今回は、スタッフをどう見るかという、かなり私個人の価値観について書いてみようと思います。
私は、スタッフは会社の資産だと思っています。
もちろん、人を物のように扱うという意味ではありません。
むしろ逆で、時間をかけて育ち、患者さんとの信頼を積み重ね、会社の考え方を理解してくれている人は、簡単には代えがきかない存在だという意味です。
整体院、鍼灸院、訪問マッサージ、リラクゼーション。
こういった仕事は、設備だけでは成り立ちません。
最後に患者さんと向き合うのは、人です。
だから私は、人が育っていくこと自体が、会社に資産が積み上がっていくことだと考えています。
製造業なら機械、施術業なら人が価値を生む
例えば製造業であれば、商品を作るための機械があります。
高性能な機械を導入することで、生産量が増えたり、品質が安定したりします。
その機械は、会社にとって大切な資産ですよね。
飲食店でも同じです。
ある一定以上の料理を安定して作れるキッチンスタッフ。
常連のお客様の好みや名前を覚えていて、自然に対応できるホールスタッフ。
そういう人がいることで、お店の価値が作られます。
整体院や鍼灸院、訪問マッサージも同じだと思っています。
施術ベッドや鍼、車両なども必要です。
ただ、患者さんが最終的に信頼するのは、設備ではありません。
「この人なら体を任せられる」
と思ってもらえる施術者です。
この業界は、どうしても「人に患者さんがつく」
この仕事を長くしていると、やはり患者さんは人につくんだなと感じます。
技術が上手だからという理由だけではありません。
話し方。
表情。
立ち振る舞い。
施術中の気遣い。
説明の仕方。
約束を守ること。
毎回きちんと来てくれること。
以前話したことを覚えていること。
そういったもの全部を含めて、
「この人は信頼できる」
という感覚が作られていきます。
嫌な施術者であれば、患者さんは離れます。
合わないと思えば、担当を変えてほしいと言われることもあります。
反対に、何年も担当し続けているということは、それだけ信頼関係が積み重なっているということです。
その関係性は、お金を払えばすぐに買えるものではありません。
長く働いているスタッフほど、会社の中に信頼が蓄積される
新人スタッフと、5年働いているスタッフでは、同じ一人でも会社に蓄積されているものが違います。
5年間担当している患者さんがいる。
ご家族との関係がある。
ケアマネジャーから名前を覚えてもらっている。
患者さんの過去の経過を知っている。
会社の考え方も理解している。
ほかのスタッフの性格も分かっている。
問題が起きた時に、どこへ報告すればよいかも知っている。
この一つひとつは、決算書には載りません。
でも、会社にとってはものすごく大きな価値があります。
長く働くということは、その人の中に会社の経験値が蓄積されていくということでもあります。
一人の施術者を育てるには、かなり時間がかかる
スタッフを採用すれば、すぐに一人前になるわけではありません。
国家資格を持っていたとしても、会社の施術の考え方や患者さんへの対応は、それぞれ違います。
特に私のところでは、単純にマッサージだけを行うわけではありません。
患者さんの姿勢や筋骨格だけではなく、内臓や頭蓋骨など、さまざまな視点から体を考えることがあります。
そのため、新人スタッフには最初、
「何を言っているのか、よく分かりません」
と言われることがあります。
これは仕方ありません。
今まで使っていなかった見方だからです。
ただ、一年、二年と一緒に働いていると、少しずつ理解できるようになってきます。
以前であれば、こちらが、
「この患者さんの場合、ここも見た方がいいよ」
と言っても、なぜなのか分からなかった。
それが、何年かすると、
「この状態なら、ここも影響していそうですよね」
と会話ができるようになります。
この段階まで育つには、時間がかかります。
技術を教えるだけでも、経営者の時間をかなり使う
スタッフを育てるためには、当然ながら経営者側の時間も使います。
施術を見ます。
一緒に練習します。
患者さんの状態について話します。
