手術歴は施術のヒントになる|今の痛みだけでなく「過去に体へ何が起きたか」を見る

施術をする時、私は現在出ている症状だけを見るのではなく、過去にその方の体へ何が起きたのかもかなり大切にしています。

特に確認するのが、手術歴です。

何の手術を受けたのか。

何歳頃だったのか。

どの部位だったのか。

その前後で体調に変化はなかったのか。

こういった情報です。

手術を受けた経験があるから、必ず今の症状につながっているという話ではありません。

ただ、実際に体を見ていると、かなり昔に受けた手術の周辺に強い緊張や動きづらさが残っていて、そこを一つの入口として考えることで、全身の見え方が変わることがあります。

先日、スタッフとの施術練習でも、まさにそんなことがありました。

目次

30代で子宮筋腫の手術を受けたスタッフを施術した

今回施術したのは、現在50代のスタッフです。

そのスタッフは30代の頃、子宮筋腫によって子宮摘出術を受けています。

今回、練習の中で私が実際に体を見てみると、まず感じたのが全身の筋肉の緊張の強さでした。

どこか一か所だけという感じではありません。

全身的に緊張が強い。

その中でも、特に気になったのが腰部でした。

そこで私は、単純に、

「腰が硬いから腰を緩めよう」

とは考えませんでした。

なぜ腰部の緊張がこれだけ強いのか。

その背景を考えます。

そこで一つ大きく気になったのが、過去の子宮摘出術でした。

「腰が硬い」という結果だけを見ない

例えば腰の筋肉がものすごく緊張していたとします。

その場合に、腰を揉めば一時的に柔らかくなることはあります。

でも、施術者としてもう一段考えたいのは、

「そもそも、なぜここがこれだけ緊張しているんだろう」

という部分です。

姿勢かもしれません。

日頃の動作かもしれません。

呼吸かもしれません。

過去のケガかもしれません。

そして、手術歴が関係している可能性もあります。

今回のスタッフの場合、私は過去の子宮摘出術周辺の状態と腰部を含む全身の緊張との関係を、一つの仮説として考えました。

大切なのは「手術したからここが悪い」と決めつけることではなく、現在の体を作ってきた背景の一つとして手術歴を考えることです。

最初にアプローチしたのは、腰ではなかった

今回、私が最初に見たのは腰そのものではありません。

子宮があった骨盤内の領域、そして手術を受けた周辺の組織の状態から見ていきました。

もちろん、摘出された子宮そのものへ施術するという意味ではありません。

手術を受けた周辺の腹部や骨盤周囲の組織、緊張や動きのつながりを確認していくという意味です。

そこから体の反応を見ます。

今回の場合には、その周辺へアプローチした後、腰部を含めた全身の緊張にも変化が見られました。

こういう反応を見ると、

「やっぱり今回はここから見てよかったな」

と判断できます。

もちろん、一人の体で起きた反応を、そのまま全員へ当てはめることはできません。

大切なのは、施術前に仮説を立て、実際にアプローチした後の変化を確認することです。

手術を受けた場所だけの問題とは考えない

私が手術歴を聞く理由は、傷跡そのものだけを見たいからではありません。

体は一部分だけで動いているわけではないからです。

腹部や骨盤周囲の動きが変われば、体幹の使い方も変わるかもしれません。

体幹の使い方が変われば、腰部や股関節などに別の負担がかかっている可能性も考えられます。

そうやって、

「この場所の問題」

から、

「この出来事をきっかけに、体全体では何が変わったんだろう」

へ視点を広げます。

私は臨床では、この見方をかなり大切にしています。

何十年前の手術でも、私は問診で確認する

患者さんからすると、昔の手術はもう終わった話だと思っていることがあります。

「30年前だから関係ないですよね」

「もう治っているから大丈夫です」

と言われることもあります。

もちろん、その手術が現在の症状と全く関係していないこともあります。

だから、古い手術歴を何でも原因にするわけではありません。

ただ私は、情報としては確認します。

何歳の時だったのか。

どんな手術だったのか。

どこを切ったのか。

