今回は、私が個人で開業して間もない頃に考えたことについて書いてみようと思います。
このまま一人で仕事を続けていくのか。
それとも、スタッフを雇って組織として事業を広げていくのか。
開業している方であれば、一度は考えるテーマかもしれません。
私自身も、開業して半年ほど経った頃に、この問題について真剣に考えた時期がありました。
ただ、今振り返ってみると、その時に出した答えは、単純に「個人で続ける」「人を雇う」という二択ではありませんでした。
私が最初に選んだのは、もっと自分が面白いと思える施術を学ぶことだったんです。
開業して半年ほどで、数字は安定していた
開業した当初、私は一人で訪問マッサージ・訪問鍼灸を行っていました。
ありがたいことに、開業して半年ほどで数字はある程度安定するようになりました。
もちろん、何もしなくても患者さんが増えたわけではありません。
ケアマネジャーの事業所へ足を運んだり、患者さん一人ひとりに向き合ったりしながら、少しずつ仕事を増やしていきました。
そして数字が安定してからは、半年ほど大きな変化を起こさず、そのまま仕事を続けていました。
会社員時代より収入も増え、生活も少しずつ安定してきていました。
そのまま一人で仕事を続けるという選択肢も、十分に現実的だったと思います。
個人で続けることへの不安もあった
ただ、その頃の私は28歳でした。
子どもも一人いて、これからの生活のことも考えなければなりません。
一人で仕事を続ける場合、どうしても自分自身が働けなくなった時のリスクがあります。
もし病気をしたらどうなるのか。
大きなケガをして、しばらく訪問できなくなったらどうするのか。
自分が動けなくなれば、その瞬間に売上が止まってしまいます。
個人で仕事をする自由さはありますが、その一方で、収入が自分の体に完全に依存している怖さもあったんですよね。
もちろん、就業不能に備えた保険へ加入するという考え方もあります。
私も一度は検討しました。
ただ、十分な補償を受けようとすれば、それなりの保険料もかかります。
では、スタッフを雇って組織にすればすべて解決するのかというと、そんなに単純でもありません。
人を雇うことにも別のリスクがある
スタッフを雇えば、自分が働けない時でも会社として仕事を継続できる可能性があります。
一人で行える仕事量には限界があるため、事業を広げるという意味でも、人を雇うことには大きな価値があります。
しかし、人を雇えば別の責任が生まれます。
- 給与を支払う責任
- 教育をする責任
- 患者さんとの間で問題が起きた時に対応する責任
- 会社としてスタッフの行動に責任を持つこと
人間関係で悩むこともあるでしょうし、思っていたように働いてもらえない可能性もあります。
一人で続けることにもリスクがあり、人を雇うことにもリスクがある。
どちらを選んでも、完全に安全な道はありません。
私はそこで、一度立ち止まって考えることにしました。
この先40年、同じ施術を続けたいのか
当時28歳だった私が、仮に60代や70代まで仕事を続けると考えれば、この先40年近く施術を続けることになります。
その時に、ふと思ったんです。
「このまま同じような施術を40年間続けて、自分は本当に楽しいのだろうか」
当時の私は、主にマッサージと姿勢へのアプローチを行っていました。
もちろん、それらが悪いという話ではありません。
マッサージにも価値がありますし、姿勢を見ることも大切です。
ただ、訪問マッサージの現場で高齢の患者さんを多く見ていると、それだけでは思うような結果につながらない方も少なくありませんでした。
- 長い期間、病気を抱えている方
- 複数の手術を経験されている方
- 筋肉や関節だけでは説明しきれない不調がある方
- 姿勢を整えても、体の反応がほとんど出ない方
そういった患者さんを目の前にすると、今までの自分の考え方だけでは足りないと感じるようになったんです。
「このままでは他と何も変わらない」と感じた
経営という視点でも、危機感がありました。
訪問マッサージというサービス自体は、私だけが行っているものではありません。
マッサージをする。
姿勢を整える。
その内容だけであれば、他の訪問マッサージ事業所でも行っています。
患者さんから見た時に、私へお願いする理由は何なのか。
自分には、他と明確に違う価値があるのか。
そう考えた時に、正直なところ、当時の私には自信を持って答えられるものがありませんでした。
