患者さんへの施術頻度を説明できないスタッフに、管理者は何を教えるべきか

今回は、患者さんへ施術頻度をどのように提案すればよいのか分からないスタッフに対して、管理者は何を確認し、どのように育てていけばよいのかについて書いてみようと思います。

施術後に、

「次はいつ来てもらえばよいでしょうか」
「週に何回くらい提案すればよいのか分かりません」
「自分の判断に自信が持てません」

と悩むスタッフはいます。

このような時に、管理者が単純に、

「最初は週二回を勧めてください」
「次回予約は必ず取ってください」

と教えるだけでは、根本的な解決にはなりません。

なぜその頻度なのかを理解していなければ、患者さんから理由を聞かれた時に説明できないからです。

スタッフ自身も納得していないため、提案する時に迷いや後ろめたさが出ます。

患者さんへの施術頻度を説明できない理由は、おおむね三つに分けられると思っています。

  • 継続して患者さんを見る経験が不足している
  • 患者さんの状況を十分に把握できていない
  • 施術後の変化を予測する知識が不足している

管理者が最初にすべきことは、正しい頻度を教えることではありません。

そのスタッフが、三つのうちどこで止まっているのかを見極めることです。

目次

施術頻度は、マニュアルだけでは決められない

施術頻度の提案に困っているスタッフへ、院内の基準を伝えること自体は必要です。

急性期であれば、ある程度短い間隔で確認する。
状態が安定してきたら、少しずつ間隔を空ける。
維持を目的とするのであれば、本人の生活に合わせて計画を立てる。

このような大まかな考え方は共有しておいた方がよいと思います。

しかし、すべての患者さんへ同じ頻度を当てはめることはできません。

同じ腰痛であっても、患者さんによって状況は違います。

一か月後に大会がある人。
仕事を休めず、できるだけ早く動けるようになりたい人。
日常生活は送れているものの、長期的に体を整えたい人。
費用や時間の都合で、頻繁には通えない人。

目的も、期限も、生活背景も異なります。

そのため、施術頻度とは、症状名だけを見て決めるものではありません。

患者さんの状態、目標、生活、施術後の反応を合わせて考える必要があります。

一つ目の理由は、継続して患者さんを見る経験が足りないこと

スタッフが施術頻度を判断できない理由の一つ目は、単純に経験値が不足していることです。

これは技術者としての年数だけでは判断できません。

施術経験が何年あったとしても、同じ患者さんを継続して担当した経験が少なければ、次回の体の変化を予測することは難しいと思います。

例えば、保険を使った接骨院では、患者さんを短い時間で次々に施術する体制になっていることがあります。

今日自分が担当した患者さんを、次回も自分が見られるとは限りません。

指名制度がなかったり、担当が毎回変わったりすれば、

「前回の施術後にどう変化したのか」
「一週間後にどこが戻っていたのか」
「どのアプローチが長く残ったのか」

を自分で確認する機会が少なくなります。

施術した直後の変化は見ていても、その変化が翌日や一週間後まで残っているかは分かりません。

この経験がなければ、

「この状態なら、次は三日後がよい」
「一週間空けても問題なさそうだ」

という判断がつかないのは、ある意味では当然です。

本人の能力が低いというより、判断材料になる経験が蓄積されていないんです。

経験不足のスタッフには、まず結果を確認する機会を作る

経験が足りないスタッフに対して、管理者が何度説明しても、それだけで頻度を判断できるようにはなりません。

必要なのは、施術とその後の変化を一つの流れとして経験することです。

前回、何を考えて施術したのか。
どの部分に変化が出たのか。
次回来院時に、その変化がどの程度残っていたのか。
患者さんの日常生活はどう変わったのか。
予想と違った場合、何を見落としていたのか。