手術後から何か体調が変わった記憶はないか。

その後、別の症状が出始めていないか。

こうしたことを聞いておくと、今の体を考える材料が増えます。

手術だけでなく、大きな病気の既往歴も見る

これは手術だけの話でもありません。

若い頃に大きな病気をした。

長期間寝込んだことがある。

強い痛みが長く続いた。

大きなケガをした。

こういった経験も、私は問診で確認します。

病気そのものが何十年後の症状を直接起こしている、と単純に考えるわけではありません。

ただ、その出来事を境に活動量が変わったり、姿勢や動作が変わったり、体の使い方が変わったりしていることはあります。

だから、

「今どこが痛いですか?」

だけではなく、

「今まで体に何がありましたか?」

まで聞いておく。

この違いは、施術を組み立てる時にかなり大きいと思っています。

問診は「症状を聞く時間」だけではない

問診というと、現在の症状について聞く時間というイメージが強いかもしれません。

いつから痛いですか。

どんな時に痛いですか。

何をすると楽ですか。

もちろん、これらも必要です。

でも私は、それと同じくらい既往歴を大切にしています。

今までどんな病気をしたのか。

どんな手術を受けたのか。

大きなケガはなかったのか。

出産歴はどうなのか。

現在服用している薬はあるのか。

そうした情報を集めながら、今の症状だけではなく、その人の体がどういう経過をたどって現在に至ったのかを考えます。

私にとって問診は、症状名を決めるためではなく「その人の体の歴史を知る時間」でもあります。

問診で聞いた既往歴と、実際の体がつながるかを見る

ただし、問診で手術歴を聞いたからといって、

「じゃあ原因はそれですね」

とは考えません。

ここは非常に重要です。

例えば、20年前に腹部の手術を受けたとします。

でも実際に体を確認してみると、その周辺には特に気になる反応がない。

動きにも大きな問題を感じない。

アプローチしても、現在困っている症状や全身の状態にほとんど変化がない。

それなら、その手術歴を必要以上に追いかける必要はありません。

逆に、問診で聞いた情報と、触診や動作、姿勢などで見えたものがつながる。

さらに、実際にアプローチした後に変化が出る。

そうなれば、

「今回はここが一つ大きく関係していそうだ」

という判断材料になります。

問診と体の評価を別々に考えないことが大切です。

施術では「最初にどこを見るか」がかなり重要

私は、施術のファーストアプローチをかなり重要だと考えています。

60分施術するのであれば、最終的にはいろいろな場所へアプローチできるかもしれません。

でも、

「とりあえず硬いところからやろう」

という施術と、

「この人の体は、まずここから見た方がいい」

と考えて始める施術では、その後の組み立てがかなり変わります。

最初の部位に対する反応を見て、

「仮説は合っていそうだ」

となれば、そのまま次へ進めます。

反応がなければ、

「違ったな」

と修正できます。

ファーストアプローチは正解を当てるためのものではなく、最初の仮説を検証するためのものだと思っています。

最初のアプローチが違ったら、そこで修正すればいい

施術者として経験が浅いと、

「最初の場所を間違えたらどうしよう」

と考えることもあると思います。

でも、私は最初から絶対に正解を当てなければいけないとは思っていません。

大切なのは、何となく始めないことです。

問診をする。

体を見る。

仮説を立てる。

一か所アプローチする。

もう一度体を見る。

変化があったのか確認する。

なければ、別の仮説を考える。

この繰り返しです。

むしろ、最初の仮説が違ったのに、そのまま同じ考えで60分進めてしまう方がもったいないと思っています。

「腰が硬いから腰をやる」だけでは、見えないことがある

今回のスタッフも、分かりやすいのは腰部の緊張でした。

そこだけ見れば、腰への施術から始めても不思議ではありません。

でも、

「なぜ腰がこれだけ緊張しているんだろう」

と考えると、見方が変わります。

現在の姿勢。

体幹の動き。

骨盤周囲。

過去の手術。

既往歴。

