件を成功させなければいけないと思っていました。
うまく話さなければいけない。
好印象を持ってもらわなければいけない。
患者さんを紹介してもらわなければいけない。
しかし、すべての訪問でそこまで求めていたら、心が持ちません。
営業先の反応はさまざまです。
丁寧に話を聞いてくださる方もいれば、忙しくて対応できない方もいます。
訪問マッサージそのものに関心がない方もいます。
だからこそ、一件ごとの結果だけで自分を評価しないことが大切でした。
- 事業所のインターホンを押せた
- 笑顔で挨拶できた
- 名刺を渡せた
- 自分の存在を知ってもらえた
- 予定していた件数を回れた
最初は、それだけでも十分です。
小さな成功を自分で認められたからこそ、次の日も営業に行くことができました。
営業で一番大切だったのは、自分が続けられる工夫
訪問マッサージの営業で患者さんをご紹介いただくためには、何度も事業所へ足を運ぶ必要があります。
一度挨拶へ行っただけで、すぐに結果が出るとは限りません。
だからこそ、一時的に頑張れる方法ではなく、継続できる方法を考える必要があります。
私の場合は、考える前にインターホンを押すことでした。
うまく話せたかではなく、名刺交換ができたことに目を向けることでした。
あまりにも自分が消耗する事業所には、無理に通い続けないことでした。
そして、開業直後だからこそできる提案を、もう少し柔軟に考えることでした。
営業というと、相手に気に入ってもらう方法や、うまく商品を説明する方法に目が向きます。
しかし、それ以前に大切なのは、自分自身が折れずに行動を続けられる形を作ることだと思います。
私自身、営業が得意だったわけではありません。
むしろ苦手だったからこそ、どうすれば自分が疲弊しないかを考え続けました。
営業での失敗をなくすことはできません。
うまく話せない日もありますし、冷たい対応をされることもあります。
それでも、失敗するたびに自分を責めるのではなく、次の日も動ける考え方を作る。
訪問マッサージの営業で本当に必要だったのは、完璧な営業トークではなく、自分なりに営業を続けるための工夫だったのだと思います。

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