整体師・施術家へ強く伝えたいこと
患者様は「痛み」だけを抱えて来院しているわけではない
私は時々、あえて患者として近くの整体院へ行くことがあります。
コンサルタントとしてでも、業界研究としてでもありません。
今の整体業界の「現場の空気」を、自分の体で感じるためです。
ですが、先日行った整体院は正直ひどかった。
流れ作業のような対応、最低限の説明、目もほとんど合わない。
「施術をこなすこと」だけが目的になっているように感じました。
だからこそ、整体師・あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師の方々に、
どうしても強く伝えたいことがあります。
患者様がどんな気持ちで来院しているのか、考えていますか?
経営がうまくいっていない院ほど、
この視点が抜け落ちているように感じます。
触り方、声のかけ方、間の取り方、表情。
そういった些細な部分から、 「この人は本当に私のことを考えているのか」 は、患者様に伝わっています。
技術が悪いからうまくいかないのではありません。
患者様の背景に、意識が向いていないだけなんです。
私が涙を流した、ある患者様の話
守秘義務があるため一部内容は変えますが、
忘れられない患者様がいます。
40代の女性で、5歳のお子さんがいました。
その子は、長年の不妊治療の末、ようやく授かった命。
これだけでも、
「お金も時間もかけて、何度も辛い思いをして、
やっと出会えた大切な子どもなんだな」
と想像できるはずです。
しかし、その方は末期のがんでした。
やっとの想いで授かった我が子。
それなのに、その子が二十歳になるまで一緒にいられない可能性が高い。
ランドセルを背負った姿を見られるかどうかも分からない。
「今、この瞬間に一緒に過ごす時間が、何よりも尊い」
そう感じていることが、言葉の端々から伝わってきました。
話を聞いているだけで、私は涙が出ました。
病気を受け入れるまで、どれほどの葛藤があったのか。
私たちの施術が、人生の一部を支えることもある
この方は、きっかけとしては腰痛でご縁を頂きました。
施術を続ける中で腰痛は改善し、
睡眠時間は2〜3時間から6〜7時間へ。
すると、こんな言葉を頂きました。
「体が楽になったから、
以前より元気に子どもと接することができています」
私たちが提供したのは、
単なる「腰痛改善」ではありません。
私は整体師であって、医者ではありません。
命を救うことはできないかもしれない。
でも、その人の今日を、日常をほんの少しでも軽く、楽にできるなら。
それって、想像以上にすごいことなんじゃないか。
残された子どもとの大切な時間を、
少しでも穏やかに、密度の高いものにするお手伝い だったのだと思っています。
重いケースだけが特別ではありません
今回は病気が重い例でしたが、
実際にはもっと身近なところに、同じような想いは溢れています。
・家族のために頑張りたい
・仕事を休めない
・将来が不安
・誰にも弱音を吐けない
患者様は、あなたが思っている以上に、
さまざまな想いを抱えて来院しています。
「痛み」だけに焦点を当てていては、
その背景には、決して辿り着けません。
整体師という仕事の本質
目の前に患者様がいるときの、
表情、声色、言葉の選び方、タイミング、空気感。
そのすべてから、
患者様の気持ちを感じ取ろうとしてください。
そして、
「この人のために、自分は何ができるだろうか」 と考えてみてください。
私は、患者様に「あなたらしく過ごしてほしい」と願っています。
私たちは、人の人生の一部に深く関われる、
本当に尊い仕事をしています。
この文章を読んだ同業の方が、
明日から、より真剣に、より丁寧に、
患者様と向き合ってくれたら。
それ以上に嬉しいことはありません。
どうか、もう一度思い出してほしいんです。
自分がこの仕事を選んだ理由を。
誰かの役に立ちたいと思った、あのときの気持ちを。


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