一人目の採用で主婦スタッフを雇い、うまくいかなかった話|問題は子育てではなく会社の体制だった

今回は、私が初めてスタッフを雇った時の失敗について書いてみようと思います。

これは、今振り返ると、かなり単純な考え方で採用してしまったなと思う話です。

当時の私は、一人で訪問マッサージを行っていました。

患者さんやご家族、ケアマネジャーの方から、

「女性の施術者をお願いできますか」

と聞かれることが、時々あったんです。

訪問マッサージでは、ご自宅へ伺って施術を行います。

ご利用者様が女性の場合、女性施術者を希望されることは珍しくありません。

しかし、当時は私一人で行っていたため、

「申し訳ありません。現在は男性施術者しかいません」

とお断りするしかありませんでした。

実際に、女性施術者がいれば受けられたかもしれないご紹介が、何件か流れてしまったこともあります。

そのような時に、女性の方が面接へ来てくださいました。

小さなお子さんを育てている主婦の方でした。

私はその時、採用するメリットばかりを見ていたんです。

「これで女性希望の患者さんも受けられる」

「女性スタッフがいる会社だと伝えられる」

「今まで断っていた依頼も受けられる」

そう考えました。

しかし、採用後に待っていたのは、私が全く準備できていなかった問題でした。

失敗の原因は、子育て中の方を採用したことではありません。

一人目のスタッフに欠勤が発生した時、代わりに患者さんを担当できる仕組みを、会社として何も用意していなかったことです。

目次

女性スタッフを採用するメリットしか考えていなかった

当時の私は、一人で訪問マッサージを行っていました。

施術も営業も事務作業も、すべて自分で行っている状態です。

そのため、一人スタッフが増えれば、その分だけ患者さんも増やせると思っていました。

特に女性スタッフであれば、今まで対応できなかった女性希望の患者さんを受けられます。

求人や営業の際にも、

「女性施術者が在籍しています」

と伝えられるようになります。

それまで断っていた紹介を受けられるのであれば、売上も増える。

私の中では、とても分かりやすい採用メリットでした。

しかし、私は採用後の働き方まで、十分に考えられていませんでした。

お子さんが体調を崩した時には、どうするのか。

急な欠勤が発生した時、担当患者さんを誰が訪問するのか。

長期間休むことになった場合、会社としてどう対応するのか。

固定の患者さんを何人まで任せられるのか。

こうしたことを、ほとんど想定していなかったんです。

子どもの体調不良による急な休みが続いた

実際に働き始めると、お子さんの体調不良によって休むことが何度かありました。

小さな子どもは、突然熱を出すことがあります。

朝まで元気だったのに、保育園や学校から連絡が来ることもあります。

それ自体は、子育てをしていれば起こり得ることです。

本人が悪いわけではありません。

しかし、当時の会社には、その休みを受け止める体制がありませんでした。

スタッフは、その曜日と時間に固定の患者さんを訪問します。

急に休みになれば、患者さんへ連絡し、施術を中止するか、別の日へ変更しなければなりません。

私が代わりに訪問できればよいのですが、私自身の予定もすでに埋まっています。

ほかにスタッフはいません。

つまり、そのスタッフが休めば、そのまま患者さんへの施術も休みになる状態でした。

訪問マッサージは、担当者が頻繁に休むと信頼に影響する

訪問マッサージでは、多くの場合、曜日と時間をある程度固定して訪問します。

例えば、

「毎週火曜日の午後2時」

「毎週月曜日と木曜日の午前中」

という形です。

ご利用者様やご家族も、その予定に合わせて生活しています。

施設の予定や通院、デイサービスなどとの兼ね合いもあります。

そのため、担当者の都合による中止や変更が頻繁に続くと、患者さん側にも負担がかかります。

最初は理解してくださったとしても、

「またお休みですか」

「次は本当に来てもらえるんでしょうか」

と不安になります。

実際に、一度固定の患者さんを担当してもらったのですが、休みや予定変更が重なり、患者さんが離れてしまったこともありました。

患者さんからすれば、スタッフが子育て中かどうかよりも、予定どおり施術を受けられるかが重要です。