そういったものを一つずつつなげていく。

その結果として今回は、過去の子宮摘出術周辺を最初のアプローチ候補にしました。

だから、症状が出ている場所と施術を始める場所が同じとは限りません。

「手術歴がある=そこを施術する」でもない

一方で、逆の決めつけにも注意が必要です。

腹部の手術をしている。

だから腹部から施術する。

子宮摘出術を受けている。

だから骨盤周囲から施術する。

これを毎回同じようにやってしまったら、結局は別のパターンにはめ込んでいるだけです。

人によって違います。

同じ手術を受けていても、その後の経過は違います。

現在困っていることも違います。

体の状態も違います。

だから、手術歴はあくまで一つの情報です。

その情報を現在の体と照らし合わせる。

ここが大切だと思っています。

昔の出来事を「原因」と決めるのではなく「手がかり」にする

私は臨床では、既往歴を原因探しのためだけに使わない方がいいと思っています。

「あなたの腰痛は20年前の手術が原因です」

そう言い切ってしまえば、分かりやすいかもしれません。

でも、本当にそうなのかは分かりません。

体にはいろいろな要素が関係しています。

だから、

「昔の手術が今の体を考えるヒントになるかもしれない」

くらいから始めます。

そこで実際に体を見る。

反応を見る。

仮説を修正する。

既往歴は、患者さんの症状を一つの原因に決めつけるためではなく、施術の仮説を増やすための情報だと私は考えています。

手術歴を聞くことで、施術の選択肢が増える

例えば、腰が痛い患者さんがいたとします。

現在の腰だけを見ていれば、

筋肉。

関節。

姿勢。

動作。

そのくらいの選択肢になるかもしれません。

でも、問診をして、

過去に腹部の手術をしている。

昔大きなケガをしている。

長期間入院したことがある。

そういった情報が入れば、見る範囲が広がります。

選択肢が増えます。

選択肢が増えると、

「腰をやっても変わらない」

となった時にも、次の仮説を立てやすくなります。

私は、こういうところに既往歴を聞く意味があると思っています。

今回のスタッフの体を見て、改めて感じたこと

今回の施術練習でも、最初に分かりやすく見えていたのは全身の筋緊張と腰部の強い緊張でした。

ただ、その結果だけを追わず、過去の子宮摘出術という情報を含めて体を見ました。

そして手術を受けた骨盤周囲を一つの入口としてアプローチし、その後の全身の変化を確認しました。

こういう経験があると、改めて問診の大切さを感じます。

仮に手術歴を知らなかったら、腰から始めていたかもしれません。

もちろん、それで結果が出る可能性もあります。

ただ、一つ情報があることで、最初に試せる仮説が変わります。

施術というのは、知っている技術の数だけで決まるものではありません。

その技術を、

「なぜこの人に、今ここから使うのか」

まで考えることが大切です。

施術で大切なのは「何をするか」より「なぜそこから始めるか」

新しい手技を勉強すると、どうしても、

「この技術を使ってみたい」

となります。

私自身もそういう経験があります。

でも、臨床を続けていると、技術そのもの以上に、

「なぜ今これを選ぶのか」

の方が大切だと感じるようになります。

腰が硬いから腰。

首が痛いから首。

膝が痛いから膝。

それだけではなく、一度その背景を見る。

過去に何があったのか。

どこから体が変わったのか。

現在、全身ではどういう状態なのか。

そこから、最初の一手を考える。

施術のファーストアプローチは、その人の体をどう見ているのかが最も表れやすい部分だと思っています。

そして一回アプローチしたら、必ずもう一度見る。

変化があれば次へ進む。

変わらなければ考え直す。

その繰り返しです。

今回のような過去の手術歴も、そのための大切な情報の一つです。

今出ている症状だけではなく、これまでその人の体に何が起きてきたのか。

そこまで聞いて、見て、考える。

私は、そうやって施術を組み立てることを大切にしています。

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