スタッフを雇うようになると、どこかのタイミングでマニュアルを作ろうかなと考えると思います。
一人、二人くらいであれば、経営者が直接説明するだけでも何とかなります。
でも、二人、三人とスタッフが増えてくると、
「これ、毎回同じ説明してるな」
という部分が出てきます。
そのあたりから、マニュアルを作る意味が出てくると思っています。
ただ、そこで悩むのが、
「どこまでマニュアルにすればいいんだろう」
ということですよね。
私自身も最初はそうでした。
最初から、
「ちゃんとしたマニュアルを作ろう」
と思うと、逆に何を書いたらいいのか分からなかったんです。
だから私は、最初から完成されたマニュアルを作るのではなく、実際にスタッフへ教えながら、必要な部分だけを後からマニュアルにしていきました。
私の場合、マニュアル化する基準は大きく二つです。
全員に必ず説明すること。
そして、万が一起きた時に判断を間違えると困ること。
基本的には、この二つを中心に作っています。
最初から完璧なマニュアルを作ろうとしなくていい
人を初めて雇う時に、
「まずマニュアルを全部作ってから採用しよう」
と考える方もいるかもしれません。
もちろん、それができるのであればいいと思います。
ただ、実際に一人で経営してきた方の場合、自分の仕事をすべて言語化するのはかなり大変です。
普段は感覚的にやっていることも多いからです。
患者さんへの挨拶。
施術前の確認。
説明の仕方。
報告するタイミング。
何か起きた時の対応。
経営者自身は何年も繰り返しているので、もう考えなくてもできます。
でも、それを初めて働くスタッフへ説明しようとすると、
「あれ、これってどう説明したら伝わるんだろう」
となります。
私自身もそうでした。
まずは実際に教えてみて、スタッフの反応を見る
私が最初にやったのは、マニュアルを作ることではありませんでした。
まず、スタッフへ実際に説明しました。
一人目に説明する。
その反応を見る。
「ここは分かりにくそうだな」
と思ったら、説明の仕方を変える。
二人目に説明する。
また質問が出る。
そこで、さらに言い方を変える。
三人目に説明する。
そこでようやく、
「この部分は、この説明の仕方なら伝わりやすいな」
という形が見えてきます。
そうなったものを、マニュアルとして残しました。
マニュアルは最初に作るものというより、何度も説明した結果、固まってきたものを残す感覚の方が、私は作りやすかったです。
「毎回説明していること」はマニュアルにした方がいい
二人、三人とスタッフを雇った経験がある方であれば、一度振り返ってみると分かりやすいと思います。
新人が入るたびに、必ず説明していることは何でしょうか。
毎回同じように話していること。
毎回同じ質問をされること。
忘れられると困ること。
そこは、マニュアルにした方がいいと思います。
例えば、
「患者さんへの最初の挨拶はこうする」
「料金について聞かれたら、この範囲まで説明する」
「体調に大きな変化があったら必ず報告する」
といったことです。
経営者が毎回同じ内容を一から説明するよりも、最初に資料を見てもらい、その後で補足する方が効率も良くなります。
施術だけをマニュアルにすればいいわけではない
整体院、鍼灸院、訪問マッサージなどでマニュアルというと、まず施術内容を思い浮かべる方が多いと思います。
マッサージの方法。
ストレッチ。
鍼灸。
評価の方法。
施術の流れ。
もちろん、こうしたものは必要です。
ただ、私はそれだけでは足りないと思っています。
技術はできても、会社として大切にしていることが分からなければ、判断がばらばらになるからです。
理念・使命・ビジョンも共有しておく
私のところでは、会社の理念や使命、ビジョンについても説明します。
なぜこの会社をやっているのか。
患者さんに対して何を大切にしているのか。
どのような会社にしていきたいのか。
こうした部分です。
これは、単純に格好いい言葉を覚えてもらうためではありません。
現場で迷った時の判断基準になるからです。
例えば、二つの対応方法で迷った時に、
「患者さんを大切にするという会社の考え方なら、どちらを選ぶか」
と考えられるようになります。
細かい場面をすべてマニュアルにすることはできません。
だからこそ、会社が何を大切にしているかという土台を共有しておくことには意味があります。
接遇は全員で最低限そろえた方がいい
もう一つ、マニュアル化した方がいいと思っているのが接遇です。
挨拶。
言葉遣い。
患者さんのお宅へ入る時の振る舞い。
時間の守り方。
患者さんやご家族への説明。
これは、スタッフによって大きく違うと会社として困ります。
もちろん、人それぞれの個性はあっていいと思っています。
話し方まで全員同じにする必要はありません。
ただ、最低限、
「この会社のスタッフであれば、ここまではできる」
という基準はそろえておいた方が、患者さんも安心できます。
料金やサービス内容は必ず統一しておく
料金に関わる部分も、マニュアル化しておいた方がいいです。
これはスタッフによって説明が違ってしまうと、患者さんからすると不信感につながります。