なぜその施術をしたのか確認します。
説明の仕方を修正します。
患者さんへの対応について話します。
失敗があれば、その理由を一緒に考えます。
研修や勉強会の時間も作ります。
その時間に経営者自身が患者さんを施術していれば、売上を作ることもできます。
つまり、教育には目に見える費用だけでなく、経営者の時間という投資もあります。
採用費や給与だけが、人材への投資ではない
一人のスタッフが会社で働けるようになるまでには、いろいろなコストがかかります。
求人広告。
採用活動。
面接。
給与。
社会保険。
研修。
同行。
技術練習。
マニュアルや仕組みづくり。
経営者や先輩スタッフが教える時間。
これら全部を考えると、一人のスタッフが育つまでには、かなりの投資をしています。
だから、やっと一人で患者さんを任せられるようになったスタッフが辞めるということは、単に、
「一人減った」
ではありません。
これまで会社が積み重ねてきた時間や経験まで、一部失われるということです。
離職を単なる「人件費削減」と考えるのは危険だと思う
経営が苦しくなると、人件費が大きく見えます。
実際、人件費は会社の支出の中でも大きな割合を占めます。
そのため、
「一人辞めたら、給与を払わなくて済む」
と数字だけを見ることもできます。
ただ、この業界では、それだけでは見えないものがあります。
そのスタッフを指名していた患者さん。
そのスタッフに相談していた後輩。
その人しか知らない患者さんの細かな変化。
長年かけて作った患者さんとの信頼。
会社の中で共有されていた知識。
こうしたものまで失う可能性があります。
だから、人件費としてだけスタッフを見ると、判断を間違えることがあると思っています。
スタッフを資産と考えると、教育への見方が変わる
スタッフを単なる人件費として見るのか。
それとも、育つほど価値が増していく資産として見るのか。
この違いで、経営者の行動も変わります。
人件費としてだけ見ると、
「できるだけ安く雇いたい」
「早く売上を作ってほしい」
「研修時間を短くしたい」
という方向へ行きやすくなります。
資産として見ると、
「この人が3年後にどこまで育ったら会社にとって大きな存在になるだろう」
と考えるようになります。
研修へ時間を使う。
勉強できる環境を作る。
新しい役割を渡す。
本人が成長できる機会を作る。
短期的な売上だけではなく、長期的な成長を見るようになります。
ただし「資産」という言葉だけでは、少し足りないとも思う
ここまでスタッフは資産だと書いてきました。
ただ、私自身は、それだけでは少し足りないとも思っています。
資産というと、どうしても会社にとってどれだけ価値があるかという見方になります。
売上を作ってくれる。
患者さんから信頼されている。
後輩を教育できる。
会社の仕組みを理解している。
もちろん、全部大切です。
でもスタッフは、会社のためだけに存在しているわけではありません。
一人ひとりに人生があります。
家族があります。
やりたいことがあります。
将来どうなりたいかという希望もあります。
だから、私はスタッフを、資産であると同時に仲間だとも考えています。
理念に共感して入ってくれた人は、同じ方向を見る仲間でもある
会社へ入るということは、少なからず、
「この会社なら働いてみたい」
と思ってくれたということです。
特に小さな会社の場合、大企業ほど条件が整っているわけではありません。
知名度もありません。
研修制度も、まだ作っている途中かもしれません。
それでも、経営者の考え方や、会社が大切にしているものに共感して入ってくれる人がいます。
そういう人とは、単純な雇用関係以上に、
「一緒に会社を作っている」
という感覚が強くなります。
患者さんを大切にしたい。
もっと良い施術をしたい。
もっと働きやすい会社にしたい。
そういった方向を一緒に見られる人がいる。
これは経営者にとって、かなり大きなことです。
共通の言葉で患者さんの体について話せること自体が財産
私が個人的に、特にありがたいと感じていることがあります。
