今回は、スタッフの給与設計と、個人事業主が税理士と契約するタイミングについて書いてみようと思います。
少し違う話に見えるかもしれませんが、私の中ではどちらも、
「スタッフを雇った後も、会社を安定して続けるために何を準備するか」
という一つの話につながっています。
私は以前、スタッフのやる気を高めたいと思い、固定給をかなり早いペースで上げたことがあります。
しかし、給与を上げたからといって、必ずしも責任感や仕事への姿勢が変わるわけではありませんでした。
さらに、一度上げた固定給は、経営者の都合だけで簡単に下げることはできません。
その失敗を経験してから、私は固定給を必要以上に高くするよりも、会社の業績や本人の貢献に応じて、賞与で還元する方が経営しやすいと考えるようになりました。
また、スタッフを雇うと、自分一人で経営していた時にはなかった手続きや責任が一気に増えます。
給与計算。
源泉所得税。
社会保険。
賞与を支給した時の届出。
年末調整。
有給休暇や勤怠の管理。
こうしたことを間違えれば、自分だけではなく、スタッフにも迷惑をかけます。
そのため私は、一人で事業をしていた時には自分で青色申告を行っていましたが、スタッフを雇うタイミングで顧問税理士と契約しました。
自分で学ぶことと、専門家へ任せることは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。
まず自分で仕組みを理解し、そのうえで、間違えてはいけない部分を専門家に確認してもらう。この形が、私には合っていました。
固定給を上げることは、毎月の約束を増やすこと
スタッフに頑張ってもらった時、経営者としては何かしらの形で還元したいと思います。
給与を上げる。
賞与を支給する。
役職手当を付ける。
休日や福利厚生を充実させる。
方法はいくつかあります。
その中でも、固定給を上げることは、スタッフにとって分かりやすい還元です。
毎月の収入が増えるため、生活も安定します。
会社から評価されている実感も持ちやすいと思います。
ただし、経営者側から見ると、固定給の昇給は、一回だけお金を支払うことではありません。
翌月も、その次の月も、原則として同じ金額を支払い続ける約束です。
固定給が上がれば、給与そのものだけでなく、社会保険料の会社負担なども増える可能性があります。
現在の売上が良いから払えるというだけでは足りません。
患者さんが減った時にも払えるか。
大きな紹介元からの依頼が止まった時にも払えるか。
感染症や自然災害などで、一時的に営業が難しくなった時にも払えるか。
そこまで考えて決める必要があります。
固定費が大きいほど、売上が落ちた時に経営が苦しくなる
給与は、会社にとって大きな固定費です。
売上が良い月だけ払うものではありません。
患者さんの入院や施設への入所が重なり、訪問件数が減った月にも支払います。
新規患者さんが思うように増えなかった月にも支払います。
経営者自身の収入を減らしてでも、まずスタッフの給与を支払う必要があります。
もちろん、スタッフが安心して生活できる固定給は必要です。
固定給をできるだけ低くすればよい、という話ではありません。
地域の給与相場や仕事内容を踏まえ、求職者から選ばれる水準にする必要があります。
ただ、会社の体力以上に固定給を上げてしまうと、売上が少し落ちただけでも経営が苦しくなります。
順調な時に払える金額ではなく、多少状況が悪くなっても払い続けられる金額にする。
この考え方は、スタッフの雇用を守るためにも必要だと思っています。
私は、頑張った分を賞与で還元する形に変えた
固定給を上げすぎた経験をしてから、私は、毎月の固定給と、成果を還元する賞与の役割を分けて考えるようになりました。
固定給は、会社が安定して支払い続けられる水準にする。
そのうえで、会社の業績が良かった時や、スタッフが継続して良い働きをしてくれた時には、賞与として還元する。
この方が、私にとっては管理しやすいと感じています。
ちょうど今、夏の賞与を支給している時期なのですが、スタッフからすると、毎月の給与とは違う金額が入るため、やはりうれしいようです。
「ボーナスが入ると、気持ちが上がります」
と言ってもらえることもあります。
経営者側としても、会社の状況や本人の貢献を見たうえで、その時に還元できる金額を考えられます。
固定給を毎月増やすことと比べると、将来の固定費を増やしすぎずに感謝を形にできます。
賞与なら自由に増減できる、という意味ではない
