今回は、スタッフを雇っても辞めてしまい、また採用して、また辞めてしまう。
そんなことが続いていた方と話した時のことを書いてみようと思います。
実際に、個人で事業をしている方で、一人目のスタッフを雇ったけれど辞めてしまった。
その後、また一人採用したけれど、その方も辞めてしまった。
そういうことを繰り返している方がいました。
そこで私は、まず聞いたんです。
「辞める前に、どうして辞めたいのか、本人にちゃんと聞きましたか?」
すると、
「最後は喧嘩別れみたいな感じになってしまったので、ちゃんとは分からないです。ただ、おそらくこれが理由だと思います」
という答えでした。
私は、まずそこが問題だと思いました。
スタッフが辞めた理由を正確に分からないまま次の人を採用しても、同じことが起こる可能性があります。
採用が悪かったのか。
教育が悪かったのか。
給与や働き方に問題があったのか。
経営者との関係性に問題があったのか。
そこを確認しないまま次へ進んでも、原因が残ったままだからです。
スタッフが突然怒ったように見えても、突然ではないことが多い
話を聞いていくと、そのスタッフは最後にかなり強く不満を伝えてきたそうです。
経営者側からすると、
「なぜ急にそんなに怒ったんだろう」
と感じていたようでした。
でも私は、
「多分、急にじゃないですよ」
と話しました。
一度だけ何か納得できないことがあった。
その一回で、いきなり経営者に強く言う人は、それほど多くないと思います。
普通は、まず我慢します。
「まあ、今回はしょうがないか」
「自分が気にしすぎなのかな」
「そのうち変わるかもしれない」
そう思って飲み込むことがあります。
でも、それが二回、三回、四回と続く。
そのたびに少しずつ不満が溜まっていく。
そして、ある出来事をきっかけに一気に出ます。
経営者側からすると、その最後の一回しか見えていません。
しかし、スタッフ側からすると、それまでに積み重なった十回目だったのかもしれません。
スタッフが強く怒った時には、その直前の出来事だけを見るのではなく、それまでに何が積み重なっていたのかを考えた方がよいと思います。
「なんでこんなことにも気づかないんだろう」が増えていた
さらに、その経営者へ聞きました。
「普段、そのスタッフのことをどう見ていましたか?」
すると、最初は特に不満はなかったそうです。
ただ、一緒に働いているうちに、
「なんでこんなことにも気づかないんだろう」
「なんでこれをやってくれないんだろう」
「これくらい言わなくても分かるでしょう」
という不満が少しずつ増えていったそうです。
この感覚自体は、私はすごく分かります。
経営者になると、見えるものが増えます。
患者さんのこと。
スタッフのこと。
売上。
経費。
採用。
クレーム。
今月の資金繰り。
半年後の会社。
経営者は、それらを全部同時に見ています。
だからこそ、
「ここまで見えているのに、なんでスタッフには見えないんだろう」
と思うことがあります。
でも、それは当然なんです。
経営者とスタッフでは、そもそも見えている範囲が違う
経営者とスタッフでは、仕事に対する責任の大きさが違います。
会社の売上が下がれば、最終的に責任を取るのは経営者です。
給与が足りなければ、経営者が何とかしなければなりません。
患者さんから大きなクレームがあれば、最後に前へ出るのも経営者です。
会社が潰れれば、自分がすべてを失います。
だから、経営者は自然と広い範囲を見るようになります。
仕事に対する覚悟も違います。
これは、スタッフが責任感に欠けているという意味ではありません。
立場が違うんです。
そこを同じ土俵で比べてしまうと、スタッフがかわいそうだと思います。
「自分なら気づくのに」
「自分ならもっと動くのに」
と思っても、経営者と同じ責任を負っていない人に、同じ視野や行動量を最初から求めるのは難しいです。
自分が雇われていた頃、本当に経営者と同じように動けていたか
その方には、こんな話もしました。
「あなた自身も、以前は雇われていましたよね」
「その時、当時の経営者と同じくらい会社全体を見て動けていましたか?」
おそらく、ほとんどの人はそうではないと思います。
私自身もそうでした。
雇われている時には、自分の担当している仕事を一生懸命やります。
患者さんに結果を出したい。
技術を学びたい。
評価されたい。
それは考えます。
でも、会社全体の資金繰りや、採用や、社会保険料や、半年後の売上まで考えながら働いていたかというと、そうではありません。
そもそも知らない情報もたくさんあります。
それなのに、自分が経営者になった瞬間に、スタッフへ、
