スタッフの短所は、本当に短所なのか|経営者が「いい面」を見る意味

スタッフと長く働いていると、当然ですが、その人のいい面も悪い面も見えてきます。

仕事が丁寧。

患者さんから信頼されている。

施術が上手。

周りをよく見て動いてくれる。

そういった分かりやすい長所もあれば、

「ここはちょっと困るな」

「なんでこのタイミングで、それを言うんだろう」

と思う部分もあります。

ただ、私は最近、スタッフの短所について考える時に、

その部分だけを切り取って「悪い」と判断しない方がいい

と思うようになりました。

なぜなら、短所だと思っている部分が、その人の長所と表裏一体になっていることがあるからです。

目次

実際に、少し空気を読むのが苦手なスタッフがいる

これは、実際にうちで働いているスタッフの話です。

本人には申し訳ないんですけれども、正直に言うと、少し空気を読むのが苦手な部分があります。

「今、この質問する?」

と思うようなこともあります。

私が一番驚いたのは、仕事中に電話をした時です。

私が、

「今どこにいるの?」

と聞いたら、

「道路の上です」

と返ってきました。

いや、そうなんだけど。

そういう意味じゃないんだけど。

思わずそんなことを考えるような返答でした。

こういうところだけを見ると、

「もう少し相手の意図を読んでほしいな」

と思います。

実際、患者さんとの相性でも、その部分が出ることがあります。

一年に一件か二件程度ですが、

「ちょっと、あの先生は……」

と言われてしまうことがあります。

患者さんとの仕事なので、もちろん軽く考えていい話ではありません。

本人にも必要なことは伝えます。

ただ、それだけを見て、

「このスタッフは問題がある」

と判断してしまうと、この人の大事な価値を見落としてしまうんですよね。

「空気を読まない」が、ミーティングでは大きな長所になる

このスタッフには、逆にすごくありがたい部分があります。

ミーティングの時です。

私が何か新しい仕組みについて説明したり、会社の方針について話したりしている時に、普通なら少し質問しづらい雰囲気になる場面があります。

例えば、内容が難しかった時。

私自身がちょっと忙しくて、余裕がなさそうに見える時。

他のスタッフが、

「これ聞いていいのかな」

と少し様子を見るような場面です。

そんな時でも、このスタッフは関係なく質問してくれます。

「これって、こういうことですか?」

と。

その質問が、まさにみんなが聞きたかったことの場合もあります。

逆に、

「いや、全然違うよ」

というくらい明後日の方向へ行っている時もあります。

でも、それでもいいんです。

一人が少しとんちんかんな質問をしてくれると、周りのスタッフからすると、一気に質問しやすくなるんですよね。

「あ、それ聞いていいんだ」

「じゃあ私も聞こう」

という空気になります。

そのスタッフがいることで、「分からないことを聞いても大丈夫」という文化ができているんです。

経営者がピリついている時に、空気を中和してくれる

これは私自身の反省でもあるんですけれども、経営をしていると余裕がなくなる時があります。

法改正への対応。

採用。

給与。

新しい仕組みづくり。

患者さんへの対応。

やらなければならないことが一気に重なると、どうしても少し雰囲気が硬くなってしまうことがあります。

自分では普通に話しているつもりでも、スタッフからすると、

「今日はちょっと社長に話しかけづらいな」

と感じていることもあると思います。

そこは、私自身が改善しなければならないところです。

ただ、そんな空気の中でも、そのスタッフは普段通りです。

普通に質問します。

場合によっては、少しずれたことも言います。

すると、空気が少し柔らかくなるんですよね。

他のスタッフからすれば、

「また変なこと言ってるよ」

くらいかもしれません。

でも、それによって場がほぐれます。

誰かが笑います。

質問もしやすくなります。

経営者としては、こういう存在って実はすごくありがたいんです。

短所と長所は、別々に存在しているとは限らない

人を見る時に、

「この人の長所はこれ」

「短所はこれ」

と分けたくなることがあります。

でも、実際にはそんなにきれいに分かれていないと思います。

例えば、慎重な人。

良く見れば、ミスが少ない。

悪く見れば、行動が遅い。

行動力のある人。

良く見れば、すぐ挑戦できる。

悪く見れば、少し雑なことがある。