ただし、賞与であれば、経営者がその時の気分で自由に金額を決めてよい、という話ではありません。
雇用契約書や就業規則に、
「毎年2回、基本給の2か月分を必ず支給する」
などと定めていれば、会社側に支給義務が生じる可能性があります。
業績や本人の評価に応じて賞与額を変えるのであれば、最初からその考え方を規程へ反映しておく必要があります。
例えば、
- 会社の業績を考慮すること
- 本人の勤務成績や評価を反映すること
- 賞与額は毎回変動すること
- 会社の状況によっては支給しない場合があること
- 評価期間や支給対象者の条件
などを整理します。
スタッフにとっても、何を頑張れば評価されるのかが分からなければ、納得できません。
固定給より調整しやすいから賞与にするのではなく、会社の業績とスタッフの貢献を、納得できる形で還元するために制度を作ることが大切です。
賞与にも社会保険料はかかる
賞与を支給する場合には、健康保険や厚生年金保険の対象となるスタッフについて、賞与にも社会保険料がかかります。
税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」をもとに、健康保険料や厚生年金保険料が計算され、原則として会社とスタッフが負担します。
そのため、
「毎月の給与ではなく、賞与にすれば社会保険料がかからない」
というわけではありません。
賞与を支給した月には、賞与分の社会保険料負担が発生します。
私が賞与を活用している主な理由は、社会保険料をなくすためではありません。
毎月の固定費を必要以上に増やさず、会社の業績に応じてスタッフへ還元しやすくするためです。
賞与へ配分すれば必ず社会保険料が安くなる、という単純な話ではないので、実際の給与設計は税理士や社会保険労務士へ確認した方がよいと思います。
賞与を支給したら、賞与支払届を提出する
社会保険へ加入しているスタッフへ賞与を支給した場合には、事業主が「被保険者賞与支払届」を提出します。
支給したスタッフごとに、賞与額などを届け出ます。
この届出によって、保険料や将来の年金額を計算する基礎となる標準賞与額が決まります。
現在は、年金事務所へ直接書類を持っていかなくても、e-Govなどを利用して電子申請できます。
以前であれば、紙へ一人ずつ記入し、年金事務所へ提出する感覚が強かったのですが、今はオンラインで完結できる手続きが増えました。
私自身も、オンラインでできる手続きは積極的に利用しています。
移動する時間がなくなります。
受付時間を気にする必要も減ります。
提出した記録も確認しやすくなります。
賞与支払届は、原則として賞与を支払った日から5日以内に提出する手続きです。
賞与を支給する前に、誰が、いつ、どの方法で申請するのかを決めておいた方がよいと思います。
制度を知らなくても、支払い義務はなくならない
一人で仕事をしている時には、自分の税金や保険について多少分からないことがあっても、最終的に困るのは自分です。
もちろん、それでも正しく行う必要はあります。
ただ、スタッフを雇うと、話が変わります。
源泉徴収した税金を正しく納める。
社会保険料を適切に計算する。
賞与を支給したら必要な届出を行う。
年末調整を行う。
給与明細を正しく作る。
こうした手続きを間違えれば、スタッフの税金や将来受け取る年金、各種給付にも関係する可能性があります。
「知らなかった」
では済まないことがあります。
だからこそ、スタッフを雇う経営者は、施術や集客だけでなく、税金や社会保険についても学ぶ必要があります。
一人で開業していた時は、自分で青色申告をしていた
私が一人で事業を行っていた時には、青色申告も自分で行っていました。
最初から税理士へすべて任せる方法もあります。
ただ、私はまず、自分でやってみたいと思いました。
売上をどのように記録するのか。
何が経費になるのか。
帳簿をどう作るのか。
所得税や消費税を、いつ支払うのか。
減価償却とは何か。
事業のお金と、生活のお金をどう分けるのか。
自分で手を動かすことで、少しずつ理解できました。
面倒に感じることもありましたが、経営を続けるうえでは、とても良い勉強になったと思っています。
税金を自分で触った経験が、後の経営に役立った
税理士へ依頼すれば、申告書を作ってもらえます。
しかし、自分にまったく知識がなければ、税理士から説明を受けても、何を言われているのか分からないことがあります。
売上と利益の違い。
経費を使うことと、現金が減ることの関係。
帳簿上の利益と、銀行口座に残っているお金の違い。
固定資産や減価償却。