これを繰り返すことで、少しずつ予測ができるようになります。

院内で可能なのであれば、一定期間は同じ患者さんを続けて担当させる方法があります。

毎回担当が変わる仕組みであっても、教育中のスタッフについては、できる範囲で経過を追えるようにします。

次回も担当できない場合は、カルテやほかの担当者から、その後の変化を確認するだけでも違います。

施術したら終わりではなく、必ず結果を追う。

この習慣を作ることが大切です。

勤務先で継続して見られないなら、別の方法で経験を作る

勤務している院の仕組みによっては、同じ患者さんを継続して担当することが難しい場合もあります。

本人が次回も見たいと思っていても、指名がなければ担当できない。

会社の方針として、担当を固定できない。

そのような環境であれば、経験が積みにくいのも事実です。

可能であれば、患者さんへ事情を説明し、

「今回の施術後の変化を次回も確認させていただきたいのですが、担当が変わる可能性があります」

と伝える方法もあると思います。

ただし、院の方針によっては、それすら難しいこともあるでしょう。

その場合は、知人や家族など、体のことで困っている方に協力してもらう方法もあります。

もちろん無理にお願いするのではなく、目的を説明した上で、本人が希望する場合に限ります。

一度施術を行い、一週間後にもう一度状態を確認する。

前回の施術によって、何が変わったのか。
何が戻ったのか。
思っていた変化と実際の変化に、どのような差があったのか。

こうした経験を積むことができます。

無料で施術すればよいというよりも、自分が行った施術の結果を最後まで確認する場を意識的に作るということです。

管理者は、施術前の予測を言葉にさせる

経験を積ませる時には、ただ同じ患者さんを何度も担当させるだけでは不十分です。

施術前に、スタッフ自身の予測を言葉にさせた方がよいと思います。

例えば、

「今回、どこへアプローチする予定ですか」
「その施術によって、どのような変化が起こると考えていますか」
「次回までに、どの部分が戻る可能性がありますか」
「次は何日後に確認したいですか」
「なぜその間隔なのですか」

と聞きます。

予測を立てずに施術し、次回の状態を見るだけでは、経験が感覚のまま蓄積されます。

事前に仮説を立て、実際の結果と照らし合わせることで、判断力が育ちます。

予測が外れたとしても、それ自体が失敗ではありません。

なぜ外れたのかを考えることが、次の判断材料になります。

二つ目の理由は、患者さんへの問診が足りないこと

施術頻度を説明できない二つ目の理由は、患者さんの状況を十分に把握できていないことです。

体の状態を確認していても、患者さんの生活背景や目標を聞けていなければ、頻度は決められません。

例えば、同じ膝の痛みを抱えている二人がいたとします。

一人は、一か月後にスポーツの大会へ出場する予定がある。
もう一人は、普段の生活で少し気になる程度で、特に期限はない。

体の状態が似ていたとしても、提案する施術頻度は同じにはならないと思います。

一か月後に大会があるのであれば、できるだけ早い段階で痛みを落ち着かせたい。
その後、実際の動きの中で問題が出ないかを確認したい。
さらに大会直前には、無理に変化を出すのではなく、状態を整えた上で本番を迎えてもらいたい。

そのように逆算すれば、初期は短い間隔で確認した方がよいという判断になるかもしれません。

大会の直前になって、ようやく痛みが軽くなった状態では、十分な準備ができたとは言いにくいからです。

施術頻度は、患者さんの目標から逆算する

問診では、痛みの場所や発症時期だけを聞けばよいわけではありません。

その症状によって、何に困っているのか。
いつまでに、どうなりたいのか。
何ができるようになれば、本人は改善したと感じるのか。

そこまで確認する必要があります。

例えば、

  • 一か月後の大会へ出たい
  • 来週から仕事へ復帰したい
  • 子どもを抱き上げられるようになりたい
  • 旅行までに長く歩けるようになりたい
  • 日常生活で痛みを気にせず過ごしたい