「これくらい考えて当然でしょう」
と求めてしまうことがあります。
ここは、一度自分の雇われ時代を思い出してみるとよいと思います。
求めているものが大きすぎると、スタッフへの不満が増えていく
スタッフに期待すること自体は悪くありません。
成長してほしい。
もっと患者さんを見られるようになってほしい。
会社全体を考えて動いてほしい。
そう思うのは自然です。
ただ、最初から経営者と同じレベルを求めると、ほぼ確実に不満が出ます。
経営者は、
「なんでやってくれないんだ」
と思う。
スタッフは、
「そんなこと聞いていない」
「どこまでやればいいのか分からない」
「何をやっても足りないと言われる」
と感じる。
少しずつ、お互いの認識がずれていきます。
この状態でコミュニケーションを取らずにいると、最後は、
「もう無理です」
となっても不思議ではありません。
人を雇った瞬間、経営者の余裕がなくなることがある
もう一つ大きいのが、お金です。
人を雇えば、当然固定費が増えます。
毎月の給与。
社会保険料。
交通費。
採用費。
教育に使う時間。
それまで一人で経営していた時には存在しなかった支出が増えます。
そうなると、経営者はお金を気にするようになります。
「この人に毎月これだけ払っている」
「もっと売上を作ってもらわないと困る」
「これだけ払っているんだから、もっと動いてほしい」
気づかないうちに、そういう見方になってしまうことがあります。
お金を見ること自体は、経営者として必要です。
ただ、キャッシュばかりを見るようになると、視野が狭くなることがあります。
以前なら、
「まだ入ったばかりだから、教えよう」
と思えていたことが、
「これだけ給料を払っているのに、なんでできないんだ」
に変わっていく。
ここは、経営者自身が気づかなければいけない部分だと思います。
余裕がなくなると、自分が違う人間になっていることに気づきにくい
経営者は、自分では変わっていないつもりでも、余裕がなくなると少しずつ変わります。
言葉が強くなる。
スタッフの失敗ばかり目につく。
できたことより、できなかったことを見る。
質問されると、
「前にも言ったよね」
と思う。
自分で考えて動いてほしいと思いながら、失敗したら怒る。
こうなると、スタッフはだんだん動けなくなります。
何かをやる前に、
「これをやったら怒られないかな」
と考えるようになるからです。
そして経営者は、
「最近、全然自分で考えなくなった」
とさらに不満を持つ。
悪い循環になります。
だからこそ、経営者は、
「今の自分は余裕がなくなっていないか」
を時々確認した方がよいと思います。
スタッフが辞める時、最後の出来事だけを原因にしない
スタッフが退職を申し出た時には、分かりやすい出来事があることがあります。
給与の話で揉めた。
シフトのことで意見が合わなかった。
注意したら反発された。
その出来事だけを見ると、
「あの件が原因で辞めた」
と思います。
しかし、本当は、その出来事が最後の一押しだっただけかもしれません。
その前に、
話を聞いてもらえなかった。
評価されていないと感じた。
言うことが毎回変わった。
何を求められているか分からなかった。
注意されることばかりだった。
相談しづらかった。
そうした小さな違和感が積み重なっていた可能性があります。
退職理由を見る時には、「最後に何があったか」ではなく、「そこまでに何が積み重なっていたか」を見た方がよいと思います。
辞める前に、本音を聞ける関係を作れているか
退職時の面談も大切ですが、それより前に、本音を言える関係を作ることの方が大切です。
半年に一回しか話さない。
何か問題が起きた時しか面談しない。
これでは、不満がかなり大きくなってからしか分かりません。
日頃から、
「最近どう?」
「何か働きにくいところない?」
「この仕組み、やりづらくない?」
と聞く。
小さな違和感の段階で話せるようにする。
スタッフからすると、経営者へ不満を言うのはかなり勇気が必要です。
給与を払っている相手です。
評価する相手です。
自分の立場に影響するかもしれない相手です。
だから、経営者が、
「何かあったら言ってください」
と一回伝えただけでは、なかなか言えません。
普段から聞く必要があります。
私はスタッフ教育を、子育てに近い感覚で考えている
少し表現が難しいのですが、私はスタッフを育てることを、感覚としては子どもを育てることに近いと思う部分があります。
もちろん、スタッフは大人です。
子ども扱いするという意味ではありません。
そうではなく、
「できないことがあった時に、怒る前に、なぜできなかったのかを考える」
という意味です。
