採用を考える時、
「どんな人を採ったらいいんだろう」
から考える方は多いと思います。
経験者がいいのか。
未経験者がいいのか。
若い人がいいのか。
即戦力がいいのか。
人柄を見るべきなのか。
技術を見るべきなのか。
考え始めると、いろいろ出てきます。
私自身も、
「どういう人を採るべきなんだろう」
から考えると、少し頭の中がまとまらなくなることがあります。
だから私は、逆から考えることがあります。
「自分は今後、何をやりたいのか」
そして、
「自分は何をやりたくないのか」
です。
そこが分かると、採用したい人の姿がかなり見えやすくなります。
まず「自分がどう働きたいか」を決める
採用の話なのに、なぜ最初に自分の話をするのか。
私は、ここがかなり大切だと思っています。
これから会社をどうしていきたいのか。
自分自身はどんな仕事に没頭したいのか。
一日の中で、どんな仕事をしている時間を増やしたいのか。
逆に、どういう働き方はしたくないのか。
そこが曖昧なまま人を雇うと、
「とりあえず忙しいから一人ほしい」
という採用になりやすいんですよね。
でも一人採用すると、当然人件費が発生します。
教育も必要です。
マネジメントも必要です。
だったら、ただ人数を増やすのではなく、
「この人が入ったら、自分は何に時間を使えるようになるのか」
まで考えた方がいいと思っています。
「何が得意か」より「何が嫌か」の方が見つけやすいこともある
自分の得意なことを聞かれても、意外と答えづらいことがあります。
私自身もそうです。
「あなたの強みは何ですか?」
と言われても、
「うーん」
となる。
でも逆に、
「何をしている時が一番ストレスですか?」
と聞かれれば、結構すぐ出てきませんか。
この作業は嫌だ。
これは時間がかかる。
これは毎回後回しにしてしまう。
これをしている時は、本当に気が重い。
そういう仕事です。
私は、そこを採用のヒントにしてもいいと思っています。
自分がやりたくない仕事を、得意な人に渡せばいい
例えば、自分がパソコン関係の作業をものすごく苦手だとします。
予約表の管理。
資料作成。
データ整理。
SNS。
ホームページ。
簡単な業務効率化。
こういうものを触るたびにストレスを感じる。
だったら、
「パソコンをある程度扱える人がほしい」
という採用条件が一つ出てきます。
次に、
「その仕事をお願いするなら、どういうタイプの人が向いているだろう」
と考えます。
細かい作業が苦にならない人。
新しいツールを触ることに抵抗がない人。
自分で調べることが好きな人。
整理することが得意な人。
こうやって、少しずつ人物像が見えてきます。
「優秀な人がほしい」ではなく、「自分が手放したい仕事を気持ちよくやれる人がほしい」と考える。
この方が、私は採用基準を作りやすいです。
そこから採用ペルソナを作っていく
例えば、
「現場の施術は自分が教えられる」
「でもパソコンや業務整理は自分より得意な人がほしい」
となったとします。
そうしたら、採用したい人のイメージも変わります。
施術経験10年の人でなくてもいい。
施術経験はまだ浅い。
でも、ITに抵抗がない。
新しいことを覚えるのが好き。
整理整頓が得意。
会社の理念にも共感している。
そういう人の方が、今の会社には合うかもしれません。
これが、採用のペルソナを逆算して作るということだと思っています。
小さい会社には「部署」がない
整体院、鍼灸院、訪問マッサージなどの小規模事業では、基本的に現場の施術者が中心です。
一般的な会社のように、
営業部。
マーケティング部。
人事部。
総務部。
IT担当。
そういう部署を一つずつ作れる規模ではありません。
でも、仕事自体はあります。
採用もしなければいけない。
集客もしなければいけない。
SNSもある。
ホームページもある。
カルテ管理もある。
勤怠管理もある。
経営数字も見なければいけない。
だから、小さな会社では、
部署を作る代わりに「この人はこの分野が得意」という人を少しずつ増やしていく。
私は、そんな感覚で組織を作っています。
施術者なのにパソコンが得意な人は、結構ありがたい
私自身、整体院や訪問マッサージ、鍼灸院のような現場中心の仕事では、パソコンやITに抵抗がない人は結構貴重だと思っています。
