今回は、整体院や鍼灸院で次回予約を提案することは、押し売りになるのかについて書いてみようと思います。
施術が終わった後に、
「次回はいつにしましょうか」
「今の状態であれば、来週もう一度見た方がよいと思います」
と伝えることに、抵抗を感じる施術者は少なくありません。
患者さんに必要な提案はしたい。
しかし、売上のために次の予約を取ろうとしていると思われたくない。
無理に通院を勧めるような院にもなりたくない。
そのため、必要だと思っていても、はっきりと次回の提案ができない方もいます。
では、次回予約を取ることは押し売りなのでしょうか。
私は、次回予約を提案する行為そのものが、押し売りになるわけではないと思っています。
押し売りなのか、患者さんに対する誠意ある提案なのかは、提案する側のマインドによって変わります。
次回予約を取った方が、経営は安定しやすい
まず、経営面だけを考えれば、施術後に次回予約を取った方が整体院の売上は安定しやすくなります。
患者さんがその場で次の予約を入れてくだされば、予約枠が少しずつ埋まっていきます。
施術にある程度満足していただいていれば、予約を取った患者さんの多くは、実際に次回も来院してくださいます。
反対に、
「また必要になったら連絡してください」
と伝えて終われば、その場では来ようと思っていても、仕事や家庭の予定に追われ、そのまま連絡を忘れてしまうことがあります。
体の調子が少し良くなると、もう少し様子を見ようと考える方もいるでしょう。
次回の予約が入っていれば、今後の売上も予測しやすくなります。
何曜日の何時が空いているのかも分かります。
月の売上も、ある程度見通せるようになります。
そのため、次回予約を取ることが経営の安定につながるのは間違いありません。
ただし、経営が安定するからといって、それだけを理由に予約を取ろうとすると、提案の意味が変わってきます。
売上のためだけに提案すると、言葉に迷いが出る
次回予約を提案する時に、
「今月の売上が足りない」
「できるだけ予約枠を埋めたい」
「この患者さんには何とか継続してもらいたい」
という気持ちが強くなっていると、施術者自身にも迷いが出ます。
本当は一週間後に来てもらう必要があるのか。
二週間後でも十分なのではないか。
この患者さんが本当に希望しているのか。
そうした疑問が自分の中に残ったまま、
「では、来週も予約を取っておきましょう」
と伝えようとすると、言葉が止まりやすくなります。
声が小さくなる。
言い方が曖昧になる。
必要以上に言葉を重ねてしまう。
患者さんが断りにくい形へ持っていこうとする。
そのわずかな迷いや引け目は、患者さんにも伝わります。
施術者本人には押し売りをするつもりがなくても、患者さんからは、
「この提案は、私の体のためというより、次の予約を取りたいからなのかな」
と受け取られてしまう可能性があります。
次回予約を提案することに後ろめたさを感じている時点で、患者さんの状態とは別の都合が、提案の中に入り込んでいるのかもしれません。
患者さんの体に必要だと思うなら、提案しないことも不親切
一方で、患者さんの状態を確認し、
「今の段階では、一週間後にもう一度施術した方がよい」
「この間隔で進めた方が、患者さんが望んでいる状態へ近づきやすい」
と施術者が本当に考えているのであれば、次回予約を提案することは押し売りではありません。
むしろ、必要だと思っているのに、押し売りと思われることを恐れて何も伝えない方が、不親切な場合もあります。
患者さんは、自分の体にどのくらいの施術頻度が必要なのかを知りません。
一回でよいのか。
数日後にもう一度受けた方がよいのか。
一か月ほど様子を見てよいのか。
そこを判断するために、施術者の見解を必要としています。
患者さんのことを考えた上で、専門家として必要な情報を伝える。
そのうえで、実際に通うかどうかは患者さんに選んでもらう。
この形であれば、次回予約の提案は誠意ある対応になります。
大切なのは、体の説明と施術計画がつながっていること
次回予約を提案する際には、単に、
「次も来てください」
と伝えるだけでは十分ではありません。
なぜ次回の施術が必要なのか。
なぜその時期なのか。
今後どのような順番で体を見ていくのか。
そこまで説明した方が、患者さんも判断しやすくなります。
例えば、施術後に、
「今日は腰の痛みがある場所だけでなく、股関節の動きと腹部の緊張も確認しました」
「施術後は動きが少し変わりましたが、まだ元の状態へ戻りやすい段階だと思います」
「次回は一週間ほど空けて、今日変わった動きが維持できているかを確認したいです」
と説明します。
これであれば、患者さんは、なぜ一週間後なのかを理解できます。
さらに、今後の見通しとして、
「次回は今日の変化が定着しているかを確認します」
「二回目では、もう少し動作の中で負担がかかっている部分を見ていきます」
「三回目頃には、今悩んでいる動作がどの程度変わっているかを一度整理しましょう」
といった施術計画を伝えることもできます。
もちろん、体の変化を断定することはできません。
「三回受ければ必ず良くなります」
と約束するのではなく、現時点で考えている施術の方針を説明します。
体の説明と、提案する施術間隔に一貫性があれば、患者さんにも提案の意図が伝わりやすくなります。