あるスタッフには、
「これは無料です」
と言われた。
別のスタッフには、
「これは料金がかかります」
と言われた。
こうなると困りますよね。
だから、
料金。
支払い方法。
キャンセル。
サービスの範囲。
保険を使う場合の説明。
会社として統一した説明が必要な部分は、明文化しておいた方がいいと思います。
「めったに起きないけれど、起きたら困ること」もマニュアルにする
そして、もう一つ重要だと思っているのが、万が一の時のマニュアルです。
普段はほとんど使いません。
でも、いざ起きた時にスタッフが迷うと困ることです。
うちの場合、訪問マッサージなので、例えば移動中の事故があります。
バイクや原付で移動しますから、交通事故が起こる可能性はゼロではありません。
事故が起きた時に、
「社長に電話したけど出なかったから、どうしたらいいか分からない」
では困ります。
まず何をするのか。
誰に連絡するのか。
警察へ連絡するのか。
患者さんの予定はどうするのか。
会社には何を報告するのか。
こうした部分を決めています。
熱中症など、緊急性のある事柄も準備しておく
訪問という仕事では、暑い時期に外を移動します。
そのため、熱中症についても対応を用意しています。
スタッフ自身が移動中に具合が悪くなる可能性もあります。
患者さんのお宅で、患者さんの体調が急変することもあります。
その時に、
「こういう場合はどうするんだっけ」
と考えている余裕がないこともあります。
だから、頻繁には起こらなくても、起きた時に安全へ関わるものはマニュアルとして残します。
普段使うマニュアルと、非常時に見るマニュアル。
この二種類を分けて考えると、整理しやすいと思います。
マニュアルは多ければ多いほどいいわけではない
ここは、私自身かなり大切にしている部分です。
マニュアルは、細かく作ろうと思えばいくらでも作れます。
患者さんへこう言われたらこう答える。
この状況ならこうする。
この場合はこれ。
全部決めようと思えば、どんどん増えていきます。
ただ、私はそこまで細かくしたいとは思っていません。
理由は、ある程度スタッフ自身に考えて判断してほしいからです。
以前の記事でも書きましたが、私はスタッフにある程度裁量を渡しています。
何でもマニュアル通りにする会社にしてしまうと、スタッフが自分で考える場面が減ってしまいます。
マニュアルでスタッフを縛りすぎると、判断できなくなる
マニュアルが細かすぎると、スタッフは、
「これはマニュアルのどこに書いてありますか?」
という考え方になりやすくなります。
でも、患者さんを相手にする仕事では、毎回同じ状況はありません。
患者さんの性格も違います。
体調も違います。
家族構成も違います。
その日の状況も違います。
だから最終的には、スタッフ自身が考えなければならない場面があります。
すべてをマニュアルで決めるのではなく、
「ここは絶対に守る」
「ここから先は本人が判断する」
という線を作る方が、私は合っていると思っています。
マニュアルにするのは「答え」より「判断基準」でもいい
例えば、
「患者さんからこう言われたら、この言葉を返してください」
と全部決める方法もあります。
でも私は、場合によっては、
「こういう時には患者さんの安全を最優先する」
「迷った場合には無理をしない」
「会社として判断が必要な内容は一人で決めずに報告する」
という判断基準を共有する方が使いやすいと思っています。
それなら、マニュアルに書かれていない状況が起きても応用できます。
経営者が何を見て判断しているのかを伝える。
これも、十分マニュアルの一部だと思います。
同じ質問を三回されたら、マニュアル化を考えてみる
私は、スタッフから何度も同じ質問が出る部分も、マニュアル化を考えるポイントだと思っています。
一人目から聞かれた。
二人目からも聞かれた。
三人目も同じところで迷った。
そうなれば、スタッフ側の問題というより、会社の説明が分かりづらい可能性があります。
そこで、
「なんで毎回ここを聞くんだろう」
ではなく、
「ここは最初から資料にしておいた方がいいな」
と考えます。
マニュアルを作るということは、経営者の説明を楽にするだけではありません。
新人スタッフが迷う時間を減らすことでもあります。
ミスが繰り返される部分も、仕組みに変える
同じように、スタッフが繰り返しミスする部分もマニュアル化する候補です。
もちろん、本人の注意不足の場合もあります。
ただ、複数人が同じ間違いをするのであれば、仕組みの問題かもしれません。
そこで、
チェックリストを作る。
手順を残す。
注意点を書く。
誰に報告するか明確にする。
そうすれば、同じミスが起きにくくなります。
問題が起きた時にマニュアルを一つ追加する。
この繰り返しによって、会社の仕組みも少しずつ強くなります。
ただ、一回しか起きていないことを全部ルールにしない
逆に、何か一度問題が起きるたびに、すぐ新しいルールを作るのも私はあまり好きではありません。
一人のスタッフが一度だけ特殊なミスをした。
そのたびに、全員へ細かなルールを追加する。
これを繰り返すと、どんどんルールが増えます。