目標が分かれば、施術計画を立てやすくなります。

そして、施術計画ができれば、その計画に必要な頻度を説明できます。

施術者側が、

「一般的に腰痛は週二回です」

と決めるのではありません。

患者さんの目標から逆算し、現時点で必要だと考える頻度を提案します。

正解を一つだけ提案しなくてもよい

患者さんの状態を見た上で、理想的な頻度が一つに決まる場合もあります。

一方で、複数の選択肢を提示できるケースもあります。

例えば、

「早めに状態を変えていきたいのであれば、最初の二週間は週二回が理想です」

「仕事や費用の都合で難しければ、週一回で経過を見ながら進める方法もあります」

「ただし、その場合は変化を確認するまでに少し時間がかかる可能性があります」

と説明できます。

患者さんの性格によっても、受け取りやすい提案は違います。

専門家にある程度決めてほしい方もいます。

いくつかの選択肢から、自分で選びたい方もいます。

通院頻度を一方的に決めるのではなく、患者さんの希望や生活も踏まえて相談する形でもよいと思います。

大切なのは、施術者が責任を放棄して、

「好きな時に来てください」

と丸投げしないことです。

専門家として考えを伝えた上で、患者さんに選んでもらいます。

問診不足なのか、説明不足なのかを分けて考える

スタッフが施術頻度を提案できない時、管理者は、

「もっと自信を持って言ってください」

と指導しがちです。

しかし、そもそも患者さんの目標を聞けていなければ、自信を持てるはずがありません。

まず、問診の内容を確認した方がよいと思います。

何に困っているのかを聞けているか。
いつまでに変わりたいのかを聞けているか。
本人が優先していることを理解しているか。
通院に使える時間や費用を確認しているか。

そこまで把握した上で、頻度を考えているか。

問診で必要な情報が取れているのに説明できないのであれば、説明力や知識の問題かもしれません。

必要な情報自体が取れていないのであれば、まず改善すべきなのは問診です。

三つ目の理由は、体の変化を考える知識が足りないこと

三つ目は、知識不足です。

施術頻度を考えるには、今回の施術によって何が変わり、その変化が次にどのような影響を与えるのかを考える必要があります。

例えば、ある関節の動きに制限があり、その影響で別の場所へ負担がかかっていると考えたとします。

今回の施術によって、その関節の動きが変わった。

そうであれば、今後は歩行や姿勢の中で、どこに変化が出る可能性があるのか。

逆に、どの部分がまだ対応しきれず、元へ戻る可能性があるのか。

次回は、何を確認する必要があるのか。

こうした推察ができなければ、施術頻度を決めるのは難しいと思います。

単純に、その場で筋肉を揉み、少し柔らかくなったかどうかだけを見ている場合、次回の変化まで考える材料は多くありません。

姿勢、関節の動き、神経、循環、内臓、呼吸など、どのような考え方を用いるにしても、

「今回の施術が、体全体へどのような影響を与えるのか」

を考えられる知識が必要です。

知識とは、用語を覚えることではない

ここでいう知識不足とは、解剖学の名称を覚えていないという話だけではありません。

筋肉や関節の名前を多く知っていても、患者さんの体の中で何が起きているのかを組み立てられなければ、施術計画にはつながりません。

必要なのは、

現在、どのような状態なのか。
なぜその状態が続いているのか。
今回、何を変えようとしているのか。
それが変わると、次に何が起きると考えるのか。
どの程度の期間で確認する必要があるのか。

という流れで考える力です。

施術頻度は、覚えた数字を当てはめるものではありません。

体の状態に対する仮説と、施術計画から導かれるものです。

管理者は、頻度ではなく根拠を質問する

スタッフへ施術頻度を考えさせる時には、

「週に何回ですか」

と答えだけを聞くのではなく、その根拠を確認します。

例えば、

  • なぜその頻度が必要だと思ったのか
  • 今回の施術で何が変わったのか
  • 次回、何を確認したいのか
  • 間隔を空けすぎると、何が起こると考えるのか
  • 患者さんの目標と、その頻度はどうつながっているのか
  • 患者さんの生活上、その計画は現実的なのか

と質問します。

答えが曖昧であれば、何が足りないかが見えてきます。

次回の変化を予測できないのであれば、経験不足か知識不足です。

患者さんが何を目指しているか分からないのであれば、問診不足です。

状態も目標も理解しているのに言葉にできないのであれば、説明の練習が必要です。

管理者が原因を分けず、すべてを「自信がないから」で片づけてしまうと、適切な教育ができません。

施術頻度を決める練習は、症例ごとに行う

スタッフ教育では、実際の症例を使って考える時間を作るとよいと思います。

施術後に、スタッフへ次の内容を整理してもらいます。

  1. 患者さんが現在困っていること
  2. 本人が目指している状態
  3. 期限の有無
  4. 今回確認できた体の状態
  5. 今回行った施術
  6. 施術後に起きた変化
  7. 次回確認したいこと
  8. 提案する施術間隔
  9. その間隔を提案する理由