もちろん、全員が高度なITスキルを持つ必要はありません。
ただ、
「こういう作業、もっと楽にできませんか?」
と考えられる。
ちょっと調べてみる。
AIを使ってみる。
Googleフォームを触ってみる。
データをまとめてみる。
そういう人が一人いるだけで、会社全体がかなり楽になる可能性があります。
これも単純な施術経験だけを採用基準にしていたら、見落とす能力ですよね。
採用では「足りない能力」を補ってもらう考え方もある
経営者がすべての分野で一番優秀である必要はありません。
むしろ、
「これは自分よりこのスタッフの方が上手」
というものが増えた方が会社としては強いと思っています。
パソコンならこの人。
新人教育ならこの人。
患者さんへの説明ならこの人。
スケジュール調整ならこの人。
技術練習ならこの人。
そうやって、それぞれの強みを使う。
経営者自身は、自分が一番価値を出せる場所へ時間を使う。
この方が、人数が増えた意味も出てきます。
「未経験者と経験者、最初に雇うならどちらがいいですか?」
以前、同業の方から質問されたことがあります。
「初めて人を雇うなら、未経験者と経験者のどちらがいいですか?」
という質問でした。
これも、私は一概にどちらとは言えないと思っています。
どちらにもメリットと大変さがあります。
ただ、一人目の採用では特に、
「その人を経営者自身がマネジメントできるか」
という視点が大切だと思っています。
経験が長い人なら安心、とは限らない
経験者のメリットは分かりやすいです。
基本的な現場経験がある。
患者さんへの対応もある程度知っている。
施術についても一から全部教えなくていい。
即戦力になりやすい。
一人目としては非常に魅力的です。
ただ、経験が長い人なら誰でもいいかというと、私はそうは思いません。
長く働いてきた中で、自分なりのやり方がかなり固まっている人もいます。
成功体験もあります。
前の会社では、その方法で評価されていたかもしれません。
そこへ、
「うちではこういう考え方で患者さんを見ています」
と伝えた時に、柔軟に受け入れられる人もいれば、そうではない人もいます。
ここは年齢の問題ではありません。
見るべきなのは、年齢ではなく「これまでの経験を持ちながら、新しい考え方も受け入れられるか」だと思っています。
経験者採用で私が気にするのは「教えにくい相手ではないか」
例えば、経営者自身が、
「この方に自分から何か伝えるのはちょっと言いづらいな」
と最初から感じる。
それは少し考えた方がいいと思います。
一人目のスタッフは、入社後にかなり細かく話をすることになります。
会社の考え方。
患者さんへの対応。
報告方法。
施術。
接遇。
働き方。
当然、
「ここは直してほしい」
という話もします。
その時に、経営者側が遠慮して何も言えない相手だと、かなりやりづらいです。
だから、経験年数そのものより、
「お互いにフィードバックをしやすい関係を作れそうか」
を見る方が大切だと思っています。
一方、完全未経験にも当然リスクがある
では未経験者ならいいのか。
そう簡単でもありません。
完全に未経験であれば、当然一から教える必要があります。
施術。
問診。
患者さんへの接し方。
説明。
安全管理。
予約対応。
現場で起きるいろいろなこと。
一人目から全部教えるとなると、経営者の負担もかなり大きくなります。
そして、店舗型の整体院や鍼灸院では、患者さんの評価に直接つながります。
一人目のスタッフは、そのまま院の評判になる
特に小さい整体院では、スタッフ一人の接客や施術が、そのまま院の評価になりやすいです。
患者さんからすれば、
「新人だから仕方ない」
ではなく、
「この整体院はこういうところなんだ」
と見ます。
対応が悪ければ、院の評価になります。
施術に不満があれば、それも院の評価になります。
だから一人目を完全未経験で採るのであれば、任せるまでの教育をかなり丁寧にやる必要があります。
店舗型では口コミが経営にかなり大きく影響する
私は、店舗型の整体院や鍼灸院では口コミは非常に大切だと考えています。
良い口コミが増える。
患者さんから紹介が起きる。