それは、スタッフと患者さんの体について深く話せることです。
新人の頃は、こちらが、
「この患者さんの場合、ここがこうだから、この部分も見てみよう」
と話しても、
「何を言っているのか、よく分かりません」
となります。
でも、一年、二年と一緒に学びながら働いていくと、少しずつ共通の言葉ができます。
姿勢。
関節。
内臓。
頭蓋骨。
動作。
既往歴。
そういったいろいろな視点を使って、
「この患者さん、こういう見方もありそうですよね」
と会話できるようになります。
これは、施術者としてすごく面白いです。
一人で考えていた時には出てこなかった視点を、スタッフが出してくれることもあります。
自分の仮説に対して、別の仮説を返してくれる。
その会話から、患者さんへの新しいアプローチが生まれることもあります。
同じ言葉で臨床について話せる仲間がいること自体、会社にとって大きな財産だと思っています。
スタッフが育つと、経営者自身も学ばされる
スタッフを育てているつもりでも、逆にスタッフから学ぶことがあります。
自分では思いつかなかった施術の見方。
患者さんとの接し方。
説明の言葉。
業務の改善方法。
経営者がすべて正解を持っているわけではありません。
長く働いているスタッフほど、会社の現場をよく知っています。
場合によっては、経営者より患者さんの細かな変化を知っています。
その意見を聞くことで、会社も変わります。
スタッフが育つことは、経営者が楽になるだけではありません。
会社全体の考える力が増えるということでもあります。
一人の退職は、売上だけでは測れない損失になることがある
もちろん、退職すること自体が悪いわけではありません。
本人にやりたいことがある。
独立したい。
家族の事情がある。
新しい仕事へ挑戦したい。
そういった理由で辞めることはあります。
それを無理に止める必要はありません。
ただ、経営者としては、一人の退職によって何を失うのかを理解しておいた方がいいと思います。
その人が毎月作っていた売上だけではありません。
患者さんとの信頼。
後輩への教育。
社内に蓄積した知識。
チーム内の役割。
患者さんの引き継ぎ。
そして、新しい人を採用し、一から育てる時間。
そこまで含めて考えます。
だからこそ、長く働いてもらえる会社を作ることには大きな価値があります。
スタッフを大切にすることは、経営的にも合理的だと思う
「スタッフを大切にしましょう」
というと、道徳的な話に聞こえるかもしれません。
もちろん、人として大切にすることは前提です。
ただ、経営的に見ても合理的だと思っています。
スタッフが長く働く。
患者さんとの信頼が深まる。
技術も上がる。
教育コストが減る。
後輩を育ててくれる。
会社の考え方を理解している人が増える。
患者さんの紹介も起こりやすくなる。
会社の文化も安定する。
こう考えると、スタッフを大切にし、長く働ける環境を作ることは、会社の価値を積み上げることでもあります。
給与だけではなく「ここで働き続けたい理由」を作る
スタッフに長く働いてもらうためには、給与も大切です。
生活がありますから、当然です。
ただ、給与だけで定着するとは限りません。
仕事がおもしろい。
成長できる。
患者さんから喜ばれる。
自分の意見を聞いてもらえる。
一緒に働く人との関係が良い。
休みを取れる。
将来の役割がある。
会社の考え方に共感できる。
そういったものも、働き続ける理由になります。
経営者としては、給与だけで人をつなぎ止める会社ではなく、
「ここで働いていること自体に意味がある」
と思ってもらえる会社を作りたいです。
スタッフを資産と考えるなら、使い潰してはいけない
スタッフは資産だと考えるのであれば、当然、使い潰してはいけません。
予約を限界まで詰める。
休みを取りにくくする。
売上だけを求める。
研修の時間を作らない。
問題があっても相談できない。
これでは、長く働くことはできません。
機械だって、メンテナンスをしなければ壊れます。
ましてや人間です。
体調もあります。
家庭もあります。
気持ちもあります。
だからこそ、働き続けられる環境を整える必要があります。
