前回、初めてスタッフを雇った時に、子育て中の主婦の方を採用してうまくいかなかった話を書きました。
その時に学んだのは、単純に「主婦の方だったから難しかった」ということではありません。
一人が休んだだけで患者さんへの対応が止まってしまう、会社の設計そのものに問題があったという話です。
今回は、その続きです。
一人目のスタッフというのは、本当に大事です。
それまで、会社には経営者である自分しかいません。
そこに、もう一人入ります。
単純に人数だけで考えれば、会社の50%を占める人が入ってくるわけです。
もしその人が、自分の考えを理解してくれて、自分が求めているような動きをしてくれたら、会社の進むスピードは一気に上がります。
逆に、方向性が合わなかったり、教育や仕組みが整っていなかったりすると、経営者の負担はむしろ増えます。
一人目を雇うということは、自分の仕事を半分任せるというより、会社の50%を一緒に作る人を迎えることに近いです。
一人増えるだけで、会社のスピードは大きく変わる
一人で経営している時には、当然ながら、すべて自分でやります。
施術。
営業。
患者さんへの連絡。
カルテ。
請求。
集客。
ホームページ。
経理。
掃除。
何か新しいことをやりたいと思っても、自分が動かなければ何も始まりません。
そこに一人スタッフが入ると、理想的には、自分が一つの仕事をしている間に、もう一つの仕事が進みます。
例えば、自分が患者さんの施術をしている間に、スタッフが別の患者さんを担当してくれる。
自分が営業へ行っている間に、スタッフが現場を回してくれる。
自分が、
「これをやらなきゃな」
と思っていたことを、すでにスタッフが気づいて動いてくれている。
そうなれば、会社の進む速度は一気に上がります。
一人分の能力が単純に加わるだけではありません。
経営者自身が、今までできなかったことへ時間を使えるようになります。
その意味では、一人目の採用がうまくいくと、会社は大きく変わります。
一人目のスタッフは、会社の50%を占める
スタッフが十人いる会社で、一人入社する場合と、一人しかいない会社に一人入社する場合では、その人の影響力は全く違います。
十人の会社なら、新しく入った一人は、全体の一部です。
しかし、経営者一人しかいなかった会社に一人入れば、人数だけで見れば二人のうちの一人です。
つまり50%です。
考え方。
患者さんへの接し方。
仕事に対する姿勢。
報告の仕方。
時間の使い方。
その一つひとつが、会社の文化に大きな影響を与えます。
経営者がどれだけ、
「患者さんを大切にしよう」
と考えていても、もう一人のスタッフが全く違う考え方であれば、会社全体としては半分しかそろっていない状態です。
だから、一人目はすごく大事です。
だからといって「優秀な人を絶対に採用しよう」と考えすぎない
ここまで読むと、
「それなら、一人目は絶対に優秀な人を採用しなければいけない」
と思うかもしれません。
前回の記事を読んで、
「子育て中の方は、一人目では難しいのかな」
と感じた方もいるかもしれません。
ただ、ここで一つ現実的な話をします。
開業したばかりの小さな会社に、完成された優秀な人が簡単に来てくれるとは考えない方がいいです。
これは、候補者が悪いという話ではありません。
そもそも、求職者から見た会社側の条件がまだ弱いからです。
開業したばかりの会社は、求職者からすると不安が多い
開業したばかりの整体院や鍼灸院、訪問マッサージは、求職者からすれば分からないことがたくさんあります。
まず、会社そのものを知られていません。
有名な会社でもありません。
求人を出したとしても、
「この会社は大丈夫なのだろうか」
と思われます。
売上は安定しているのか。
給与を毎月きちんと払えるのか。
患者さんは十分にいるのか。
研修制度はあるのか。
先輩スタッフはいるのか。
経営者はどのような人なのか。
数年後も会社があるのか。
求職者からすれば、不安が多いのは当然です。
一方で、経験も豊富で、どの会社からも欲しがられるような人であれば、ほかにも選択肢があります。
待遇の良い会社。
研修制度が整った会社。
福利厚生が充実している会社。
名前が知られている会社。
そうしたところからも選べます。
そのため、創業したばかりの会社が、
「即戦力の超優秀な人だけを採用したい」
と思っても、簡単ではありません。
優秀な人が来ないなら、どうするかを考える
では、完成された優秀な人が来ないのであれば、人を雇ってはいけないのでしょうか。
私は、そうは思いません。
大切なのは、
「優秀な人が来ないなら、会社側は何をすればよいのか」
を考えることです。
答えは、かなり地味です。
経営者が、今まで以上に動くことです。
採用したスタッフに仕事を教える。
マニュアルを作る。
失敗が起きたら、なぜ起きたのか考える。
仕事の流れを整理する。
患者さんへの説明方法を教える。
カルテの書き方を教える。