貸借対照表と損益計算書。
こうした言葉に初めて触れると、理解するまでに時間がかかります。
私は自分で青色申告を行っていたため、税理士と契約した後も、説明されている内容をある程度理解できました。
すべて分かるわけではありません。
それでも、数字を見ながら質問できます。
「なぜ、これだけ売上があるのに現金が残っていないのか」
「この費用は、どのように処理されているのか」
「今年は、どの時期にどれくらいの納税が発生しそうなのか」
このような会話ができるようになります。
スタッフを雇う段階で、顧問税理士と契約した
私は、スタッフを雇うタイミングで顧問税理士と契約しました。
完全に一人で働いている間は、自分が間違えたことで困るのは、基本的に自分です。
しかし、スタッフを雇えば、給与や税金の処理を間違えたことで、その人に迷惑をかける可能性があります。
給与から税金を多く引きすぎた。
必要な手続きが遅れた。
年末調整の処理を間違えた。
賞与の計算に誤りがあった。
このようなことは、できる限り避けたいと思いました。
スタッフを雇うということは、その人の生活に関わるということです。
自分が勉強している途中だからという理由で、スタッフの給与や税金を曖昧に扱うことはできません。
そこで、税務や会計の部分を専門家に確認してもらえるようにしました。
税理士は、税金と会計の専門家
税理士へ依頼できる主な内容は、税務代理、税務書類の作成、税務相談などです。
日々の会計処理や決算、確定申告、年末調整などについて相談できる税理士事務所もあります。
また、多くの会社を見てきた税理士であれば、数字を通じて経営上の助言をしてくれることがあります。
私も、決算書や貸借対照表などを見ながら、
「数字だけで見ると、現在の会社はこのような状態です」
と説明してもらった経験があります。
自分では売上ばかり見ていても、税理士は、
現金がどの程度残っているか。
借入金が増えていないか。
利益率はどう変わっているか。
人件費がどの程度を占めているか。
納税へ備えた資金があるか。
といった別の角度から見てくれます。
こうした話は、今後も経営を続けていくうえで勉強になりました。
労務の専門家は、基本的には社会保険労務士
私は過去に、スタッフを雇った際の疑問や労務に近い内容を、顧問税理士へ相談したこともあります。
税理士によっては、一般的な情報を教えてくれたり、提携している社会保険労務士を紹介してくれたりします。
ただし、税理士は基本的に税務と会計の専門家です。
社会保険や労働保険の手続き。
就業規則。
雇用契約。
労働時間。
有給休暇。
給与規程。
こうした労務管理の専門家は、社会保険労務士です。
税理士に質問してはいけないという意味ではありません。
ただ、内容によって専門家を使い分けた方が、正確な回答を得やすくなります。
税金や会計は税理士。
社会保険や労務管理は社会保険労務士。
契約や紛争などの法律問題は弁護士。
自分が何を相談したいのかによって、適切な相手を選ぶことも経営者の仕事です。
AIは便利でも、最終確認が必要な分野がある
現在は、税金や社会保険について、AIへ質問することもできます。
制度の概要を知る。
必要な手続きを一覧にする。
専門家へ質問する内容を整理する。
就業規則や評価制度のたたき台を作る。
こうした使い方では、AIはとても便利です。
私自身も、AIを使いながら会社の仕組みを作ることがあります。
ただし、税金や労務の制度は、法律の改正や会社の状況によって扱いが変わります。
雇用人数。
労働時間。
給与の支払い方。
事業形態。
就業規則の内容。
これらによって判断が異なることがあります。
AIで概要を理解し、実際の手続きや重要な判断は専門家や行政機関へ確認する。
この使い方が安全だと思います。
専門家へ丸投げしても、経営者の責任はなくならない
税理士と契約したから、税金のことは何も知らなくてよい。
社会保険労務士へ依頼したから、給与や労働条件はすべて任せればよい。
そういうことではありません。
最終的に会社を経営し、スタッフを雇っているのは経営者です。
専門家から、
「この処理が必要です」
「このままでは問題があります」
「この時期に支払いが発生します」
と説明された時に、判断するのは経営者です。
最低限の知識がなければ、質問もできません。
自分の会社にとって何が重要なのかも判断できません。
だからこそ、すべて自分でやる必要はなくても、仕組みは理解しておいた方がよいと思います。
税理士へ依頼するかは、時間とリスクで考える