例えば、
「あ、これは知らなかったんだな」
「ここまで説明しないと伝わらないんだな」
「この出来事を、本人はこういう意味で捉えたんだな」
と一つずつ見ていきます。
できないことが分かれば、教える。
間違った捉え方をしていれば、その考え方を修正する。
それを繰り返します。
行動だけを直そうとしても、同じことが起きる
スタッフが何か問題のある行動をした時に、
「次からこうしてください」
と行動だけを修正することがあります。
もちろん、それで十分な場合もあります。
ただ、私は、なぜその行動を取ったのかを見ることを大切にしています。
例えば、報告しなかったスタッフがいたとします。
「今後は必ず報告してください」
と言うだけでも、次回は報告してくれるかもしれません。
でも、本人が、
「この程度なら自分で処理する方が優秀だと思っていた」
と考えていたのであれば、その捉え方を変えないと、別の場面でまた同じことが起こります。
そこで、
「問題を自分で解決することは良いことです。ただ、会社として患者さんの状況を把握する必要があるので、こういう出来事は報告してほしいです」
と理由まで伝えます。
すると、本人の中で、
「報告=自分で解決できなかった証拠」
ではなく、
「報告=会社全体で患者さんを守るための行動」
に変わります。
この捉え方が変わることが大切です。
捉え方が変われば、指示しなくても行動が変わる
私は、マネジメントでは、この「捉え方」をかなり大切にしています。
なぜなら、すべての場面をマニュアルにすることはできないからです。
患者さんの状態も違います。
ご家族も違います。
スタッフが直面する出来事も違います。
経営者がその場にいないこともあります。
そのたびに、
「こういう時はどうすればいいですか?」
と聞いていては、仕事が進みません。
でも、会社としての物事の捉え方が共有されていれば、本人が判断できるようになります。
例えば、
「迷った時には、患者さんにとって一番安全な方を選ぶ」
「自分だけで抱え込まず、会社全体で患者さんを見る」
「問題を隠すより、早く共有した方が患者さんのためになる」
という考え方が共有されていれば、初めて起きた出来事でも判断できます。
だんだん、こちらが細かく指示しなくても、
「自分だったら、きっとこうするだろうな」
と思う行動を、スタッフが自然に取るようになります。
信頼できるスタッフは、最初から完成しているとは限らない
信頼できるスタッフというと、最初から何でもできる人をイメージするかもしれません。
しかし、私自身は、そういう人ばかりではないと思っています。
最初は分からない。
ミスもする。
経営者とは違う捉え方をする。
それでも、一つずつ丁寧に共有する。
なぜ会社はこう判断するのか。
なぜ患者さんにこう接するのか。
なぜこの報告が必要なのか。
なぜこの行動を評価するのか。
そこを伝えていくと、少しずつ判断基準がそろってきます。
そして、こちらが見ていない場所でも、会社が大切にしている行動を取ってくれるようになります。
私は、そこまで育って初めて、
「この人なら任せられる」
という信頼になると思っています。
同じようにスタッフが辞め続けるなら、採用だけを見直さない
一人雇って辞めた。
次の人を雇っても辞めた。
さらに次の人も続かなかった。
そのようなことが続いた場合、
「最近の若い人は続かない」
「良い人が全然来ない」
「採用媒体が悪い」
と考えたくなるかもしれません。
もちろん、人選の問題もあります。
採用方法を見直した方がよい場合もあります。
ただ、複数人が似たような形で辞めているのであれば、一度会社側を見る必要があります。
経営者が何を求めているのか。
それを伝えているのか。
スタッフの不満を聞けているのか。
できていないことばかりを見ていないか。
給与を払っていることが、無意識に「これくらいやって当然」という気持ちにつながっていないか。
自分自身に余裕があるか。
ここを確認した方がよいと思います。
スタッフが辞めた時こそ、経営者にとって大きな学びになる
退職されるのは、経営者としてかなりつらいことです。
一緒に働いてきた人が離れる。
患者さんの引き継ぎもあります。
また求人を出さなければなりません。
採用費もかかります。
教育も一からやり直しです。
感情的にも疲れます。
ただ、そこで、
「合わない人だった」
だけで終わると、何も残りません。
自分のどこに問題があったのか。
会社の仕組みで直せるところはないか。
採用時に伝えるべきだったことはないか。
面談の頻度は足りていたか。
評価の仕方は適切だったか。
そこまで振り返れば、次の採用に活かせます。