会社が大切にしている考え方を伝える。
今まで自分の頭の中だけで行っていたことを、言葉にして渡す必要があります。
人を一人雇ったら、経営者が楽になるとは限らない
一人で仕事をしていて忙しくなると、
「誰か一人雇えば、少し楽になるだろう」
と思うことがあります。
これは、かなり危険な考え方だと思っています。
少なくとも、採用した直後は楽にならないことが多いです。
むしろ、仕事が増えます。
今まで自分なら一分でできたことを、スタッフへ説明する。
やってもらった内容を確認する。
間違っていたら修正する。
なぜ違ったのか説明する。
患者さんへの対応で問題が起きれば、経営者が対応する。
本人が悩んでいれば話を聞く。
給与や勤怠の管理も増えます。
社会保険や労務の手続きも必要です。
一人で働いていた時には存在しなかった仕事が、一気に増えます。
二人目、三人目を雇い、軌道に乗せるまでが本当に大変
個人的には、一人目を雇えば会社が完成するとは思っていません。
一人目。
二人目。
三人目。
このあたりまでの時期は、本当に大変です。
スタッフが増えるたびに、今まで見えていなかった会社の穴が出てきます。
一人目を雇って初めて、
「この仕事は教えないと分からないんだ」
と気づきます。
二人目が入ると、
「人によって受け取り方が違うんだ」
と気づきます。
三人目が入ると、
「人によって教える内容が違っていたら、会社としてばらばらになる」
と気づきます。
そこでようやく、マニュアルや評価制度、研修制度、社内ルールなどの必要性が見えてきます。
会社を作っているつもりでも、実際には、人を雇いながら初めて会社になっていく部分がたくさんあります。
経営者には当たり前でも、スタッフには分からない
一人で何年も仕事をしていると、自分の中では当たり前になっていることが増えます。
患者さんの家へ入ったら、まず挨拶をする。
靴をそろえる。
患者さんの表情や体調を見る。
施術前に今日の状態を聞く。
何か変化があったらカルテへ残す。
ケアマネジャーへ必要な報告をする。
訪問時間を守る。
自分にとっては、考えなくてもできることになっています。
しかし、新しく入ったスタッフは、その会社で働くのが初めてです。
あなたの頭の中は見えません。
だから、できなくて当然のことがあります。
そこで経営者が、
「なんでこんなことも分からないんだ」
と思っても仕方がありません。
教えていないことを、相手が分からないのは当たり前です。
スタッフのミスは、会社の仕組み不足を教えてくれる
人を雇えば、必ず何かしらのミスが起きます。
連絡を忘れた。
説明が不足した。
カルテを書き忘れた。
時間を間違えた。
患者さんへの声かけが、会社の考えと少し違った。
もちろん、本人が注意すべきミスもあります。
しかし、経営者としては、もう一つ考えた方がよいと思っています。
「これは、本当に本人だけの問題なのか」
ということです。
会社として教えていたか。
ルールは明確だったか。
マニュアルはあったか。
本人が確認できる仕組みはあったか。
経営者とスタッフで、認識がそろっていたか。
そこまで見る必要があります。
「自分が教えていなかった」と思えるかどうか
スタッフが失敗した時に、
「なんでこんなことをしたんだ」
と怒りたくなることはあります。
私自身もあります。
ただ、その後に、
「これは自分が教えていなかった部分だから、しょうがないな」
「ここを教える仕組みが必要なんだな」
「同じミスが二度起きないように、会社側を変えよう」
と考えられるかどうかは、大きいと思います。
スタッフを雇うということは、人のミスまで経営に含めるということでもあります。
完璧な人を採用して、何も教えなくても全部やってくれる。
そのような前提で会社を作るのは難しいです。
一人目の採用では、完成度より価値観を見る方がよいこともある
創業初期の会社であれば、完成された能力だけを求めるよりも、別の部分を見た方がよいことがあります。
例えば、
- 患者さんを大切にできるか
- 分からないことを素直に聞けるか
- 注意された時に受け止められるか
- 報告や相談をきちんとできるか
- 新しいことを学ぶ気持ちがあるか
- 会社の考え方に共感できるか
- 経営者と一緒に会社を作っていく感覚を持てるか
などです。
技術は、ある程度教えることができます。
会社の仕事の流れも教えられます。
しかし、患者さんを雑に扱う。
人の話を聞かない。
失敗を隠す。
注意されるとすべて人のせいにする。
こうした部分を後から変えるのは、簡単ではありません。
一人目だからこそ、能力だけでなく、一緒に会社を作れる人かという視点が重要だと思います。
一人目を「即戦力」と考えすぎると苦しくなる
経営者としては、人件費を払う以上、早く売上を作ってほしいと思います。
当然です。
月給を支払う。
社会保険料もかかる。
採用費もかかっている。
そう考えれば、
「早く一人で回れるようになってほしい」
と思います。