何でも自分の意見を言える人。

良く見れば、主体性がある。

悪く見れば、周りとぶつかることがある。

人に気を遣える人。

良く見れば、周囲への配慮ができる。

悪く見れば、自分の意見を言えないことがある。

同じ特徴でも、場面によって長所にも短所にもなります。

今回のスタッフも同じです。

「空気を読みすぎない」

から、患者さんとの会話では調整が必要な場面がある。

一方で、同じ性質があるからこそ、社内では誰も聞けないことを普通に聞いてくれる。

どちらも同じ人です。

短所だけ切り取ると、その人の価値を見誤る

経営者になると、どうしてもスタッフのできていない部分が目につくことがあります。

遅刻した。

報告が足りなかった。

患者さんへの説明がうまくなかった。

掃除に気づかなかった。

こちらが期待した動きをしてくれなかった。

その時に、問題点だけを拡大して見てしまうと、

「この人は駄目だな」

という結論になりやすいです。

でも、一度少し引いて見てみると、別のものが見えることがあります。

患者さんからの信頼は非常に厚い。

後輩から相談されている。

誰かが困っている時には必ず助ける。

院内の雰囲気を明るくしている。

経営者が気づかないところで会社を支えている。

一つの短所だけで、その人全体を評価してしまうのは、すごくもったいないことです。

悪いところを見つけることは、それほど難しくない

人の悪いところを見ること自体は、それほど難しくありません。

一緒に働く時間が長ければ、必ず見えてきます。

私だって、スタッフから見れば、

「ここ直してほしいな」

と思われているところはいくらでもあると思います。

完璧な人なんていません。

だから、経営者がスタッフの欠点ばかり探し始めると、いくらでも見つかります。

そして一度、

「この人はここが駄目」

という目で見始めると、その後の行動まで全部悪く見えてくることがあります。

少し報告が遅れただけで、

「やっぱりこの人は駄目だ」

となる。

質問されても、

「また分かってない」

と思う。

本人が良かれと思って行動しても、悪く解釈してしまう。

ここまで来ると、お互いに苦しくなります。

経営者には「この人が会社にもたらしているもの」を見る視点が必要

私はスタッフを見る時に、最近は、

「この人は会社に何をもたらしてくれているんだろう」

ということも考えるようにしています。

売上を作ってくれている。

患者さんから信頼されている。

後輩を育てている。

場を明るくしている。

細かいことによく気づく。

困った時に率先して動いてくれる。

難しい患者さんでも丁寧に対応してくれる。

新人スタッフが質問しやすい空気を作っている。

全部、会社にとって価値です。

売上のように数字で表れるものだけではありません。

その人がいることで、周りの人が働きやすくなっている。

それも立派な価値だと思っています。

今回のスタッフは「質問できる会社」を作ってくれている

今回のスタッフについて、私が一番ありがたいと感じているのはここです。

このスタッフがいることで、

「分からなかったら聞いていい」

という空気ができています。

これは教育する会社にとって、かなり重要です。

スタッフが、

「こんなこと聞いたら馬鹿だと思われるかな」

「今質問したら怒られそうだな」

と思って質問しなくなる方が、私は怖いです。

分からないのに分かったふりをする。

そのまま患者さんのところへ行く。

間違った認識で仕事をする。

こっちの方が危険です。

だから、多少方向がずれた質問だったとしても、

「分からないことを普通に聞ける人」

が一人いることには、意味があります。

その人自身が質問するだけではなく、周囲の人まで質問しやすくしてくれるからです。

欠点を全部直せば、その人らしさまで消えることがある

スタッフ教育をしていると、欠点を直したくなります。

患者さんへの対応で問題があるなら、もちろん改善は必要です。

会社として守らなければならないこともあります。

ただ、何でもかんでも、

「もっと周りを見て」

「もっと空気を読んで」

「もっとこういう人になって」

と直そうとすると、その人本来の良さまでなくなることがあります。

今回のスタッフに、

「もっと場の空気を読んで、発言する前に何度も考えて」

と徹底的に教えたとします。

もしかしたら、患者さんとのトラブルは少し減るかもしれません。

でも同時に、ミーティングで質問しなくなるかもしれません。