人を雇って事業を広げる前に、まず自分自身がもっと深く学ばなければいけない。
自分が心から面白いと思えて、患者さんにも今までとは違う価値を提供できるものを見つけたい。
その思いが強くなりました。
頭蓋骨と内臓へのアプローチに心が動いた
その頃、施術だけでなく、経営や集客なども含めて、いろいろな学びに触れていました。
経営者として生きていくのであれば、経営の勉強も当然必要です。
ただ、その中で私の気持ちが一番大きく動いたのが、頭蓋骨と内臓へのアプローチでした。
理屈をすべて理解し、冷静に比較して選んだというよりも、最初は直感に近かったと思います。
「これは受けてみたい」
「もっと知りたい」
「この考え方を施術に取り入れたら、今まで対応できなかった患者さんにも何かできるかもしれない」
そう感じたんです。
そこで私は、頭蓋骨調整や内臓への施術を学ぶセミナーへ参加しました。
学ぶことで、施術がもう一度面白くなった
実際に学び始めると、施術が一気に面白くなりました。
今まで筋肉や姿勢だけで考えていた体を、別の視点から見られるようになったからです。
筋肉が硬いから緩める。
姿勢が崩れているから整える。
それだけではなく、
- なぜその筋肉が緊張しているのか
- なぜその姿勢を取らなければならないのか
- 内臓の状態が体全体へどう影響しているのか
- 頭蓋骨や頸椎の状態が姿勢へどうつながっているのか
考えられることが、格段に増えていきました。
もちろん、学べばすべての患者さんを良くできるわけではありません。
今でも分からないことはあります。
それでも、自分では対応が難しいと感じる症状は、以前より明らかに減りました。
そして何より、
「この方の体には何が起きているのだろう」
と考えることが楽しくなったんですよね。
経営判断は、数字だけで決めるものではない
経営では、売上や利益、リスクを冷静に考える必要があります。
個人で続けるのか。
スタッフを雇うのか。
新しい事業へ投資するのか。
数字を見ながら判断することは、当然大切です。
ただ、私自身の経験から思うのは、長く続けるためには、「自分の気持ちが動くか」という視点も必要だということです。
どれだけ収入が良くても、仕事そのものに面白さを感じられなければ、40年も続けるのは難しいかもしれません。
反対に、自分がもっと知りたい、もっと深めたいと思えるものがあれば、学ぶことも苦痛ではなくなります。
学び続けることで、患者さんへ提供できる価値も増えていきます。
そして、その価値が結果として経営にもつながっていくんですよね。
個人か組織かを決める前に考えたこと
当時の私は、個人で続けるか、組織として広げるかを考えていました。
でも、その前に必要だったのは、自分がどんな施術者になりたいのかを考えることだったのだと思います。
- 何を大切にして働きたいのか
- この先も仕事を楽しみ続けるには何が必要なのか
- 患者さんへ、どんな価値を提供したいのか
- 自分は何を学んでいる時に心が動くのか
そこが明確になっていなければ、人を雇っても、事業を広げても、進む方向が定まりません。
私はまず、自分自身が学びたいと思った施術を学ぶことを選びました。
それがすぐに組織化への答えになったわけではありません。
ただ、その判断によって、自分が仕事で大切にしたいものが少しずつ見えてきました。
仕事を楽しく続けることも、経営では大切です
人によっては、規模を大きくするためにスタッフを雇う方もいるでしょう。
自分が現場から離れるために、組織化を選ぶ方もいると思います。
それぞれの考え方があっていいと思います。
私の場合は、「もっと仕事を面白くしたい」という気持ちが最初にありました。
この先何十年も続ける仕事だからこそ、自分が熱を持てるものを見つけたい。
そのために学び、施術の幅を広げることを選びました。
今振り返ると、その時の直感は、私の施術だけでなく、その後の会社の方向性にも大きく影響しています。
経営では、合理的な判断が必要です。
ですが、自分が心から面白いと思える方向へ進むことも、決して軽視してはいけないと思っています。
なぜなら、経営も仕事も、短期間で終わるものではないからです。
長く続けるのであれば、自分自身が学びたいと思えること、熱を持って取り組めることを選ぶ。
それも、経営者にとって大切な判断の一つなのだと、私はこの経験から学びました。

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