有給休暇を取れる。
体調不良の時に休める。
困った時に相談できる。
学べる。
成長を評価してもらえる。
そういった環境に会社として投資することも、人材という資産を守ることにつながります。
育てたスタッフが会社を離れる可能性も当然ある
ここで一つ、経営者として受け入れておかなければならないこともあります。
どれだけ時間とお金をかけて育てても、スタッフが辞めることはあります。
独立するかもしれません。
転職するかもしれません。
家庭の事情で働けなくなることもあります。
「これだけ育てたのに」
と思う気持ちが全くないとは言えません。
ただ、人は会社の所有物ではありません。
ここは、資産という言葉を使う時に忘れてはいけない部分だと思っています。
会社としてできるのは、
「できれば、この会社で長く働きたい」
と思ってもらえる環境を作ることです。
最終的にどういう人生を選ぶかは、本人が決めることです。
だから私は「資産」であり「仲間」だと考える
スタッフは資産です。
会社が時間とお金をかけて育ててきた。
患者さんとの信頼を積み重ねてきた。
技術や経験が増えている。
会社の考え方も理解している。
そういう意味では、間違いなく会社にとって大きな価値があります。
でも、資産という言葉だけで見ると、会社側からの視点に偏ります。
だから私は、同時に仲間だとも考えています。
同じ理念に共感してくれた。
同じ患者さんについて一緒に考えられる。
会社をどうしたらもっと良くできるか話せる。
自分一人では見えなかったものを見せてくれる。
そういう人たちと一緒に仕事をしている。
この感覚は、経営を始めた頃にはありませんでした。
一人でやっていた時には、すべて自分の頭の中だけでした。
今は、
「この患者さん、どう思う?」
「この会社の仕組み、どうしたらもっと良くなる?」
と話せる人がいます。
それ自体が、私にとってはかなり大きな財産です。
会社の価値は、売上や設備だけでは決まらない
会社の価値というと、売上や利益、設備、現金などに目が向きます。
もちろん、それらも重要です。
でも、施術業のように人がサービスを提供する会社では、人に蓄積されたものも大きな価値です。
患者さんからの信頼。
技術。
経験。
会社独自の考え方。
スタッフ同士の関係性。
判断基準。
後輩へ教えられる力。
これは簡単にはコピーできません。
求人を出して、新しい人を一人採用したから、その翌日に元通りになるものでもありません。
何年もかけて積み上げます。
だから、人が育っている会社は、それだけで強い会社だと思っています。
スタッフをどう見るかで、会社の作り方は変わる
スタッフを、
「毎月給与を払う人」
としてだけ見るのか。
「売上を作ってもらう人」
として見るのか。
それとも、
「時間をかけて育ち、会社と一緒に価値を積み重ねていく人」
として見るのか。
この違いは、経営にかなり影響すると思います。
育成に使う時間。
給与。
評価制度。
休暇。
スタッフとの面談。
会社の数字の共有。
経営判断へ参加してもらうこと。
どこへお金や時間を使うのかが変わるからです。
私は、スタッフを会社の資産だと思っています。
そして同時に、一緒に会社を作っていく仲間だと思っています。
だから、目先の人件費だけではなく、
「この人が3年後、5年後にどんな施術者になっていたら、お互いに楽しいだろう」
と考えたい。
その人自身にも成長してほしい。
会社にも残ってほしい。
患者さんにも喜んでほしい。
その積み重ねによって、会社そのものが強くなっていく。
スタッフは資産でもあり、仲間でもある。
今の私は、そのくらいの距離感でスタッフを見るのが、一番自分の経営には合っていると感じています。

ここまで読んで、
何か引っかかるところがあった方へ。
ブログでは、
整体院・訪問マッサージ・鍼灸院などの現場で感じてきたことをもとに、
体の不調や症状について、
「どう捉えるか」という前提の話を書いています。
LINEでは、
もう少しだけ、
考え方の話を続けています。
必要な方だけ、
こちらからどうぞ。
▶ LINE登録はこちら
関連記事はこちら