開業したばかりで売上も少なく、取引も単純であれば、自分で申告することは十分可能だと思います。
現在は会計ソフトも使いやすくなっています。
自分で行うことで、税金や経費について学べます。
一方で、売上が増える。
スタッフを雇う。
給与や賞与を支払う。
複数の事業を始める。
法人化を検討する。
このように会社が複雑になるほど、経営者がすべて処理する負担も増えます。
申告作業に使う時間。
制度を調べる時間。
間違えた場合のリスク。
その時間を患者さんやスタッフ、経営判断へ使った場合の価値。
そこまで考えて、専門家へ依頼するかを判断します。
顧問料がかかるから依頼しないというだけではなく、自分で抱えることによって発生する時間とリスクも費用として考えた方がよいと思います。
賞与を出せる会社であり続けることが大切
スタッフに賞与を支給すると、喜んでもらえます。
経営者としても、日頃の感謝を形にできたと感じます。
ただ、賞与を支給すること自体が目的になってはいけません。
無理に賞与を出して、会社の現金がなくなる。
納税や社会保険料の支払いに困る。
その後の給与支払いが苦しくなる。
これでは、スタッフを守ることにはつながりません。
会社の利益と手元資金を確認する。
賞与にかかる社会保険料や税金も計算する。
今後の支払い予定を確認する。
そのうえで、無理のない範囲で還元することが大切です。
今年だけ大きな金額を支給するよりも、会社を安定させ、今後もスタッフへ還元できる状態を作る。
経営者としては、そちらの方が大切だと思っています。
固定給と賞与には、それぞれ役割がある
固定給は、スタッフの生活を安定させるものです。
毎月決まった収入があることで、安心して働けます。
賞与は、会社の業績や本人の貢献を、通常の給与とは別に還元する方法の一つです。
どちらか一方だけが正しいわけではありません。
固定給を低くしすぎ、賞与がなければ生活できない設計では、スタッフは安心できません。
反対に、会社の体力を超えて固定給を上げれば、経営が悪化した時に雇用を守れなくなる可能性があります。
スタッフが安心できる固定給。
会社が継続して支払える固定給。
業績や貢献を適切に反映できる賞与。
このバランスを考えることが、給与設計だと思います。
スタッフを雇ったら、経営者も学び続けなければならない
スタッフを雇うと、経営者の責任は大きくなります。
給与を支払う。
賞与を計算する。
税金を預かり、納める。
社会保険の手続きをする。
有給休暇や勤怠を管理する。
働きやすい環境を整える。
どれも、施術技術とは別の知識です。
自分は施術者だから、税金や労務は分からなくても仕方がない。
それでは、スタッフを雇う経営者としては足りません。
すべてを専門家と同じ水準まで理解する必要はありません。
しかし、何を知らなければならないのか。
どこから先は専門家へ相談すべきなのか。
その判断ができる程度には、勉強を続ける必要があります。
自分で学び、必要なところは専門家の力を借りる
私は、一人で事業をしていた時には、自分で青色申告を行いました。
その経験によって、税金や会計の基本を学べました。
スタッフを雇う段階では、自分のミスによってスタッフへ迷惑をかけないように、顧問税理士と契約しました。
そして、労務について詳しい確認が必要な場合には、社会保険労務士など、その分野の専門家へ相談する必要があると考えています。
現在はAIもあります。
電子申請もあります。
以前よりも、経営者が自分で調べ、手続きを行いやすい時代になりました。
ただし、便利になったことと、責任が軽くなったことは別です。
知らないまま人を雇うのではなく、まず自分で学ぶ。
間違えてはいけない部分は、専門家へ確認する。
そして、会社が安定して続く範囲で、スタッフへきちんと還元する。
固定給と賞与の設計も、税理士と契約するタイミングも、最終的にはスタッフの生活と会社の継続をどう守るかという話だと思います。
経営者にとって都合がよい仕組みを作るのではなく、スタッフが安心でき、会社も無理なく続けられる形を考える。
私自身も、失敗や経験を重ねながら、今後も少しずつより良い形へ修正していきたいと思っています。

ここまで読んで、
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体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。
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