新しい患者さんが、来院前からある程度安心してくれる。
そうなれば、集客も少しずつ楽になります。
紹介が増えれば、広告だけに頼る必要も減っていきます。
そして何より、
「患者さんからこれだけ評価してもらえている」
ということは、経営者自身の自信にもなります。
だから最初のスタッフ教育を雑にして、院の評判を落とすことは避けたい。
未経験者を採るなら、そこまで含めて会社側が責任を持つ必要があります。
では、一人目は「完璧な経験者」を探せばいいのか
ここで、もう一つ現実があります。
小さい会社が、理想通りの人を採用できるとは限りません。
これは、私自身もかなり感じています。
まだ会社名もほとんど知られていない。
研修制度も大企業ほど充実していない。
キャリアパスだってこれから作る段階。
福利厚生も大企業と比べれば限界があります。
その状態で、
「経験豊富で、技術が高くて、理念にも共感して、性格もよくて、すぐ売上を作れて、マネジメントまでできます」
という人だけを待っていたら、なかなか採用できません。
小さい会社ほど「完成された人を探す」より「一緒に育っていける人を探す」という視点も必要だと思っています。
優秀な人ほど大手を選ぶ、とは限らない。でも小さい会社には別の戦い方が必要
知名度や待遇、教育制度などでは、大きな会社に強みがあります。
求職者からすれば、名前を知っている会社の方が安心感を持ちやすいこともあります。
だから、小さい会社が同じ条件だけで勝負するのは簡単ではありません。
ただ、小さい会社には小さい会社の良さもあります。
経営者と直接話せる。
自分の意見が会社へ反映されやすい。
裁量を持ちやすい。
会社が成長していく過程を経験できる。
自分自身の役割を作っていける。
そういう環境を好む人もいます。
だから、
「優秀な人は来ない」
と諦めるのではなく、
「大手とは違う何を魅力として見せるのか」
を考えた方がいいと思っています。
それでも「完璧な人が来るまで採らない」は難しい
ただ、理想を上げすぎると採用できません。
これはかなり現実的な問題です。
この技術ができる。
この資格がある。
経験何年以上。
コミュニケーション能力も高い。
理念にも共感。
パソコンもできる。
将来は責任者もできる。
全部を求め始めたら、対象者はものすごく少なくなります。
だから私は、
「何が絶対に必要なのか」
「何なら入社後に教えられるのか」
を分けた方がいいと思っています。
採用基準は「絶対に必要」「あれば嬉しい」「教えられる」に分ける
例えば私なら、価値観はかなり重要です。
患者さんを大切にしたいという考え。
学ぶ姿勢。
人の話を聞けること。
こういった部分は、採用前にかなり見ます。
一方で、施術経験は教えられます。
訪問マッサージ未経験でも教えられる。
会社独自の考え方も入社後に伝えられる。
パソコンが得意なら嬉しい。
責任者経験があればさらに嬉しい。
そういう感じです。
全部を必須条件にしない。
これだけでも、かなり採用しやすくなります。
そして結局、入社したスタッフは必ず何かしらミスをする
これは、もう前提として考えた方がいいと思っています。
どれだけ面接しても、ミスはします。
経験者でもします。
未経験者ならなおさらします。
患者さんへの説明で言葉を間違える。
報告を忘れる。
時間配分を間違える。
判断に迷う。
経営者が、
「なんでこんなことも分からないんだ」
と思うことも出てきます。
でも、それを全部避けて採用することはできません。
一人目を雇うなら「ミスした時に自分がフォローする覚悟」が必要
少し言い方は悪いですが、私自身は、
「そのスタッフがミスした時に、自分がお尻を拭いてあげようと思えるか」
というのは、かなり大切だと思っています。
患者さんへ謝る必要があれば、経営者が謝る。
もう一度説明が必要なら、自分がフォローする。
スタッフが分かっていなかったなら、教える。
仕組みの問題なら、仕組みを直す。
採用した以上、最終的な責任は経営者側にあります。
「ミスしない人を採る」ではなく、「ミスした時に一緒に修正できる人を採る」という見方も必要だと思っています。
失敗した時に「採用失敗だった」で終わらせない
スタッフがミスをすると、