私がピリついている時にも、黙るようになるかもしれません。

そうなったら、会社として失うものもあります。

短所を直す時には、その短所と一緒に存在している長所まで消してしまわないかを見る必要があります。

短所を消すより、問題になる場面だけ補う

だから私は、全部を矯正するよりも、問題になる場面だけを補う方がよい場合があると思っています。

例えば、患者さんとの会話では、

「こういう言い方をすると、相手には少し強く聞こえることがあるよ」

と具体的に伝える。

患者さんから指摘があった時には、一緒に振り返る。

どういう言葉を使えばよかったかを考える。

一方で、ミーティングでは、

「分からないことがあったら、今まで通り遠慮せず聞いて」

と伝える。

全部を変える必要はありません。

その人の良さを残しながら、問題になるところだけ少し調整していく。

この方が本人にとっても苦しくないと思います。

多少の弱点を、チームで補える会社の方が強い

個人的には、全員が何でも完璧にできる会社を作る必要はないと思っています。

人によって得意なことは違います。

患者さんとの会話がすごく上手な人。

施術について深く考えられる人。

細かい管理が得意な人。

新人へ教えるのが上手な人。

行動が速い人。

場を明るくできる人。

逆に、それぞれ苦手なこともあります。

だったら、苦手なところを他のスタッフが補えばいい。

今回のスタッフも、年に一件か二件程度、患者さんとの相性で難しいケースが出ることがあります。

それは会社として対応します。

必要であれば担当を変更することもできます。

ほかのスタッフでカバーすることもできます。

一方で、このスタッフが会社にもたらしてくれている価値は、それ以上に大きいと私は感じています。

だから、総合的に見れば、

「この人は会社に必要だな」

と思えるんです。

一つの欠点で人を切っていたら、会社から人がいなくなる

スタッフの一つの欠点だけを見て、

「この人は駄目」

と判断していけば、最後には誰も残らないと思います。

人には必ず癖があります。

経営者自身にもあります。

仕事がものすごく速いけれど、少し雑。

丁寧だけれど、時間がかかる。

患者さんから好かれるけれど、事務作業が苦手。

施術は上手だけれど、説明が苦手。

教育は上手だけれど、自分で売上を作るのはそれほど得意ではない。

それぞれです。

大事なのは、

「その弱点が会社として許容できる範囲なのか」

「ほかの人や仕組みで補えるのか」

「それ以上にどんな価値を会社へもたらしているのか」

を見ることだと思います。

もちろん、何でも長所として受け入れるわけではない

ここは、少し注意が必要です。

「短所も長所の裏返しだから、何でも許しましょう」

という話ではありません。

患者さんの安全を損なう行動。

何度伝えても報告しない。

嘘をつく。

周囲を傷つける。

会社のルールを意図的に守らない。

こういったことまで、

「それも個性だよね」

で済ませるわけにはいきません。

会社として守らなければならない最低限の基準はあります。

ただ、その基準を守れている中での個性や弱点については、もう少し広く見てもいいのではないかと思っています。

経営者の見方によって、同じスタッフが違って見える

同じスタッフでも、経営者がどこを見るかによって全く違う人に見えます。

空気が読めない。

患者さんとの相性で問題になることがある。

変な質問をする。

そこだけを並べれば、困ったスタッフに見えます。

でも、

誰も聞けない時に質問してくれる。

他のスタッフが発言しやすい空気を作ってくれる。

経営者がピリついている時に場を柔らかくしてくれる。

会社に「質問していい文化」を作ってくれている。

こちらを見ると、必要なスタッフになります。

どちらも事実です。

どちらか一方だけが本当なのではありません。

その人をどの角度から見るかによって、経営者自身の評価が変わります。

スタッフのいいところを見ることは、甘やかすことではない

スタッフのいいところを見るというと、

「欠点から目をそらす」

「甘やかす」

と感じる人もいるかもしれません。

私はそうは思いません。

問題は問題として伝えます。

患者さんからの指摘があれば、改善します。

必要な教育もします。

そのうえで、

「この人が会社で果たしてくれている役割は何だろう」

まで見る。

これは甘やかしではなく、評価の解像度を上げることだと思っています。

悪いところだけを見る方が、むしろ簡単です。