ただ、一人目を最初から完成された即戦力として考えすぎると、お互いに苦しくなります。
本人は、知らない会社で、知らない患者さんを担当します。
経営者が何を大切にしているかも、最初は分かりません。
会社独自のやり方もあります。
ある程度の育成期間は必要です。
最初から100%を求めるのではなく、どのくらいの期間で何ができるようになってほしいのかを考えます。
人を雇う前に、教える準備があるかを確認する
一人目を採用する前に、経営者自身へ聞いてみてもよいと思います。
患者さんへの基本的な対応を説明できますか。
一日の仕事の流れを言語化できますか。
施術の考え方を説明できますか。
問題が起きた時の報告方法は決まっていますか。
カルテの書き方は決まっていますか。
休んだ時の対応は決まっていますか。
何を評価するのか決まっていますか。
会社として絶対に守ってほしいことを伝えられますか。
完璧である必要はありません。
私自身も、人を雇ってから足りないものにたくさん気づきました。
ただ、
「人を入れれば、あとは勝手に仕事を覚えてくれる」
という状態では、かなり危険です。
マニュアルは、スタッフを縛るためではない
一人で仕事をしている時には、マニュアルはほとんど必要ありません。
自分の頭の中に全部入っているからです。
しかし、人を雇うと、その頭の中を外へ出す必要があります。
患者さんのお宅へ伺う時の基本。
カルテの記載方法。
遅刻しそうな時の連絡。
事故が起きた時の対応。
患者さんからクレームがあった時の報告。
会社の備品の扱い。
こうした基本的な部分は、マニュアルにした方がスタッフも楽です。
毎回、
「これどうすればいいですか」
と経営者へ聞かなくても済みます。
経営者側も、毎回同じ説明をしなくて済みます。
マニュアルは、スタッフを細かく管理するためというより、迷わず働ける土台を作るためにあります。
一人目のスタッフと一緒に会社の仕組みを作っていく
創業したばかりの会社では、最初から完璧なマニュアルや教育制度があることは少ないと思います。
だから、一人目のスタッフと働きながら作っていけばよいと思います。
本人から、
「ここが分かりにくかったです」
と言われたら、そこを直す。
同じ質問が何度も出るなら、マニュアルにする。
ミスが起きたら、チェック項目を追加する。
経営者が説明しにくかった部分は、言葉にして整理する。
こうして、一人目と一緒に会社の土台を作っていきます。
最初から完成された会社へ、完成されたスタッフが入るわけではありません。
会社もスタッフも、同時に成長する時期です。
一人目のスタッフが会社の文化を作る
一人目のスタッフの影響は、その人が退職した後にも残ることがあります。
例えば、一人目が報告を丁寧に行う人だった。
すると二人目が入った時に、そのスタッフが、
「うちは、こういう時はちゃんと報告するんですよ」
と教えてくれるようになります。
患者さんへの挨拶を大切にする人であれば、それが会社の当たり前になります。
逆に、時間にルーズだったり、報告をしなかったりすることが許され続ければ、それも会社の文化になります。
経営者だけではなく、一人目のスタッフの行動が、その後に入るスタッフの基準になります。
だから一人目は、会社の50%というだけでなく、今後の会社の雰囲気を作る人でもあります。
一人目に求めるのは、経営者のコピーではない
ただし、一人目のスタッフへ、経営者と全く同じ考え方や動きを求める必要はありません。
経営者と同じことができる人を探していると、採用はさらに難しくなります。
自分とは違う強みがあってよいと思います。
自分より患者さんとの会話が上手。
自分より細かな部分に気づける。
自分より事務作業が得意。
自分にはない施術技術を持っている。
そうした違いが、会社の幅になります。
同じであってほしいのは、細かなやり方ではなく、会社が大切にしている根本の部分です。
患者さんを大切にする。
嘘をつかない。
問題があれば報告する。
周囲の人へ配慮する。
こうした部分が合っていれば、方法や個性は違ってよいと思います。
人を雇えば、経営者は施術者から教育者にもなる
一人で働いている時には、自分の技術を上げることが大切です。
施術が上手になる。
患者さんへの説明が上手になる。
営業が上手になる。
自分の能力を上げれば、会社も良くなります。
しかし、人を雇った瞬間から、自分ができるだけでは足りなくなります。
自分のやり方を人へ伝える。
相手が理解できるように説明する。
失敗した時に修正する。
本人の成長に合わせて任せる仕事を変える。
つまり、経営者は教育者にもなります。
そして、人が増えれば、今度は管理者にもなります。
自分が患者さんを施術しているだけでは、会社は大きくなりません。
「人を雇って楽になりたい」が一番の理由なら、一度考えた方がいい
今、一人で忙しく働いていて、
「もう限界だから、一人雇って少し楽になりたい」
と思っている方もいると思います。