最終的には、誰も全部覚えられなくなります。
だから、
「これは全員に起こる可能性があるのか」
「今後も繰り返す可能性があるのか」
「安全や信頼に大きく関わるものなのか」
を考えてからマニュアル化します。
一つ問題が起きたからルールを増やすのではなく、会社全体に残す価値があるかを考えることが大切です。
マニュアルは新人スタッフの安心材料にもなる
経営者側からすると、マニュアルは業務を統一するためのものに見えます。
ただ、新しく入ったスタッフからすると、安心材料でもあります。
新しい会社に入ると、何が正解なのか分かりません。
これは聞いていいのか。
誰に相談すればいいのか。
こういう場合はどうするのか。
一つひとつ不安があります。
そこで、最低限のルールや流れが書いてあれば、
「まずここを確認すればいいんだ」
と思えます。
マニュアルは、スタッフを管理するためだけではなく、迷わず働ける環境を作るものでもあると思っています。
紙ではなく、いつでも見られる場所に置いておく
そして、作ったマニュアルは、スタッフがいつでも確認できる状態にしておいた方がいいです。
うちではクラウド上に置いています。
スマートフォンでも確認できます。
何か分からないことがあった時に、
「会社に戻らないと見られない」
では、訪問の仕事では使いにくいです。
現場で、必要な時に確認できる。
最新版が全員に共有される。
変更したらすぐ反映される。
こうした意味でも、オンライン上に置く方が管理しやすいと思っています。
更新されないマニュアルは、だんだん意味がなくなる
マニュアルは、一度作って完成ではありません。
会社の仕組みは変わります。
スタッフも増えます。
料金が変わることもあります。
法律や制度が変わることもあります。
以前は正しかった対応が、今は合わないということもあります。
だから、必要があれば修正します。
新人スタッフから、
「この説明、ちょっと分かりにくいです」
と言われたら変えてもいいと思います。
実際に使う人が分かりにくいのであれば、マニュアルとして機能していないからです。
マニュアルを作る目的は、経営者と同じ人を作ることではない
私は、マニュアルの目的を、スタッフを経営者のコピーにすることだとは考えていません。
患者さんへの話し方まで同じ。
施術の細かな順番まで同じ。
判断方法も全部同じ。
そこまで統一する必要はないと思っています。
会社として守らなければならない部分。
患者さんの安全に関わる部分。
料金など、説明が違うと困る部分。
理念や判断基準。
そこはそろえる。
でも、それ以外はスタッフそれぞれの良さを残したいです。
人によって説明の仕方も違います。
患者さんとの距離の取り方も違います。
施術の組み立てにも多少違いがあります。
そこに個性があっていいと思っています。
最低限を決めて、それ以外は任せる
結局、私がマニュアルを作る時に一番意識しているのは、
「最低限どこまで決めれば、会社として困らないか」
ということです。
全部を決めるのではありません。
逆に何も決めないわけでもありません。
患者さんの安全。
会社の信用。
料金。
接遇。
事故や緊急時。
会社として絶対に大切にしている考え方。
ここは共通にする。
その線を守れているのであれば、あとはスタッフ自身に考えてもらう。
私は、このくらいのバランスが好きです。
マニュアルを作るなら、まず過去の新人教育を振り返る
これから初めてマニュアルを作ろうとしている方は、ゼロから項目を考えなくてもいいと思います。
まず、今まで新人へ何を説明してきたかを思い出してみてください。
一人目にも話した。
二人目にも話した。
三人目にも同じことを話した。
そこはマニュアルにしていい部分です。
次に、
「これが起きた時にスタッフが迷ったら危険だな」
というものを挙げます。
事故。
急変。
クレーム。
料金。
個人情報。
会社への報告。
そのようなものです。
そして最後に、
「これは本当に全員が同じにする必要があるのか」
を考えます。
必要なければ、無理にマニュアルにしなくてもいいと思います。
マニュアルは、会社が成長しながら一緒に育てればいい
人を雇い始めた時点で、完璧なマニュアルがなくてもいいと私は思っています。
私自身も、最初から全部揃っていたわけではありません。
スタッフへ説明する。
質問される。
説明を変える。
また新人が入る。
同じところで質問される。
じゃあ、ここは文章にしよう。
問題が起きる。
じゃあ、この対応も残しておこう。
そんな感じで少しずつ増えてきました。
マニュアルは、会社が完成してから作るものではなく、会社が成長する過程で積み上がっていくものだと思っています。
ただ、増やしすぎない。
スタッフを縛りすぎない。
全員に必ず伝えること。
万が一の時に迷わせたくないこと。
そこを中心に残す。
そして、それ以外はスタッフ自身に考えてもらう。
私自身は、そうやって最低限のマニュアルと、スタッフ自身の裁量を両立させる方が、会社としても働きやすいのではないかと思っています。

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