この流れで考えれば、単に、

「この症状なら週二回」

と覚えるよりも、応用が利くようになります。

また、管理者の考えとスタッフの考えが違った時には、すぐに否定するのではなく、理由を聞いた方がよいと思います。

スタッフなりに患者さんの生活を考え、頻度を抑えていることもあります。

反対に、体の状態だけを見て、患者さんの生活を考えずに高頻度を提案している場合もあります。

答えの違いよりも、どの情報を使って判断したのかを確認することが大切です。

管理者が答えを言いすぎると、スタッフは考えなくなる

スタッフが迷っていると、経験のある管理者はすぐに答えを伝えたくなります。

「この人なら週一回でいい」
「この状態なら三日後に見た方がいい」

確かに、その場では解決します。

しかし、毎回答えを教えていると、スタッフは管理者の判断を待つようになります。

自分で患者さんの状態を整理し、仮説を立てる機会がなくなります。

まずスタッフ自身に考えてもらう。

その後で、管理者の考えと比較する。

なぜ違ったのかを一緒に整理する。

この順番の方が、判断力は育ちやすいと思います。

管理者の役割は、正しい回数を毎回教えることではありません。

スタッフが、自分で根拠を持って施術頻度を考えられるようにすることです。

頻度の提案ができないことを、本人の性格のせいにしない

施術頻度を提案できないスタッフを見ると、

「営業が苦手だから」
「自信がない性格だから」
「患者さんに遠慮しすぎるから」

と考えることがあります。

もちろん、性格が影響する部分もあります。

しかし、頻度を提案できない理由が、必ずしも性格にあるとは限りません。

次回の変化を見た経験がない。
患者さんの目標を聞けていない。
施術後に何が起こるか考えられない。

その状態で、自信を持って説明する方が無理があります。

知識や経験が足りない状態を、本人の積極性の問題として扱ってしまうと、スタッフはさらに苦しくなります。

管理者は、本人のマインドを変えようとする前に、判断するための材料を持っているかを確認した方がよいと思います。

スタッフ自身にも、足りない部分を受け止めてもらう

管理者が環境を整えることは必要です。

ただし、すべてを会社側が用意すればよいという話でもありません。

施術頻度を考えられないのであれば、自分が三つのうちどこで止まっているのかを、スタッフ自身にも考えてもらう必要があります。

継続して患者さんを見る経験が足りないのか。
問診が浅く、患者さんの目標を把握できていないのか。
体の変化を考えるための知識が足りないのか。

足りない部分が分かったのであれば、それに対する努力は必要です。

経験不足であれば、経過を追える機会を増やす。
問診不足であれば、患者さんの生活や目標を聞く練習をする。
知識不足であれば、施術によって何が変わるのかを学び直す。

分からないこと自体を責める必要はありません。

しかし、分からないままにして、毎回何となく頻度を提案するのは患者さんに対して誠実とは言えません。

施術頻度の説明は、患者さんとの約束に近い

施術者が、

「次は一週間後に来てください」

と伝える時、患者さんは、その言葉を専門家の判断として受け取ります。

仕事の予定を調整する。
家族に協力してもらう。
施術費を用意する。
移動する時間も使います。

そのため、施術頻度の提案は、売上を作るための簡単な声かけではありません。

患者さんの時間やお金を使ってもらう提案です。

なぜその時期に必要なのかを、自分の言葉で説明できる責任があります。

反対に、本当に必要だと考えているのに、説明できないから何も伝えないことも、患者さんの利益にはなりません。

必要な情報を集める。
体の変化を予測する。
施術計画を立てる。

その根拠を患者さんへ説明する。

ここまでできて、初めて施術頻度の提案になるのだと思います。

施術頻度を説明できない時は、三つに分けて考える

患者さんへ施術頻度をどのように説明すればよいか分からない。

その時に、単に話し方や予約の取り方だけを練習しても、うまくいかないことがあります。

まず、理由を三つに分けて考えます。

一つ目は、継続して患者さんを見た経験が不足していること。

二つ目は、問診が足りず、患者さんの状況や目標を把握できていないこと。

三つ目は、施術後の体の変化を予測する知識が不足していること。

どこが足りないのかによって、必要な教育は変わります。

経験不足の人に知識だけを教えても、判断は難しいままです。

問診不足の人に、自信を持って提案するように言っても、根拠がありません。

知識不足の人に症例を任せ続けても、同じ経験を繰り返すだけになることがあります。

管理者は、頻度の正解を教える前に、そのスタッフが何を見られていて、何を見られていないのかを確認する。

スタッフ自身も、足りない部分を真摯に受け止め、必要な経験や学習を積み重ねる。

その両方があって、初めて患者さんへ根拠のある施術頻度を説明できるようになると思っています。

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