その気持ちはよく分かります。
ただ、それだけが採用理由なのであれば、一度考えた方がよいと思います。
人を雇った直後には、今より忙しくなる可能性があります。
教える。
確認する。
修正する。
給与を管理する。
労務を学ぶ。
問題が起きれば対応する。
スタッフの悩みも聞く。
そこまでやった先に、初めて自分の仕事を任せられるようになります。
そこを通らずに、
「採用した瞬間から自分の仕事が半分になる」
と思っていると、かなり苦しくなると思います。
それなら、一人で続けるという選択も悪くない
会社を大きくしなければならないわけではありません。
スタッフを何人も雇うことだけが、成功ではありません。
自分一人で患者さんを大切にしながら、十分な収入を得る。
休みも確保する。
自分の好きな施術をする。
そのような働き方もあります。
人を雇えば、売上を増やせる可能性はあります。
自分一人ではできない事業もできます。
しかし、人を雇う責任も増えます。
自分は、本当に組織を作りたいのか。
それとも、今の忙しさから逃れるために人を雇いたいのか。
ここは分けて考えた方がよいと思います。
スタッフの失敗を見て、自分の課題を考えられる人は強い
スタッフを雇うと、想定外のことがたくさん起きます。
教えたつもりなのに、伝わっていない。
自分なら絶対にしないようなミスをする。
患者さんから指摘を受ける。
本人から不満を言われる。
経営者としては、しんどいこともあります。
その時に、
「全部スタッフが悪い」
で終わるのか。
それとも、
「教え方が足りなかったかもしれない」
「仕組みが分かりにくかったかもしれない」
「採用時に伝えていなかったかもしれない」
「同じことが起こらないように、会社を変えよう」
と考えるのか。
ここで、その後の組織はかなり変わると思います。
経営者が動く量は、採用後にむしろ増える
一人目を雇った直後は、スタッフより経営者の方が動くくらいでよいと思っています。
スタッフには、患者さんへ集中してもらう。
分からないことがあれば質問してもらう。
経営者は、その質問を一つずつ仕組みにする。
営業も続ける。
採用も考える。
教育もする。
会社のルールも作る。
簡単ではありません。
ただ、その時期を乗り越えると、少しずつスタッフが自分で動けるようになります。
二人目が入り、一人目が教えてくれるようになります。
三人目が入り、会社の基本的な文化が見えてきます。
そこで初めて、経営者が現場以外へ使える時間も増えてきます。
一人目を採用する前に考えておきたいこと
これから初めてスタッフを採用しようとしているのであれば、私は次のようなことを一度考えてみるとよいと思います。
- なぜ人を雇いたいのか
- 採用した直後に、さらに忙しくなっても続けられるか
- その人へ何を教える必要があるのか
- 会社として絶対に大切にしたいことは何か
- スタッフがミスした時に、教育や仕組みを見直せるか
- 一人目が休んだ時にどう対応するか
- 給与を継続して支払えるか
- どの程度の期間をかけて育成するのか
- 優秀な人を待つのではなく、育てる覚悟があるか
これを考えて、
「それでも人を雇って、一緒に会社を作りたい」
と思えるのであれば、採用へ進めばよいと思います。
一人目の採用で大切なのは、完璧な人を見つけることではない
初めて人を雇う時には、失敗したくないと思います。
できれば優秀な人を採用したい。
すぐに一人で仕事を任せられる人がいい。
患者さんからも好かれる人がいい。
休まず、責任感があって、施術も上手。
そんな人が来てくれれば、もちろん最高です。
しかし、創業初期の小さな会社が、最初から完璧な人材を採用できるとは限りません。
だからこそ、経営者自身が育てることを前提にする。
できなかった時に、本人を責めるだけでなく、自分が何を教えていなかったのかを見る。
問題が起きれば、同じ問題が起きない仕組みを作る。
一人目と一緒に、会社そのものを作っていく。
一人目の採用で大切なのは、完璧なスタッフを見つけることよりも、経営者自身に、人を育てながら会社を作る覚悟があるかどうかだと思います。
人を雇えば、すぐに楽になるわけではありません。
むしろ最初は、大変になることの方が多いです。
ただ、その時に一つずつ仕組みを作り、スタッフと一緒に成長できれば、会社は一人では作れなかった形へ進んでいきます。
一人目は、単なる一人目の従業員ではありません。
これからの会社を一緒に作る、最初の仲間です。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。
ブログでは、
整体院・訪問マッサージ・鍼灸院などの現場で感じてきたことをもとに、
体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。
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