会社として安定したサービスを提供できなければ、信頼を失います。

スタッフを雇ったのに、患者さんを増やせなかった

私はスタッフを一人雇ったことで、対応できる患者さんを増やせると思っていました。

ところが、現実には、固定の患者さんを積極的に増やすことができませんでした。

患者さんを増やしても、急な欠勤が発生した時に代わりがいないからです。

新しいご紹介をいただいても、

「この方を固定で任せて、本当に安定して伺えるだろうか」

と考えてしまいます。

女性施術者がいることは事実でした。

しかし、いつでも安定して対応できる状態ではありません。

そのため、

「女性スタッフがいますので、ぜひご紹介ください」

と積極的に打ち出すことにも、少し迷いが出るようになりました。

結果として、一人で経営していた時と比べて売上はそれほど増えない。

しかし、出勤してもらった分の給与は支払わなければならない。

会社としては、かなり苦しい状態になりました。

子どもの入院で、3週間ほど出勤できなくなった

さらに驚いたのが、お子さんが肺炎になり、入院することになった時です。

まだ小さなお子さんだったため、スタッフ本人も付き添いで一緒に入院することになりました。

結果として、3週間ほど出勤できない状態になりました。

もちろん、経営者として、

「子どもを置いて仕事へ来てください」

と言える話ではありません。

私自身も、子どもを大切にしてほしいと思っています。

家族にとって大変な時ですから、仕事よりもお子さんを優先するのは当然だと思います。

ただ、会社の現実としては、スタッフを一人雇ったにもかかわらず、その一人が3週間いない状態になります。

当時は私とそのスタッフしかいません。

二人の会社で一人が長期間休めば、単純に戦力の半分がいなくなります。

一人分の仕事を、残った私がすべて受け止めるしかありません。

ここで初めて、私は自分の採用判断が甘かったと感じました。

当時の私は「休まない人を選ぶべきだった」と考えた

この経験をした直後の私は、

「経営が安定するまでは、子育て中の方を雇うのは難しい」

と考えました。

一人目のスタッフには、固定で安定して出勤できる方を選ぶべきだった。

急な欠勤が少ない方を採用した方が、患者さんを任せやすかった。

そう考えたんです。

実際、創業したばかりでスタッフが一人しかいない会社では、一人の欠勤が経営全体へ大きな影響を与えます。

患者さんへのサービスを維持できません。

売上の計画も立てにくくなります。

経営者自身の負担も急激に増えます。

そのため、初期の採用では、勤務できる曜日や時間、急な欠勤が発生した場合の対応を、かなり具体的に確認する必要があります。

ただ、今振り返ると、

「主婦だから採用が難しかった」

という整理だけでは足りません。

問題は、その人ではなく、一人に依存した経営だった

子育て中のスタッフが休む可能性だけが、特別なリスクではありません。

独身のスタッフでも、病気やけがをすることがあります。

家族の介護が必要になることもあります。

交通事故に遭う可能性もあります。

精神的な不調で、長期間休むこともあります。

つまり、誰を採用したとしても、急に働けなくなる可能性はあります。

当時の会社の本当の問題は、

「一人のスタッフが休んだら、その人の患者さんを誰も担当できない」

という体制でした。

子育て中の方を採用したから問題が起きたのではありません。

一人が休む可能性を全く想定せず、その人が常に出勤することを前提に患者さんを任せようとしたことが問題でした。

初めての採用では、能力だけでなく稼働の安定性も確認する

とはいえ、創業初期には、体制だけでは解決できない現実もあります。

スタッフを何人も余分に雇う余裕はありません。

代わりに訪問できる人を、常に待機させることも難しいです。

そのため、一人目や二人目の採用では、本人の技術や人柄だけでなく、働ける条件も具体的に確認する必要があります。

例えば、

  • 週に何日、何時から何時まで勤務できるのか
  • 曜日を固定できるのか
  • 急な休みが必要になった時、家族の協力を得られる可能性があるか
  • 学校や保育園の長期休暇中は、どのように働く予定か
  • 子どもの行事や通院予定は、どの程度あるのか
  • 本人が希望する働き方と、会社が任せたい仕事が合っているか