人を育てる立場であれば、

「この人は何が得意なのか」

「この特徴を、どこで活かせるのか」

まで考える必要があります。

人の配置を変えるだけで、短所が長所になることもある

人の特徴は、置く場所によって評価が変わります。

例えば、細かい確認が好きな人。

スピードを求められる現場では、

「遅い」

と評価されるかもしれません。

でも、カルテのチェックや事故防止の仕事では、非常に頼りになります。

とにかく人と話すのが好きな人。

事務仕事では集中力が続かないかもしれません。

でも、患者さんへの声かけや新人フォローでは力を発揮するかもしれません。

経営者の仕事は、全員を同じ型に当てはめることではなく、

「この人の特徴が一番活きる場所はどこだろう」

と考えることでもあると思います。

スタッフへのありがたみが増えると、自分自身も楽になる

スタッフのできていない部分ばかり見ていると、経営者自身もしんどくなります。

「またこれできてない」

「なんで気づかないんだ」

「何回言えば分かるんだ」

そんなことばかり考えながら働いていたら、自分も楽しくありません。

スタッフも、その空気を感じます。

反対に、

「この人がいるから、ここが助かってるな」

「この部分は本当にありがたいな」

という視点を持つと、同じ人を見ても感じ方が変わります。

必要な注意はします。

必要な教育もします。

でも、その根底に、

「この人には価値がある」

という見方があります。

その方が、経営者自身も楽に働けます。

スタッフとの会話も変わります。

評価制度でも、欠点を探すだけにしない

これはスタッフの評価制度にもつながると思っています。

評価表を作ると、できていないところに目が行きやすくなります。

この項目ができていない。

ここは点数が低い。

だから改善してください。

もちろん、それも必要です。

ただ、それだけの面談になると、スタッフからすると、

「自分のできていないところを探される時間」

になります。

そうではなくて、

「この部分は会社にとってすごく助かっている」

「あなたのこの行動のおかげで、後輩が質問しやすくなっている」

「ここはあなたの強みだから、今後も残してほしい」

と具体的に伝える。

そのうえで、改善してほしい部分を話す。

この方が、本人も、

「全部否定されているわけではない」

と分かります。

スタッフを育てるとは、弱点をなくすことだけではない

以前の私は、人を育てるというと、

「できないことをできるようにする」

というイメージが強かったように思います。

もちろん、それも教育です。

でも今は、

「その人の強みを見つけて、会社の中で活かせる状態にする」

ことも同じくらい大切だと思っています。

全員を同じ万能型にする必要はありません。

むしろ、違う人が集まっているから、チームで補い合えます。

一人では作れない会社になります。

短所が気になった時ほど、少し引いてその人全体を見る

スタッフと長く働いていると、必ず不満は出ます。

これは、お互い様だと思っています。

その時に、一つの出来事だけで判断しない。

「なんでこんなこともできないんだ」

と思ったら、一度少し引いてみる。

この人は、会社にどんな良さをもたらしているだろう。

この短所は、何か別の長所とつながっていないだろうか。

ほかのスタッフにはないものを持っていないだろうか。

問題になる部分は、仕組みや教育で補えないだろうか。

そこまで見てから判断する。

すると、

「ああ、この人がいてくれてよかったな」

と思えることがあります。

今回話したスタッフも、まさにそうです。

患者さんとの関係で少し難しいことが起こる時はあります。

でも、その人がいることで、社内の空気が柔らかくなっています。

スタッフが質問しやすくなっています。

私自身も、救われている部分があります。

人の悪いところだけを見るのは簡単です。

でも、経営者として大切なのは、その人が持っている特徴をもう少し俯瞰して見て、会社の中でどう活かせるかを考えることだと思っています。

短所を全部なくそうとするのではなく、必要なところだけ補う。

長所はちゃんと残す。

そして、お互いの弱いところはチームで補う。

そう考えられるようになると、スタッフへのありがたみも増えます。

そして何より、経営者である自分自身も、少し楽に、楽しく仕事ができるようになると思っています。

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