辞めた人を責めるためではありません。
次の人が同じ理由で辞めない会社にするためです。
経営者と同じように考えてほしいなら、その考え方を教える
経営者は、スタッフへ、
「もっと考えて動いてほしい」
と思うことがあります。
私もそう思います。
ただ、考えて動いてほしいのであれば、経営者が普段どう考えているのかを伝えなければなりません。
患者さんから相談された時に、何を基準に判断しているのか。
何かミスが起きた時に、どこを見るのか。
新しいことを始める時に、何を大切にするのか。
スタッフ同士で問題が起きた時に、どう考えるのか。
経営者の頭の中を少しずつ共有します。
そうすると、似たような出来事が起きた時に、スタッフ自身が、
「この会社なら、こう考えるだろう」
と判断できるようになります。
行動を一つずつ指示するより、判断の基準を教えた方が、スタッフは自分で動けるようになります。
スタッフを育てることは、経営者自身を見直すことでもある
人を育てようとすると、自分自身の曖昧さが見えてきます。
なぜ自分は、この患者さんにはこう対応したのか。
なぜこの報告は必要で、これは必要ないのか。
なぜこのスタッフの行動には違和感があるのか。
今まで感覚でやっていたことを、説明しなければならなくなります。
そこで初めて、
「自分も明確に考えていなかったな」
と気づくことがあります。
だから、スタッフ教育は、スタッフだけを成長させるものではありません。
経営者自身の考え方も整理されます。
会社の理念も、言葉だけではなく具体的な行動に変わっていきます。
スタッフが辞めるたびに採用を繰り返す前に、一度立ち止まる
人が辞めると、すぐに求人を出したくなります。
患者さんを担当する人が足りない。
現場が回らない。
売上も落ちる。
早く次の人を採用したい。
その気持ちは当然です。
ただ、同じような退職が続いているのであれば、一度だけ立ち止まった方がよいと思います。
なぜ辞めたのか。
本当に把握しているのか。
辞める前にサインはなかったのか。
スタッフへ何を求めていたのか。
その期待は現実的だったのか。
自分自身が余裕を失っていなかったか。
教えるべきことを教えていたか。
経営者とスタッフで、物事の捉え方が共有されていたか。
そこを整理してから次の人を迎えた方が、同じ失敗を繰り返しにくくなります。
人が辞めない会社を作るより、本音を言える会社を作る
退職を完全になくすことはできないと思います。
結婚。
引っ越し。
家族の事情。
やりたい仕事が変わった。
独立したい。
どれだけ良い会社でも、人が辞めることはあります。
だから、
「絶対に辞めない会社を作ろう」
とするよりも、
「何か不満があった時に、辞める前に話せる会社を作ろう」
と考える方がよいと思っています。
その方が、改善できる問題なら改善できます。
本人が本当に別の道へ進みたいのであれば、納得して送り出すこともできます。
喧嘩別れになる前に話せる関係を作る。
そのためには、経営者側から日頃コミュニケーションを取る必要があります。
スタッフを育てる時に大切なのは、相手の行動より捉え方を見ること
私は、マネジメントをする時に、スタッフの行動だけを見ないようにしています。
なぜ、その行動をしたのか。
その出来事を、本人はどう捉えたのか。
そこを見るようにしています。
捉え方が変われば、行動も変わります。
一つの行動だけを修正すると、その場面でしか使えません。
しかし、
「この会社では、こういう理由でこう判断する」
という考え方を理解してもらえば、別の似た場面でも自分で判断できます。
その積み重ねによって、経営者が細かく指示を出さなくても、信頼して任せられるスタッフへ少しずつ育っていきます。
スタッフに経営者と同じような行動をしてほしいのであれば、同じ行動を求める前に、経営者が何を見て、どう考えているのかを共有することが大切です。
人を雇うということは、仕事を渡すだけではありません。
考え方を伝える。
できないことを教える。
不満を聞く。
自分の余裕のなさにも気づく。
そして、スタッフと一緒に会社を作る。
そこまで含めて、マネジメントなのだと思っています。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。
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体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。
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