などです。

これは、子育て中の方を排除するために聞くのではありません。

会社として、どのような働き方なら無理なく続けてもらえるかを、一緒に考えるためです。

固定患者を持たせることだけが働き方ではなかった

当時の私は、スタッフを雇ったら、私と同じように固定の患者さんを担当してもらうものだと考えていました。

毎週決まった曜日と時間に伺う。

担当患者さんを少しずつ増やす。

売上を積み上げる。

それ以外の働き方を、ほとんど考えていなかったんです。

しかし、子育て中の方には、固定患者を多く持つ以外の役割も考えられます。

例えば、

  • ほかのスタッフが有給を取る日の代診
  • 新規患者さんの無料体験
  • 欠員が出た時のスポット対応
  • 比較的変更しやすい患者さんの担当
  • 午前中だけ、または学校の時間内だけの勤務
  • 事務作業やカルテの整理
  • 施術スタッフの補助

などです。

その人の働ける時間と、会社の不足している部分が合えば、非常に力になってもらえます。

当時の私は、正社員と同じように固定患者を持たせることしか考えていませんでした。

人を働き方へ無理に合わせるのではなく、働ける条件に合う役割を会社側が作るという発想が足りなかったと思います。

現在は、逆に子育て中の方に来てほしいと思っている

そして現在、私の会社には6名のスタッフがいます。

ありがたいことに、それぞれのスケジュールもかなり埋まっています。

創業当初とは、会社の状況が大きく変わりました。

今は、一人のスタッフが休んだとしても、ほかのスタッフと予定を調整できる可能性があります。

患者さんの曜日を変更したり、代わりのスタッフが伺ったりすることも、以前よりは考えやすくなりました。

そして、新しい問題も出てきました。

スタッフの予定が埋まりすぎて、有給休暇を取りにくくなっていることです。

患者さんの予定が詰まっているため、一人が休むと、その患者さんを誰が担当するのかという問題が起きます。

スタッフには有給休暇をきちんと取ってもらいたい。

しかし、患者さんへの施術も止めたくない。

その両方を実現するために、今は子育て中の方や時短勤務を希望する方の力を借りたいと考えています。

会社が安定すると、短時間勤務のスタッフがちょうどよくなる

現在の会社では、フルタイムのスタッフが患者さんを固定で担当しています。

ただ、すべての時間をフルタイムスタッフだけで埋める必要はありません。

有給休暇の日。

研修や勉強会の日。

急な体調不良があった日。

患者さんから臨時の依頼があった時。

こうした部分を補ってくださる方がいれば、会社全体が回りやすくなります。

例えば、平日の午前9時から午後2時まで働きたい方。

週に2日や3日だけ働きたい方。

子どもが学校へ行っている間に働きたい方。

そのような働き方でも、今の会社では十分に役割があります。

むしろ、フルタイムスタッフをもう一人増やすより、必要な時間へ柔軟に入ってくださる方の方が合う場合もあります。

同じ人材でも、会社の段階によって価値が変わる

創業したばかりの頃、私は子育て中のスタッフをうまく活かすことができませんでした。

しかし現在は、同じような働き方を希望する人が、会社にとって非常に必要です。

人が変わったわけではありません。

会社の状況が変わったんです。

スタッフが一人しかいない時には、勤務の安定性を強く求めざるを得ない。

スタッフが増え、患者さんや役割の選択肢が増えれば、短時間勤務や柔軟な勤務が大きな力になる。

つまり、

「この人材が良い」

「この人材は雇わない方がよい」

と一律に決めることはできません。

今の会社の段階に、その働き方が合っているかどうかが重要です。

採用では、メリットだけでなく休んだ時まで想像する

採用面接では、候補者の良い部分が目に入ります。

資格がある。

経験がある。

人柄が良い。

女性施術者として活躍してもらえる。

自分にはできない仕事を任せられる。

それらは、もちろん大切です。

ただ、採用する前には、働き始めた後のイレギュラーまで想像した方がよいと思います。

急に休んだらどうするのか。

長期間働けなくなったら、患者さんを誰が担当するのか。

本人が希望する働き方と、会社が期待する役割は合っているか。

その人がいないと成立しない仕事を任せすぎていないか。

