勉強を始めたばかりの頃は、「たくさん説明できる人ほど知識がある」と思っていました。
でも、臨床を重ねるほど、その考えは変わっていきました。
知識が増えるほど、説明は短く、そしてシンプルになるんです。
詳しく説明すれば伝わるわけではありません
例えば体の状態を説明する時、
「AがBになって、BがCになって、CがDになって、その結果Eになります。」
というような説明をすることがあります。
もちろん、その背景を詳しく知りたいという方もいらっしゃいます。
ただ、現場の感覚では、そのような説明を求めている方は一割もいない印象です。
多くの患者さんが知りたいのは、医学の授業ではありません。
「今、自分の体で何が起きているのか。」
それを分かりやすく知りたいだけなんです。
知識が増えるほど、省略できるようになります
知識が少ない頃は、途中の説明を省略することが不安になります。
だから、一から十まで説明したくなります。
でも、知識が増えてくると分かることがあります。
AからEまでの間には、実は膨大な情報があるということです。
それを全部説明しても、患者さんは理解しきれません。
だからこそ、
「体の中では、今こういうことが起きているイメージですよ。」
というような伝え方になります。
厳密には少し違う部分があったとしても、本質が伝われば十分なことも多いのです。
患者さんが覚えているのは、一番シンプルな言葉です
例えば、
「最近下痢が続いているんです。」
と相談された時。
私は、
「今は体の水分バランスがうまく調整できなくなっていて、水分を外へ出そうとしている状態かもしれませんね。」
というような説明をすることがあります。
もちろん、体の中ではもっと複雑なことが起きています。
でも、その場で必要なのは、複雑な生理学を説明することではありません。
患者さんが「なるほど、そういうことなんですね。」と理解できることです。
本当に知識がある人ほど、難しい言葉を使いません
難しいことを難しく話すことは、それほど難しくありません。
でも、難しいことを誰にでも分かるように話すことは、とても難しいことです。
だから私は、説明が短くなってきたスタッフを見ると、「知識が整理されてきたな」と感じます。
患者さんに必要なのは、専門用語ではありません。
「だから今こうなっているんだ。」
そう納得できる、一つの分かりやすい言葉です。
知識が増えるほど、その言葉を選べるようになります。
私は、それも施術者として大切な技術の一つだと思っています。

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