施術計画がないまま回数だけを提案すると、押し売りに見えやすい
反対に、体の説明がほとんどないまま、
「最初は週二回来てください」
「とりあえず十回受けてください」
「この回数券がおすすめです」
と伝えても、患者さんは理由を理解できません。
施術者の中では経験に基づいた提案なのかもしれません。
しかし、その根拠が患者さんへ伝わっていなければ、単に回数を増やしたいように見えてしまいます。
また、すべての患者さんへ同じ回数や頻度を勧めていれば、
「私の体を見た提案ではなく、この院では誰にでも同じことを言っているのではないか」
と思われる可能性もあります。
その人の体の状態。
生活の中で困っていること。
本人が目指していること。
通院に使える時間や費用。
そうしたことを踏まえた上で提案する必要があります。
私自身も、必要以上の回数を提案したことがある
私自身も過去に、経営のことを考えて、必要以上の回数を提案してしまったことがあります。
当時は訪問で施術をしていました。
患者さんの状態を考えれば、週二回程度で十分なのではないかと思っていました。
しかし、その頃は経営に余裕がありませんでした。
売上を増やしたいという気持ちがあり、週三回の利用を提案しました。
実際に週三回で始まりましたが、患者さんにとっては、施術を受けること自体が生活の中で負担になっていきました。
予定が多くなり、少し忙しく感じるようになったのだと思います。
二か月ほど経った頃に、週二回へ減らすことになりました。
その時、私は申し訳なさを感じました。
最初から週二回で十分だと思っていたにもかかわらず、自分の経営状況を理由に、週三回を提案していたからです。
患者さんから強く責められたわけではありません。
しかし、自分の中では、誠意を持って提案できていなかったという感覚が残りました。
無理に取った予約は、長い関係につながるとは限らない
必要以上の頻度で予約を取れば、短期的には売上が上がるかもしれません。
週二回よりも週三回の方が、一か月の売上は増えます。
しかし、患者さんにとって負担の大きい通院計画であれば、長くは続きません。
通うことが面倒になる。
生活の予定を圧迫する。
費用の負担が重くなる。
施術の必要性に疑問を持つ。
その結果、回数を減らすだけでなく、利用そのものが終了する可能性もあります。
短期間の売上を優先したことで、患者さんとの信頼関係を失ってしまえば、長期的には大きな損失になります。
実際、私が必要以上の回数を提案していた時期も、一人の患者さんと長く関係を築いた時の売上、いわゆるLTV(1人の患者様が自社に生み出す利益の総額)で考えると、それほど大きな数字にはなりませんでした。
無理に予約を詰めたからといって、患者さんが長く利用してくださるとは限りません。
患者さんの生活に無理のない提案をし、信頼を積み重ねる方が、結果的には長いお付き合いにつながりやすいと思います。
強く提案できる人が、患者さんを考えていないわけではない
ここで誤解してほしくないのは、施術回数を積極的に提案する人が、患者さんのことを考えていないという話ではありません。
世の中には、
「初期は高頻度で施術をした方が、患者さんが早く目標へ近づける」
という考えを強く持っている施術者もいます。
その考えに迷いがなく、本当に患者さんの生活を良くするために必要だと思っているのであれば、週二回や週三回をはっきり提案できるでしょう。
その人にとっては、高頻度の施術を提案することが誠意です。
反対に、必要だと思っているにもかかわらず、
「押し売りと思われたくない」
と遠慮して提案しないことの方が、無責任だと考える方もいます。
どちらが絶対に正しいという話ではありません。
重要なのは、施術者自身が本当にその提案を必要だと思っているかどうかです。
自分が納得していない提案は、患者さんにも伝わりにくい
人によって、悪気なく提案できる回数や頻度には違いがあります。
週一回であれば、迷いなく提案できる。
週二回になると、本当に必要なのか不安になる。
三か月分の計画を伝えることには抵抗がある。
回数券を勧めると、売り込みをしているように感じる。
こうした感覚は、人によって違います。
しかし、自分が納得できていない提案を、言葉だけ整えて患者さんへ伝えても、誠意は伝わりにくいと思います。
自分の中では、
「本当にこの回数が必要なのだろうか」
と疑っているのに、表面上は自信を持って勧めようとする。
その不一致が、声や表情、説明の曖昧さとして出ます。
患者さんは、施術内容の専門的な正しさまでは判断できなくても、施術者の迷いには気づくことがあります。
そのため、予約の取り方だけを学ぶ前に、自分が何を根拠に提案しているのかを整理した方がよいと思います。
提案への抵抗があるなら、ほかの施術者の考えを聞いてみる
自分は必要以上に遠慮しているのかもしれない。
もっと高い頻度を提案した方がよいのかもしれない。
そのように感じるのであれば、同業者の考えを聞いてみる方法もあります。
同じような症例に対して、ほかの施術者はどのような頻度を提案しているのか。
なぜその頻度が必要だと考えているのか。
施術計画をどのように説明しているのか。
患者さんの生活や費用とのバランスをどう考えているのか。
いろいろな話を聞くことで、
「自分は必要以上に少ない回数しか提案していなかった」
と気づく場合もあります。