固定患者を持ってもらう以外に、活躍できる役割はないか。

メリットだけでなく、何か起きた時の運用まで考えてから採用します。

一人目の採用ほど、会社の弱さがそのまま出る

スタッフが一人しかいない会社では、その一人の影響が非常に大きくなります。

その人が順調に働けば、会社は大きく前進します。

反対に、その人が休んだり退職したりすれば、経営への影響も大きくなります。

そのため、一人目の採用では、

「この人が優秀か」

だけでなく、

「この人が休んだ時に、今の会社で対応できるか」

まで考えなければなりません。

対応できないのであれば、その人を採用してはいけないという意味ではありません。

任せる患者さんの人数を調整する。

固定担当ではなく補助的な役割から始める。

欠勤時の連絡方法や代診のルールを作る。

無理のない勤務日数にする。

会社側の設計によって、リスクを小さくすることはできます。

スタッフが休めない会社は、長く続かない

創業初期の私は、スタッフが安定して出勤してくれないことばかりを問題にしていました。

しかし現在は、スタッフが安心して休める会社を作らなければならないと考えています。

子どもが病気になった時。

本人が体調を崩した時。

家族の介護が必要になった時。

有給休暇を使って休みたい時。

そのような時に、

「自分が休んだら患者さんに迷惑がかかる」

「ほかのスタッフに負担をかけてしまう」

と考えて休めない会社では、長く働くことは難しいと思います。

誰か一人の責任感や無理に頼るのではなく、休んでも回る仕組みを作る。

それが、会社を安定させることにもつながります。

有給を取りやすくするには、余白のある人員配置が必要

有給休暇を取りやすくするためには、

「遠慮せず休んでください」

と声をかけるだけでは足りません。

実際に休んだ時、患者さんを誰が担当するのか。

予約を変更する場合、誰が連絡するのか。

代診できるスタッフがいるのか。

その仕組みが必要です。

スタッフ全員の予定を限界まで埋めれば、見た目の生産性は高くなります。

しかし、一人が休んだ瞬間に回らなくなります。

会社としては、一定の余白を持った人員配置も必要です。

その余白を作る役割として、短時間勤務や週数日のスタッフは非常に心強い存在になります。

子育て中の方を、フルタイムスタッフと全く同じ条件で働かせようとするのではありません。

その方が働ける時間と、会社が補ってほしい時間を合わせる。

この形ができれば、スタッフ本人にも会社にもメリットがあります。

この失敗から学んだこと

私は初めてスタッフを雇った時、女性施術者を採用するメリットばかりを見ていました。

女性希望の患者さんを受けられる。

会社として女性施術者がいることを伝えられる。

患者さんを増やせる。

そこまでしか考えられていませんでした。

しかし実際には、子どもの体調不良による急な休みがありました。

長期間の付き添い入院もありました。

その時、患者さんを代わりに担当できる人はいませんでした。

結果として、スタッフを雇ったのに患者さんを増やせず、売上がほとんど変わらないまま人件費が発生しました。

当時は、子育て中の方を一人目に採用したことが失敗だったと思いました。

しかし、今は少し違う見方をしています。

本当の失敗は、その人の家庭状況を踏まえた役割を作らず、一人が毎回出勤することを前提に会社を設計していたことです。

そして現在、スタッフが6名になり、会社の基盤も以前より安定しました。

今度は、スタッフの有給休暇や急な欠勤を支えるために、子育て中の方や時短勤務を希望する方の力を借りたいと思っています。

創業初期には合わなかった働き方が、会社が成長した現在では、非常に必要な働き方になりました。

採用で考えるべきなのは、属性だけではありません。

その人がどのように働けるのか。

今の会社に、どのような仕事があるのか。

休みが発生した時に、会社として支えられるのか。

その三つを合わせて考えることです。

人に会社の働き方を無理に合わせてもらうだけではなく、その人が力を発揮できる役割を会社側も考える。

それができて初めて、子育て中の方も、フルタイムの方も、長く働ける会社になるのだと思います。

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