「この人を採用したの失敗だったかな」
と思うこともあります。
でも、一回のミスだけでは分かりません。
なぜそうなったのか。
教えていなかったのか。
説明が足りなかったのか。
本人の判断だったのか。
仕組みが悪かったのか。
そこを見る必要があります。
以前の記事でも書きましたが、スタッフを雇うと、経営者自身の未熟なところもかなり見えてきます。
「これ、説明してなかったな」
「自分では当たり前だと思ってたけど、スタッフには分からないよな」
ということが本当にたくさんあります。
一人目を雇うということは「人を完成品として買う」ことではない
個人事業主から初めて人を雇う時、つい、
「給与を払うんだから、これくらいできてほしい」
と思います。
その気持ちはよく分かります。
人件費は大きいですからね。
ただ、人を雇うというのは、完成品を購入することではありません。
その人なりの強みがあります。
弱みもあります。
会社に慣れる時間も必要です。
経営者の考え方を理解する時間も必要です。
特に最初の一人、二人は、会社自体に教育の仕組みもほとんどありません。
だから経営者側も、一緒に育つ覚悟が必要だと思います。
最初の採用ほど「自分が一緒に働きたいと思える人」を選ぶ
人数が少ないほど、一人の影響は大きいです。
以前の記事でも書きましたが、経営者一人の会社に一人入れば、その人は会社の半分です。
だから、経験年数だけで選ばない。
技術だけでも選ばない。
自分がフィードバックできるか。
理念を共有できるか。
ミスがあっても育てたいと思えるか。
一緒に話し合えるか。
そして、その人の強みが会社の弱い部分を補ってくれるか。
こういったところまで見た方がいいと思っています。
採用は「会社に足りないもの」と「経営者がやりたくないもの」から考えてもいい
人を採ろうとすると、求職者ばかり見てしまいます。
でも、一度会社側を見てみてください。
今、一番時間が取られている仕事は何か。
一番ストレスを感じる仕事は何か。
自分がもっと時間を使いたいことは何か。
会社に明らかに足りない能力は何か。
スタッフにいてくれたら助かるタイプはどんな人か。
そこから、
「じゃあ、どんな人を採ればいいんだろう」
と考える。
その方が採用基準はかなり具体的になります。
経営者自身の強みが、採用できる人材の幅を決める
私は前回、理念に共感してくれるのであれば、経験が浅くても採用をかなり前向きに考えると書きました。
それができるのは、私自身が現場教育を苦に感じないからです。
もし私がスタッフ教育を本当に嫌いだったら、同じ採用基準にはしていません。
もっと経験者を求めると思います。
つまり、
経営者自身が何をできるのか。
何を教えられるのか。
何をしたくないのか。
そこによって、採るべき人は違います。
自分の強みが分かれば、「相手に求めなくてもいい能力」が分かります。
自分の弱みが分かれば、「相手に持っていてほしい能力」が分かります。
採用基準というのは、その組み合わせで作ってもいいのではないかと思っています。
「どんな人を採るべきか」で迷ったら、自分を見る
採用で迷った時、私はまず求職者を見るのではなく、自分を見ることがあります。
これから何をしたいのか。
どう働きたいのか。
何を手放したいのか。
何なら教えられるのか。
何を教えるのは苦手なのか。
どんな人となら気持ちよく働けるのか。
そこが分かると、採用したい人の姿も少しずつ見えてきます。
経験者か未経験者か。
年齢はいくつか。
資格はいくつあるか。
そういう条件だけから始める必要はありません。
小さい会社だからこそ、
「自分たちの会社に今何が必要なのか」
をかなり自由に考えられます。
そして、完璧な人が来るまで待つ必要もないと思っています。
足りないものがあれば教える。
ミスがあればフォローする。
その代わり、会社にない強みを持ってきてもらう。
そうやって少しずつ、一人では作れなかった会社にしていく。
採用というのは、優秀な人を探すことではなく、「自分一人では作れない会社を一緒に作れる人」を探すことなのかもしれません。

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