反対に、
「自分は今の考え方のままでよい」
と確認できることもあります。
高い頻度を提案することに抵抗があるのは、単に自信や知識が不足しているからかもしれません。
あるいは、自分の施術方針として、本当に必要最小限の回数を提案したいのかもしれません。
ほかの人の考えを知った上で、自分がどうしたいのかを決めることが大切です。
次回予約を取るための言い回しだけを学んでも意味がない
次回予約の取り方を調べると、さまざまな言い回しが見つかります。
「次回はいつがよろしいですか」
「皆さん、最初は一週間以内に来られています」
「このまま予約を取っておきましょうか」
もちろん、言葉の選び方も大切です。
しかし、言い回しだけを変えても、提案する側のマインドが変わっていなければ、押し売りの印象はなくなりません。
本当は売上のために来てほしい。
でも、それを患者さんのための提案に見せたい。
その状態で、いくら柔らかい言葉を使っても、根本は変わっていません。
必要なのは、患者さんをうまく予約へ誘導する話術ではありません。
患者さんの状態をどう考えているのか。
何を目標に施術するのか。
なぜ次回の施術が必要なのか。
その考えを、自分の中ではっきりさせることです。
提案した後は、患者さんに選んでもらう
誠意ある提案とは、患者さんへ必要な情報を伝えた上で、最終的な判断を本人に委ねることだと思います。
施術者としては、
「今の状態であれば、一週間後にもう一度確認した方がよいと思います」
と伝える。
その理由も説明する。
しかし、患者さんが、
「仕事の都合で二週間後にしたい」
「一度考えてから連絡したい」
「費用の面で、その頻度は難しい」
と言った時には、その事情も尊重する必要があります。
患者さんが迷っている時に、
「今予約を取らないと悪化しますよ」
「本気で良くなりたいなら通うべきです」
などと不安や罪悪感を利用すれば、押し売りに近づきます。
必要な提案をすることと、提案を受け入れさせることは違います。
施術者には、専門家として考えを伝える責任があります。
一方で、どのように利用するかを選ぶ権利は患者さんにあります。
予約が取れなかった時に、自分の感情を確認する
自分のマインドを確認する方法として、患者さんが次回予約を取らなかった時の感情を見てみるのもよいと思います。
予約が入らなかった時に、
「今月の売上が減ってしまう」
という不安が最初に出るのか。
それとも、
「今後の体の状態は大丈夫だろうか」
「必要な説明をきちんと伝えられただろうか」
と考えるのか。
もちろん、経営者ですから売上が気になるのは当然です。
売上を全く考えない経営はできません。
ただ、患者さんへの提案をする瞬間には、経営上の都合と、患者さんに必要なことを一度分けて考えた方がよいと思います。
自分の売上への不安を、患者さんの体への不安に置き換えていないか。
患者さんのためと言いながら、自分が安心するために予約を取ろうとしていないか。
そこを自分自身で確認する必要があります。
押し売りかどうかは、回数ではなく提案の中身で決まる
週三回を提案したから押し売りで、月一回なら誠実というわけではありません。
患者さんの状態によっては、高い頻度が必要だと考えることもあります。
反対に、月一回でも必要性がないのに勧めていれば、売上のための提案になります。
大切なのは回数そのものではありません。
- 患者さんの状態を見た上で提案しているか
- 本人が目指していることを確認しているか
- 施術計画と頻度に一貫性があるか
- 必要な理由を説明できるか
- 患者さんが断れる余地を残しているか
- 自分自身がその提案に納得しているか
ここが整理されていれば、必要な回数を自信を持って伝えられます。
そして、自信を持って伝えた上で、患者さんの判断も尊重できます。
患者さんのための提案であれば、堂々と伝えてよい
次回予約を提案することに、必要以上の罪悪感を持つ必要はありません。
その患者さんの状態を見て、本当に次の施術が必要だと思う。
その頻度が、患者さんの希望する生活へ近づくために必要だと考えている。
なぜ必要なのかを、きちんと説明できる。
そのうえで、患者さん自身に選んでもらう。
この形であれば、次回予約の提案は押し売りではありません。
患者さんに対する、施術者としての誠意です。
反対に、自分の売上への焦りから、本当は必要ないと思っている回数を勧める。
断られるのが怖くて、患者さんが断りにくい言い方をする。
不安をあおって、予約を取らせようとする。
そうなれば、提案は押し売りに近づきます。
次回予約を取ることが問題なのではありません。何のために、その予約を提案しているのかが問題です。
売上のためなのか。
患者さんのためなのか。
実際には、その二つが完全に分かれるわけではありません。
患者さんに必要な施術を提供し、その対価として売上が生まれることが、健全な経営だと思います。
だからこそ、自分の都合を患者さんのための提案に見せかけるのではなく、本当に必要だと思うことを、誠心誠意伝える。
そして、最終的な選択は患者さんへ委ねる。
そのマインドで提案できるのであれば、次回予約を取ることに引け目を感じる必要はないと思っています。

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